夢だけじゃ生きてゆけないからと かき集めた現実も
今じゃもう錆びつき私の中 硬く鈍く沈んだまま

出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎

夢や理想ばかり追い求めていても、現実という壁が分厚く立ちふさがります。

現実を知らないと、とても生きていけません。

もがいている主人公だって、それは分かっているのでしょう。

だから見たくもない現実を集めて、生き残ろうとしたのです。

しかし結局それは、重りにしかなりませんでした。

現実があまりにも重くのしかかりすぎて、希望すら消していってしまったのかもしれません。

それが取れないまま、今もこうして暗闇の世界にいるのです。

現実を知りすぎるのも、ある意味問題があるのでしょう。

一筋の希望

でもね せめて これくらいは持っていても ねぇいいでしょう?
大それた希望なんかじゃなく 誰も気づかないほどの 小さな光

出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎

こんな暗闇の世界でも、完全に夢も希望もついえたわけではありません。

まだどこかにあるのです、かすかな光が。

それはタイトルの「一縷」そのものでしょう。

暗闇で抗い疲れた人に、「運命に抗おう」などという大それた言葉は心に響きません。

むしろ「抗えるものならとっくにそうしている!」と感じてしまうのではないでしょうか。

しかし、それでも心のどこかに希望を抱く人だっている筈です。

「まだ何とかなるかもしれない」という、ほんのわずかな希望。

小さくても良いのです。

輝いているのなら、それを頼りに歩きだせます。

光がもしかしたら、暗闇からの脱出へと導いてくれるかもしれません。

夢を持つ者

太陽のような強い光が当たらない、暗闇の世界。

そこにただいるだけでは悲しくなるだけです。

わずかな夢や希望は、自分で持たねばなりません

たとえ夢だけでは生きていきなくても、もがく気力は蘇るでしょう。

悲しみと仲良く

悲しみは 何気ない顔で こちらを見るだけ 何も言わず
鏡のように 私の心が傾く方角を 知りたげに

出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎

悲しみは目の前に現れても、特に何かしてくれるわけではないようです。

「大丈夫?」とか「辛いね」などという言葉すらかけてくれません。

ただ「どうするの?」という感じでこちらを見るだけ。

そこにいるだけの存在です。

一見かなりネガティブな歌詞に見えますが、考え方によってはそうでもありません。

悲しみは自分のために行動するわけではありませんが、暗闇にいる自分のもとにいつも来ています。

よく見知った顔であり、半分友達のような感覚なのではないでしょうか。

この視線があるから「今度は、こうしてみよう」ともう一度立ち上がって進んでみることができるのです。

狭間の感情

涙も 言葉も 笑いも 嗚咽も 出ないような心
人はいまだ 名前もつけられずに 泳がし続ける

出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎

楽しくもなければ、悲しくもないし怒っているわけでもない。

どう表せば良いのか分からない感情になったことはありませんか。

実際、この状態をぴったりと表す言葉は存在しません。

名前を付けることなく、人々はこの不可思議な感情を名前すらつけず野放しにしています。

ですが今、暗闇の中で希望に向かって走っている主人公はそんな感情の中にいるのでしょう。

その時になって初めて「これってどんな気持ちなのか分からない…」と気が付いたと思われます。

夢は捨てきれない

「夢だけじゃ生きてゆけないから」と 名も知らぬ誰かの言葉に
どれだけ心を浸そうとも 私の眼をじっと 見続ける姿

出典: 一縷/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎