覚悟はあるか?
任務優先
先見えぬ夜に紛れましょう 悟られぬよう口を噤みましょう
最愛も 恋情も 朋友も 友情も 手に掛ける覚悟はあるか?
暗がりの向こうに潜む忍者になって
あの日の夢まで 切り捨ての免罪符
出典: 忍びのすゝめ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
自分の姿を表舞台から消して、秘密を抱えて生きる主人公。
愛する人々でも命令されれば始末しなければならない。
与えられた任務であればそれが自分の意志に背くことでも従わなければいけない…
忍びの道に進むためにはこういった残酷な定めを守る「覚悟」が必要となってきます。
主人公にも過去には抱いていた夢がありました。
しかし、それを諦めたのでしょう。
忍びであることに誇りを持っているからなのか、単に夢を目指す勇気が無いのか…
「忍びだから」という理由を盾に夢を捨て去ってしまったようですね。
人並みの人生は送れない
誰そ彼時までは身を隠して
その陰に今日を置く
二世も契れぬまま 彷徨えるボクは
ひどく醜い『手の目』
徒花のその姿に 心惹かれても
現世だって朧月
何もかもを閉ざした矢先に
君に恋するという報い
出典: 忍びのすゝめ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
明るいうちには外に出ない主人公。
人目に触れて正体がバレてしまう事を避ける意味もありますが、任務をこなすためにはなるべく顔が割れてない方が都合が良いからとも言えそうです。
そんな身の上では結婚して家庭を築くこともできません。
普通の人間が味わうような人生の楽しさを逃さざるを得ない立場です。
仕方ないとはいえ、彼はそんな自分に劣等感を抱いているのでしょう。
おそらく家族もいない天涯孤独な境遇の主人公「ボク」は、自らの手でたくさん人を殺めてきたことを重荷に感じているようです。
「徒花」は「咲いても実を結ばない花」のこと。
何人か気になる相手はいても、どうせ実ることはないと投げやりに思っていましたが…
そんな彼に奇跡の出会いが訪れました。
自分の押し殺していた感情を揺さぶるようなそんな存在の「君」。
折角、忍びの道を邁進していたというのに…
これまでに犯してきた罪に対する罰なのだろうと「ボク」は嘆きます。
片恋の行方は
「幸せ」はどこに?
片恋の行く先を知りたい その手負いの心を救いたい
返り血の装束じゃ 何を望もうと値打ちない
書き違えた「辛せ」の行方 読み違えた為体が所以
生涯は滑稽な 憂愁の証明か 未だ十字架を背負いこんで
出典: 忍びのすゝめ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
冒頭で少し語られていましたが、「君」もまた過去に心が傷ついているようです。
自分と似たところがあるから「ボク」は惹かれたのでしょうか。
「君」の助けになりたいと思いますが、こんな人殺しの自分では無理だと消極的な様子。
彼女と出会ったことで「幸せ」を意識しましたが、やはり自分には得ることのできないものだと思っています。
忍びである以上、そして過去に数々の汚れ仕事をこなしているため、主人公は「幸せ」になることが許されないのです。
「千慮の一夜」とは
鵜の真似をしていちゃ それが千慮の一失
覚悟もないなら 御帰りになって頂戴
いつか物心で捨てた心根
わかり合えるなんて夢のまた夢
破れ果てた友の骸に
今日も立っている
出典: 忍びのすゝめ/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
ここには二つもことわざが登場します。
「鵜(う)の真似をする烏(からす)」とは人の真似をして、自分の能力に見合わないことをしてしまい失敗すること。
主人公をカラスに例えているのは忍者だからという理由もあるでしょう。
闇に紛れることのできる黒い体と、死を連想させる不吉なイメージはたしかに忍者と合っているかも。
「千慮の一矢」は「賢い人であったり、十分に考えていたことでも沢山考えている内には一つくらい失敗がある」ということ。
これまで主人公は忍びとして優秀だったのかもしれません。
仕事に、主人に忠実に生きてきたことで信頼と実績を得ている。
なのに、恋のために全て捨てるなんて愚かだと言いたいのでしょう。
幼い頃から忍びの訓練を行っていた「ボク」。
一緒に忍びになった仲間もいたようですが、毎日のように任務で命を落としています。
それを見るたびに「明日は我が身」と感じているのかもしれません。
また、自分が忍びでありいつ死んでしまうか分からない立場であると自覚するのでしょう。