少しだけ わけてくれ
三億年か四億年
出典: 生きる/作詞:甲本ヒロト 作曲:甲本ヒロト
二番はキノコから一変して、何かに対し懇願している様子です。
これはその後に続く長い年月に対しての言葉のように思えます。
それだけの年月を持つもの、つまり地球に対してのお願いなんです。スケールが大きくなってきましたね。
数億年もの途方もない時間。その中のほんの一部を空っぽな自分にもわけてくれ。
そう読みとることができます。
地球の歴史の中で、空っぽな自分にも時間をわけて欲しい。自分も存在していいと認めて欲しい。
そんな思いが込められているのです。
二番の歌詞は生きることに迷うあなたへのメッセージでありながら、歌を歌う自分への鼓舞でもあるのです。
三億年か四億年、途方もない時間からみえるもの
印象的なフレーズ
三億年か四億年。一番と二番ともにサビ前に歌われています。
あまりにも長い年月が突然歌詞に出てくるので、曲全体を見ても印象的です。
約四億年前は地球の陸上に植物が上陸した頃、約三億年前は昆虫や爬虫類が上陸した時代です。
人類の祖先であるアウストラロピテクスが誕生したのが二百万年前なのですが、なんとも途方もない時間です。
時間とは
ここで、時間という概念について考えてみましょう。
時間という言葉を辞書で引いてみると「ある時刻と時刻との間。長さを持った時」といった意味が載っています。
ここにおける時間は、人類から見た概念です。
時計を気にしたり、何時までに何かをするという考え方は人間が効率的に生きる為に決められた枠組みです。
もうひとつ、「過去から現在、未来へと連なり、とどまることなく流れ去るもの」という意味が出てきます。
これもまた今現在を感じられる人間を中心とした視点です。
人間が生まれる前、それこそ何億年も昔には植物や動物は時間を時間として認識していたのでしょうか。
おそらくですが、人間のように細かく時間という概念をもってはいなかったでしょう。
時間に近い感覚があったとしても。太陽が昇る、沈む。そのくらい漠然としたものだったのではないでしょうか。
時間というのは、ごく最近。人間が誕生したことによって世界に生まれた感覚なのです。
この歌で歌われる数億の年月。
それは人間だけでなく地球の歴史全体をとらえた大きなスケールで「生きる」ことを歌っている象徴なのです。
「生きる」ためのメッセージ
みえるもの=今この瞬間
見えるものだけ それさえあれば
たどり着けない答えは ないぜ
ずっと ここには ずっと ここには
時間なんか 無かった
出典: 生きる/作詞:甲本ヒロト 作曲:甲本ヒロト
引用の一行目の示す意味。それは今この瞬間目に見えているものです。
今あなたの目に何か見えているものがある、感じられるものがある。
そうであるならば、必ず答えにたどり着くといっているんですね。
つまり、今この記事を読んでいて画面に映る文字が見えている。それだけで良いんです。
それは生きているからこそ感じられるものです。
あなたが今、生きてさえいればそれだけで良い。
この瞬間を生きていて、その目で、耳で、鼻で、感覚のすべてを使って何かを感じている。
それ自体が、歌詞にある「みえるもの」です。
人生を生ききってこそ、答え=人生の意味にたどり着けるのです。
時間なんかなかった=決められた枠組みにとらわれる必要なんてない
「ずっとここには」、と二回繰り返しています。
幾度も歌われた数億年の途方もない時間を改めて強調しているのです。
それだけ長い間、時間がないと言っている。
長い時間を歌っていながら、なぜ時間が存在しないと言っているのでしょうか。
先ほどお話をしましたが、時間というのは人間が生み出した言葉です。
人間が誕生するより前、遙か昔には時間という概念はありませんでした。
この歌はとても大きなスケールの歌です。
人間だけにとらわれず、これまで地球上に存在していたすべての生命を感じてみてください。
時間は人間が作り出した枠組みです。
決められた枠組みにとらわれることなく、もっと自由に人生を謳歌して良い。
自分らしく生きて良い。そんなメッセージが込められているのです。
人生への賛歌
この歌は生きることそのものを肯定しています。
人はその人生で、何か大きな目的を抱えていても、いなくても、生きていて良いのです。
生きる。という言葉は当たり前でいて、とても難しいことです。
今こうして心臓が動いていて、けれどそれは前ぶれなく突然終わりを迎えてしまうこともある。
そうでなくても、大きな困難や苦しみが立ちはだかって、生きることに絶望することだってある。
だからこそ、この歌はメッセージを投げかけているのです。
「それでも大丈夫。人生とは未知の旅。ただ歩いて、その目に見えるものを感じて、生きていればいい。
そうすればいつか必ず大切だと思える好きなものに出会えるから。
決まりきった枠組みにとらわれなくていい。
だって遙か昔、そんなものが無くても命は存在できていたのだから。」
「生きる」を歌う力強い声が訴えるのは、そんなメッセージなのではないでしょうか。