伝わらない想いを歌う
「ボク」の恋愛模様
この曲には、大きく2人の登場人物がいます。
1人目は「ボク」。
歌の主人公でもあります。
「僕」という1人称は男女問わず使うことがあるため、主人公の性別は断定できません。
男性かもしれないし、GUMIちゃんが女声であることから、女の子だと考えることもできます。
そして2人目は「キミ」です。
歌詞の内容から、「ボク」は「キミ」に想いを寄せていることが読みとれます。
「ボク」は読書好き?
歌詞の中には、物語のタイトルやモチーフがいくつか登場します。
タイトルとも繋がりを感じる「漂流記」や、「青い鳥」などです。
「ボク」は本を読むのが好きなのかもしれません。
どんな物語との繋がりがあるのかは、歌詞の流れの中で触れていきます。
物思いにふける
音楽で心を支える
恋愛小説読んで 宙を描く
周りの喧騒 遮断 未来BEAT
ドーナツ覗いて歌う 漂流記
気がつきゃ濃霧になって 遭難です
出典: 漂流少女/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲: 苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
曲は、「ボク」の空想から始まります。
読書中だった「ボク」は、本の内容からさらに想像を膨らませているところでしょうか。
さっそく、実在する本のタイトルが出てきました。
「十五少年漂流記」や「ロビンソン漂流記」という小説が、実際に読み継がれています。
どちらも、無人島でサバイバルしていくというストーリー。
ここではスイーツとともに語られることでポップさが出ています。
「ボク」が空想するのは、どんな展開なのでしょうか。
しかし、その空想も長くは続きません。
「ボク」の空想は道を見失い、迷い出してしまうのです。
ここでは実際の霧ではなく、見通しが立たなくなったことの象徴である可能性があります。
「ボク」は楽しい想像を膨らませていましたが、先の展開が思いつけなくなったのです。
イヤホン外した世界は 音が響かないの
チクタク時計と心拍数奏でるセンチメンタルビート
出典: 漂流少女/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲: 苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
ここまで読むと、「ボク」が音楽を聴いていたことが分かります。
周りのざわめきを音楽で遮って、自分の世界に浸っていたのです。
ヘッドホンや良質なスピーカーを利用して音楽を鑑賞すると、迫力と臨場感が味わえます。
転じて、ヘッドホンを外してしまうと、急に現実に引き戻されてしまうことも。
「ボク」にも、それと同じようなことが起こったのではないでしょうか。
「ボク」にとっての現実世界は、単調で、迫力に欠けているのかもしれません。
本や音楽の中には熱いストーリーが溢れているので、そちらを見慣れたのでしょう。
とはいえ、「ボク」の暮らす世界にドラマがないわけではありません。
心から退屈していれば、感傷に浸ることなどないはずだからです。
夢が見られない「ボク」
漂流少女ロンリー ユメなんか
見失って 傷ついて 忘れて
遭難少女オンリー 独りきり
ぷかぷか 消えてゆく 泡だって
出典: 漂流少女/作詞:苺ミルクをかけたらぶっ殺す。 作曲: 苺ミルクをかけたらぶっ殺す。
「ボク」が自分を「漂流している」と表現する理由が見えてくる部分です。
それは、「ボク」が夢を忘れてしまったから。
夢や目標があれば、人は分かりやすい形で頑張ることができます。
たとえネガティブになって心を迷わせることがあっても、夢を目印にして初心に帰れるのです。
ところが目標となるものがなければ、道に迷い続けるしかありません。
「ボク」は夢も目標もなく、ただ現在の日常を楽しんでいるだけなのでしょうか。
そして、そんな現状に孤独を感じているようでもあります。
少し話が変わりますが、最後の行はある物語をイメージした一節だと思われます。
アンデルセンの「人魚姫」です。
もともとの人魚姫は、王子との恋が実ることなく命を落としてしまいました。
人魚は最期、海の泡になって消えてしまうのです。
歌詞のフレーズと一致します。
「ボク」は目標もないまま迷い続けることに、無気力さを覚えているのかもしれません。