「楽にはいかない まったく楽じゃない

あなたが落ちてゆくときに天国にゆこうとするのはまったく楽じゃない」

この曲でアルバム「ジギー・スターダスト」のA面が終わります

アナログ・レコードの時代ですから内容についてもA面とB面で分けて考える必要があるのです。

「Starman」で希望に接しましたが不安な内容を暗示する曲でA面を終わらせました。

それではアルバムを裏返してB面を聴いてゆきましょう。

B面1曲目「Lady Stardust」

グラム・ロックのスターへ

デヴィッド・ボウイ【ジギー・スターダスト】アルバム全曲紹介!ボウイを投影したジギーのストーリーに迫るの画像

化粧をしてステージに立つ男を人々が嘲笑います。

しかし彼もバンドも最高だと歌われるのです。

デヴィッド・ボウイがT-REXのマーク・ボランに宛てた曲だといわれています。

グラム・ロックの始祖ともいえるエンジェルだったマーク・ボラン。

「ジギー・スターダスト」もバイセクシュアルのロック・スター。

男性性と女性性の問題についてグラム・ロックと括られた当事者たちがいかに深く考えていたか。

スーパースターであっても様々な蔑称によって差別されることもあった時代状況を残念に思います

それでもこうしたスターたちの活躍でLGBT+の人々が市民権を得る一助になりました。

グラム・ロック・スターの悲哀が伝わってくる名曲です。

マーク・ボランとジギー

People stared at the makeup on his face
Laughed at his long black hair, his animal grace
The boy in the bright blue jeans
Jumped up on the stage
And lady stardust sang his songs
Of darkness and disgrace

出典: Lady Stardust/作詞: David Bowie 作曲: David Bowie

「男の顔に施された化粧をじろじろ見つめる人々

彼の黒々としたロングヘアーや彼の野性的な魅力をあざ笑う

それでも鮮やかなブルージーンズに身を包んだ男がステージで飛び乗った

その星屑婦人は自作の暗黒と屈辱の歌を歌い上げた」

マーク・ボランの活き活きとした姿と物珍しげに嘲笑う人々のコントラスト。

しかしマーク・ボランの歌は本物のアーティストにしか歌えないものです。

「Lady Stardust」という称号自体にある詩的な美しさが見事でしょう。

マーク・ボランに宛てた歌ですが「ジギー・スターダスト」というロック・スターの姿でもあります。

「ジギー・スターダスト」がいかに魅力的なロック・スターであるかを称賛しているのです。

この曲でアルバムのB面が幕を上げました。

B面2曲目「Star」

デヴィッド・ボウイ【ジギー・スターダスト】アルバム全曲紹介!ボウイを投影したジギーのストーリーに迫るの画像

タイトルそのままにロック・スターになるという決意が歌われます。

とても短い曲ではありますがこれぞ当時のデヴィッド・ボウイのロックという軽快さがあるのです。

I could make a transformation as a rock & roll star

出典: Star/作詞:David Bowie 作曲:David Bowie

「僕ならばロックンロールスターとして変革を起こせるだろうね」

この曲に「ジギー・スターダスト」というロック・スターの心意気が顕れています。

B面3曲目「Hang Onto Yourself」

デヴィッド・ボウイ【ジギー・スターダスト】アルバム全曲紹介!ボウイを投影したジギーのストーリーに迫るの画像

邦題は「君の意志のままに」です。

ミック・ロンソンのギターが弾けまくる楽曲

パンク・ロックのルーツ的な扱いもされます。

スターである「ジギー・スターダスト」につきまとう女性たち。

バックバンド「スパイダーズ・フロム・マーズ」と一緒に彼女たちが「遊ぶ」風景を歌います。

ロック・スターとそのバンドメンバーの「遊び」は派手です。

下品なくらいに赤裸々に「遊ぶ」風景を歌い切りました。

「ジギー・スターダスト」の栄光の裏にはこんな「遊ぶ」姿があったのです。

当時のデヴィッド・ボウイの楽屋裏の風景を切り取ったのでしょうか。

赤裸々過ぎる描写があるため訳出はできません。

B面4曲目「Ziggy Stardust」

バンドメンバーの視点から描く

デヴィッド・ボウイ【ジギー・スターダスト】アルバム全曲紹介!ボウイを投影したジギーのストーリーに迫るの画像

タイトル曲ともいえるでしょう。

アルバムの原題はもっと複雑で長いです。

The Rise and Fall of Ziggy Stardust and the Spiders from Mars

「ジギー・スターダストとザ・スパイダーズ・フロム・マーズの興隆と没落」という意味です。

この曲「Ziggy Stardust」はバックバンドの視点からスターである「ジギー・スターダスト」を描きます。

後のゴシック・ロック・バンド・BAUHAUSのバージョンも有名です。

褒めたり貶したり忙しい歌詞になっているのでぜひ全編をご覧いただきたいのですが紙幅が足りません。

メンバーは「ジギー・スターダスト」の魅力を認めますが、あいつはシメてやると恨みも持つ。

デヴィッド・ボウイはバンドメンバーのためにもこの曲を書いておきたかったのでしょう。

自分ばかり目立って申し訳ないという想いが心のどこかにあったのだと思われます。

いよいよ「ジギー・スターダスト」の周囲がギスギスしてくる様子を描きました。