絶妙な言い回しに見え隠れする悲しさ

逢いたいから、恋しくて、あなたを想うほど
寒い夜は、未だ胸の奥、鐘の音が聞こえる

出典: Winter,again/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO

ここがサビになります。

今いる場所から地元を回想し、そこに連れていきたいと思うほどに想いを寄せる彼女

そんな彼女のことを考えているだけで、どんどん想いが募ります。

しかし、このサビが歌詞を理解する上で大きな分岐のキーとなっています。

ここまでの流れで、TAKUROさんは恋人を地元に連れていきたいという未来形で語っているようでした。

しかし、ここで使われる「逢いたい」という漢字。

もし恋人なら『会いたい』と書くのが一般的ですが、ここはそうではありません。

あえて『逢う』と書くことで、『強く想いを寄せる人に巡りあう』という想いと偶然性が含まれます。

つまり、この時点で、対象となる恋人とは普通に会えない状況であることがわかります。

それはすなわち、今現在すでに恋人関係にないということです。

そう思って読み進めると、2行目で物悲しい雰囲気と、後悔のようなものを感じることができると思います。

雪こそ降っていないけれど、寒くなると地元を回想して、それに呼応するように彼女のことを思い出してしまう。

そういう失恋の状況を歌っているのです。

失意を加速するAメロ〜Bメロ

判明する時間軸

のしかかる雲を見上げて、時の速さの流れに問う
誰もが抱く悲しみの、終着駅は何処にあるのか
陽だまり、暮れる坂道で、若さの幻と出逢い
<元気です>の一言に懐かしさよりも
戸惑い立ち止まる

出典: Winter,again/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO

1コーラス目のサビで失恋を引きずり、傷心中であることがわかりました。

その流れで入った、2コーラス目のAメロ。

まさにその、終わりのない失意の中にいる状況を表しています。

そして、時間軸がこのAメロで明らかになります。

まだ別れるなんて頭になかったほど恋人と順調だった頃の自分を「若さの幻」と表現しているのです。

自分の過去を語るとき、『若い頃』という表現を用いる場合は大抵それなりに前のことを表します。

筆者の感覚では、10年以上前を指すときに使うイメージでしょうか。

そんなに昔のことを、冷たい風を感じるたびに思い返している状況。

その恋人との別れは、それほどまでに心に大きな影を落としたということなのです。

彼女への愛は変わらない

過ぎ去りし世に揺れる華、遠くを見つめてた
冷たい風にさらされた 愛はあの日から動けないと

出典: Winter,again/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO

このBメロでは、彼女への変わらぬ、変われぬ想いが綴られています。

ここで「華」と表現されているもの。

それは彼女のことを指しているのです。

思い出の中ですら、彼女はもはや自分のことを見ていないことに気付いています。

そんな状況においても、まだ自分の心にある彼女への愛は変わらないし、変われない。

別れたその日から、この想いがずっと続いているのです。

過去は変えられない

解放の兆しは未だ見えず

逢いたいから、逢えない夜には、あなたを想うほど
想い出には、二人が歩いた足跡を残して…

出典: Winter,again/作詞:TAKURO 作曲:TAKURO

彼女に対する想いが募り、会いたくても会えない状況に苦しめられている状況です。

この想いに未来はなく、振り返ることしかできないという意味を「足跡」という言葉で表しています。

これほどまでに長い間、心を捕らえておくほど愛おしかった彼女。

この想いから解放されるときはくるのでしょうか。

雪に想いを重ねる