一番の中では次のように歌われています。
飲めと言われて 素直に飲んだ
肩を抱かれて その気になった
出典: 浪花節だよ人生は/作詞: 藤田まさと 作曲:四方章人
お酒の席で言われるがままに飲み、肩を抱かれたことで好きになってしまった。
現代でもありそうなシチュエーションです。
お酒を飲んだ勢いで恋が始まるのは今も昔も同じ。
そして、「浪花節」の意味の一つ「情緒的」とは言い換えれば感情的なこと。
その場の勢いに任せて相手を好きになってしまったこの女性はまさに「浪花節」と言えるかもしれません。
周りに振り回される女
一番で一目惚れをしてしまった女性。
しかし幸せな風景が歌われることなく、二番で状況は悪化していきます。
嘘は誰かが 教えてくれる
恋も誰かが 見つけてくれる
そんな誰かに 振り廻されて
出典: 浪花節だよ人生は/作詞: 藤田まさと 作曲:四方章人
周りの人たちに「あれは嘘だよ」「あの人がいいよ」と伝えられる女性。
そんな周りからの声に翻弄され、振り回されてしまいます。
でも周りを信じて従ってしまう、それこそが「浪花節」なんですね。
これもまた、今の時代にも通ずる光景です。
ところで、ここまで女性にとって良いことが全く起こりません。
最後はいったいどうなってしまうのでしょうか?
常に損をする人生
三番の冒頭で、恋は終わりを迎えます。
咲いて萎んで 捨てられました
逢って別れて 諦めました
出典: 浪花節だよ人生は/作詞: 藤田まさと 作曲:四方章人
一番で一目惚れをし、二番で周りの助言に従ったけれど幸せにはなれなかった。
相手から捨てられることも、自分から諦めることもあったようです。
自分から好きになっても、周りから勧められても幸せになれなかった女性。
そして歌はあまりに悲しい一節で終わりに向かいます。
人の情けに つかまりながら
折れた情けの 枝で死ぬ
出典: 浪花節だよ人生は/作詞: 藤田まさと 作曲:四方章人
人の情けにつかまる、つまり情けを信じて自分を託す。
しかしその枝が折れるということは、つまり裏切られるということ。
人を信じるけれど、それが裏切られることで自分が傷ついてしまう。
これもまた、今も昔も変わらない光景です。
女性は周りの自分の感情や人の情けに従うものの、結局幸せになれませんでした。
そして冒頭で紹介した一節のように「人生は浪花節だ」と締めくくられます。
実際に歌詞を見てみると、軽やかな曲調に反してひたすら暗い物語だということが分かります。
この歌で歌われた女性の人生とは一体どのようなものだったのか、改めて考えてみましょう。
裏切られても信じ続ける人生
この歌に登場する女性は一見何一つ良いことがありません。
酒の席で一目惚れした男性にはフラれ、周りの声を信じるも裏切られます。
それなのに最後には「人生は浪花節だ」と、ある種悟ったように振り返ります。
そこにはどんな思いがあるのでしょうか。
浪花節=浪曲で語られる物語
冒頭でご紹介したように、明治時代から受け継がれてきた浪花節。
そこで語られる物語でも特に人気があったのは『忠臣蔵』だと言われています。