amazarashi
「とどめを刺して」
秋田ひろむが中心となって楽曲を作り上げる音楽プロジェクトamazarashi。
2007年の活動開始以来、その独創性溢れる歌詞によって多くの人の心を虜にしてきました。
力強く歌われるその言葉の数々。
彼の音楽には、歌詞には強いメッセージを持たせたいという確固たる意志を感じます。
今回はそんな彼の楽曲の中から「とどめを刺して」の歌詞を紹介させて頂きましょう。
この楽曲に込められた想いを紐解いていきます。
MVはこちら
まず、この楽曲のMVをご紹介します。
全体のトーンは暗く、どこか陰鬱な雰囲気が漂っておりこの楽曲のシリアスさを強調するかのようです。
何かを延々と書き綴る人の姿が狂気すら感じさせますが、その姿がこの楽曲の切実さを増幅させています。
光が射す暗い部屋でギターを持ち歌う秋田ひろむはこの曲のストーリーテラーのようです。
楽曲の持つ意味を映像によって表したような秋田ひろむならではの世界が広がっています。
それでは次は早速、歌詞の解釈をお届けしていきましょう。
悲しみの理由
「失望」の夜明け
失望したって君が言う時 君は失望の彼女みたいだ
夜明け前だ 血の気の引いた空 死人みたいな一日がまた来る
出典: とどめを刺して/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
冒頭の「失望」という言葉はこの楽曲を象徴しているように感じられます。
そしてその「彼女」であるというのは失望と距離がとても近いことを表しているのでしょう。
恋人同士というのは、隣に居続けるとどんどん似ていくものです。
どんどんと失望に吸い寄せられていっているのかもしれません。
2行目で分かるのはこれが夜の出来事であるということです。
そしてそろそろ朝になるという時の明け方の空の色を眺めているのでしょう。
その空の色というのは深い青に染まっており、そこに主人公は不気味さを投影させています。
不気味というのはこの歌詞に出てくる「君」にとっての感じ方なのでしょう。
彼女は自分の人生というものに対して悲観的であるということが分かります。
苦悩と抵抗
君の瞳は拒絶していた 曖昧な受諾と定めと
時間がくれるはずだったもの そのほとんどを
おかしいのは自分以外 嫌いなくせに笑ってるパラノイア
悲しい風には泣かない 悲しいなんて認めない
出典: とどめを刺して/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
ここでも「君」について言葉を綴っているようです。
この歌詞では彼女を中心に物語が進んでいくのだということが分かります。
彼女が何故自分の人生に悲観的なのか、その理由は判然としません。
しかしここでは彼女の現在の心境が描かれているようです。
これを紐解いていくことで、その理由にも迫れるかもしれません。
この4行を読むと彼女にとって現状の生活を認めるのが難しいのだということが分かります。
1〜2行目で表されているのは巷に溢れるありふれた人生を指しているのではないでしょうか。
つまり学校や社会に属することによって満たされる承認欲求などのことです。
彼女にとってそれは安易なものであると感じているのかもしれません。
そこから逃げ出したいと考えながらも、自分の周りに纏わりついてくる普通の生活。
世間に不満を言いながらも合わせようとする周囲の人間に嫌悪感を抱いているのでしょう。
自分自身がそういった社会に囚われ、抜け出せないことへの苦悩がここには描かれているのではないでしょうか。
彼女にとって、自身の悲しみを認めないというのは世界に対しての抵抗なのでしょう。
安易なもので溢れたこの世界に生きていることで悲しんで涙を流すこと。
それはその彼女にとって陳腐だと感じている世界の価値観に迎合することになるからです。
だからこそ自分の気持ちを認めないようにしているのでしょう。
2人で抜け出そう
自分の敵は自分
ねえ二度と泣かないように 君を脅す君にとどめを刺して
僕と逃げよう 地の果てまで 追っ手は暗闇 明日無き逃亡
出典: とどめを刺して/作詞:秋田ひろむ 作曲:秋田ひろむ
ここでは主人公が彼女を連れ出そうとする光景が描かれています。
「君」は自分自身が社会に飲み込まれていくことに恐怖を感じているのかもしれません。
悲しみながら自分自身を否定し傷つける毎日。
主人公はそんな彼女の姿を見て、共にこの世界から逃げることを決意します。
その逃亡というのは今ある日常からの脱却を意味しているのでしょう。
全てを投げ出すということは明日の保証さえ無くなるということを意味しています。
逃げることでその先に何があるかは分からないけれど、2人ならばどこかへたどり着けるかもしれない。
もしくは自分が彼女を守りたいと考えているのかもしれません。