実はもっとも英語版と日本語版で意味が異なるのがサビの部分です。
あの一番有名な「ありのー♪ままでー♪」の部分ですね。
原曲では...
Let it go, let it go!
Can't hold it back any more
Let it go, let it go!
Turn away and slam the door
出典: Let It Go/作詞:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez 作曲:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez
もうそれでいい、そのままでいいの
これ以上秘密になんてできないんだから
もうそれでいい、そのままでいいの
彼らに背を向けて、ドアを閉めてしまえばいい
「Let it go」は「起こったことは起こったこと」と割り切ろうとしている状態です。
では日本語版を見てみましょう。
ありのままの 姿見せるのよ
ありのままの 自分になるの
出典: Let It Go~ありのままで~/日本語訳:高橋知伽江 作曲:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez
かなりシンプルにまとめられていますよね。
この理由については後ほど説明しますが、注目すべきは「Let it go」をどう翻訳しているかです。
日本語版ではここを「ありのまま」と表現していますが、本来ありのままだと「Let It Be」の方が意味としては近いのです。
(The Beatlesの往年の名曲ですね!)
「エッ?! まさかの誤訳?!」
そんなことはありません。
これにはちゃんとした理由があったのです。
ディズニー映画が日本語版になるまで
日本語版の凄さ
まずこの曲が吹き替え版に使われる曲だ、というのが非常に重要なポイントです。
映画ということは当然キャラクターの口の動きと音声が合っていないと、とても不自然に聞こえてしまいます。
言語学では音節(シラブル)と言いますが、日本語はこの音節が多いためどうしても情報量が少なくなってしまいます。
英語版に比べ、日本語版が短くシンプルに感じられるのはこうした音節の制限があったからなのですね!
日本語版では「エルサの口の動きと歌詞がシンクロしているみたい!」と海外でも話題になりました。
当然、エルサは英歌詞に合わせて口を動かしているのに、そこに日本語歌詞をシンクロさせるのはすごいですよね。
なんとか「Let it go」の意味を汲み取り、また映画としての仕上がりも意識して考え抜かれたのがこの「ありのまま」というワードだったのです!
こだわり抜かれた日本語版ディズニー映画
外国の映画を日本語版にする際には上のような努力が行われていたのって、少し驚きではないですか?
実はこれはディズニー映画の日本語吹き替え版の多くで行われている工夫でもあります。
いかに日本人にとって親しみやすくして、たくさんの人に観てもらうか、そうしたマーケティングの要素もあるのですね。
ちょっとしたこぼれ話です。
「塔の上のラプンツェル」の原題は「Tangled」です。(意味は「絡まり合った」)
でも、もし原題をそのまま翻訳してタイトルにしても、「なんのこっちゃ」という反応になってしまいますよね。
そこで親しみやすい邦訳をつけるのです。
ちなみに「アナと雪の女王」も原題は「Flozen」(意味は「凍った」)
いずれにせよ、絡まっていたものがほどけていく、凍っていたものが溶けていく、といった伏線がすでにタイトルに張られているのはなんとも面白いですね。
ぜひ、これからディズニー映画の日本語版を見る時は、タイトルや劇中の歌が英語版とどう違うかに着目して観てみると新しい発見があるかもしれませんよ!
詳しく英語版と歌詞の意味を比較
情景描写と心理描写
The snow glows white on the mountain tonight
Not a footprint to be seen
A kingdom of isolation
And it looks like
I'm the queen
今夜は山に雪が降り積もる
足跡が残らないほどに
隔離された王国
私はそこのクイーンみたいだわ
出典: 出典:Let It Go/作詞:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez 作曲:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez
英語の歌詞ではエルサがひとり山に登っていく様子を歌い上げています。
彼女が今どんな状況下に置かれているのか、具体的な描写をしているのです。
そして誰もいない雪山で、自分が女王になったかのような気分だといっています。
降り始めた雪は足跡消して
真っ白な世界にひとりの私
出典: 出典:Let It Go~ありのままで~/日本語訳:高橋知伽江 作曲:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez
日本語版も冒頭はエルサが置かれた状況を説明しています。
雪がしんしんと降り積もっている様子です。
しかし、この部分から歌詞の持つ意味は少し違ってきます。
日本語版では、ひとりきりの彼女は少し物悲しい印象を受けるのではないでしょうか。
The wind is howling like this swirling storm inside
Couldn't keep it in
Heaven knows I tried
風は激しく、体の中で渦を巻く嵐のようだわ
おさえて置くことなんて出来なかった
私がどれだけ頑張てきたか神様は知っている
出典: Let It Go/作詞:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez 作曲:Kristen Anderson-Lopez,Robert Lopez