どれほど自分磨きをしても、恋愛において愛されることばかり気にしては虚しいです。

ハウツー本は「愛されるにはどうしたらいいか」という受け身の愛ばかり推奨します。

それではいつまでも「恋の予感」だけを頼りに誰かを待ち続けてしまうのです。

しかし愛の本質は自身の孤独を打ち破り、誰かと融合したいという積極的な気持ちにあります

自身の内側から湧き出る良き衝動をもっと再評価しましょう。

そのことに気づかないとどうなるか?

井上陽水の視線は非常にシビアなままです。

歌詞のクライマックスを見てみましょう。

もどかしい想いが駆け巡る

「恋の予感」に惑わされないで

井上陽水【恋の予感】歌詞の意味を解釈!恋をしているのに「好きだ」と言えない…届かない想いがもどかしいの画像

星のあいだをさまよい流されるだけ
夢のつづきを またみせられるだけ
風は気まぐれ あなたを惑わせるだけ
恋の予感が ただかけぬけるだけ

出典: 恋の予感/作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二

星、夢、風、恋など非常に美しい言葉が並ぶ割に、伝えている内容は残酷です。

「好きだ」と言えないで愛されることばかりを優先するひとは虚しい運命しかないと歌います。

恋愛に対して待ってばかりいる哀しい女性の姿を描くのです。

非生産的なひとは運命に置いていかれてばかりと歌います。

井上陽水のひとを見る目の厳しさを思い知らされる次第です。

「恋の予感」は歌詞が辛辣な分、メロディやサウンド・プロダクションは甘い雰囲気抜群

これほど女性を突き放した歌詞であることがにわかには信じられません。

しかし井上陽水のこれまでの作品に潜む切っ先鋭い社会風刺などを振り返ると、この作品も納得です。

「恋の予感」というタイトルでありながら、そこから感じる甘さに騙されてはいけないと思わされます

誰もが「恋の予感」に惑わされるけれども、高い次元の愛には昇華できないと歌うこの曲は辛辣な皮肉です。

「愛するということ」

社会心理学の本から学ぶ愛

井上陽水【恋の予感】歌詞の意味を解釈!恋をしているのに「好きだ」と言えない…届かない想いがもどかしいの画像

これまで見たような悪循環に陥らないために、私たちはどのように恋愛と向き合うべきなのでしょうか?

「愛するということ エーリッヒ・フロム 紀伊國屋書店」という本を推奨します

社会心理学の権威、エーリッヒ・フロムが愛について書き下ろした短い本です。

愛されるにはどうしたらいいか? など浅薄な自己啓発本にありがちなテーマは書かれていません。

愛する技術を身につけるための簡単な学術書です。

著者のエーリッヒ・フロムは「自由からの逃走」「人間における自由」などの著作で有名

全体主義国家にいたるまでにひとは自らの自由を手放してしまう「権威主義的パーソナリティ」の理論。

いまの時代にも重要なテーマを論じました。

「愛するということ」も彼の主著のひとつですが、他の著作よりも格段に読みやすいです。

マルクスとフロイトの人間観を仔細に研究したエーリッヒ・フロムによる愛の本。

帯には詩人・谷川俊太郎や女優・杏の推奨の言葉が書かれています。

愛する技術について深く学べますので、ぜひ手にとってみてください。

その読書体験は井上陽水の「恋の予感」の歌詞を読み解くために必ず役に立ちます

根源的な孤立から脱するために

愛のチカラで孤独を打ち破る

井上陽水【恋の予感】歌詞の意味を解釈!恋をしているのに「好きだ」と言えない…届かない想いがもどかしいの画像

人間はどんなひとでも根源的に孤立しています。

この絶対的な孤立を埋め合わせするために、良好な社会関係を築こうと努める。

愛はその作業の中に生まれるのです。

積極的にひととひととを隔てる壁を打ち破ってひとは愛を獲得します

その行為はあくまでも人間に備わった能動的なチカラによるのです。

しかし受動的に愛されることばかりを考えてしまうひとは絶えず不安に曝されます。

いつか相手の愛が冷めてしまうのではないか?

そのことばかりを不安に思い始めるのです。

化粧で飾った愛では実際に本当の自分が愛されているのか不安で仕方なくなります

愛されることを学ぶ

なぜ なぜ あなたはきれいになりたいの?
その目を誰もが見つめてくれないの?

出典: 恋の予感/作詞:井上陽水 作曲:玉置浩二

「恋の予感」の歌い出しはこのことを指摘しているのではないでしょうか。

愛されることばかりに気を置き、綺麗になる努力をしても、見つめ合ってくれる男性は現れない。

井上陽水は人間存在を深く見つめています。

この孤立感を払拭するには、やはり自身から能動的に他者を愛することを学ぶ必要があるのです

愛するひとは「与えるひと」。

奪われることは元々の前提になるので、愛を失くすことへの不安がありません。

愛は周囲から刺激されて生まれるものではない。

自分自身の愛する能力によって、愛する相手の幸福を祝うもの。

「恋の予感」の歌詞には愛する相手の存在がかけらも出てきません

それが不毛なひとり芝居だと井上陽水は歌っているのです。

まとめ:「恋の予感」のもどかしさ

決して甘い歌詞ではない

井上陽水【恋の予感】歌詞の意味を解釈!恋をしているのに「好きだ」と言えない…届かない想いがもどかしいの画像