黒い鉄格子の中で私は生まれてきたんだ
悪意の代償を願え
望むがままにお前に
さあ与えよう正義を
壊して 壊される前に
因果の代償を払い
共に行こう 名前のない怪物
出典: 名前のない怪物/作詞:ryo 作曲:ryo
シュビラシステムは完璧だと思われていますが、本当にそうでしょうか。
人は不安定な生き物であり、時として危険にも優しくもなれる力があります。それを、簡単な数字で判断できるものでしょうか。
悪なのか、正義なのか、そういう判断基準は、どうしても統一することはできないものです。
そんな曖昧な判断の全責任を任されているシュビラシステムは生まれた時から、”悪意の矛盾”という罪を背負って生きています。
本当に正しいのかどうかを人間に判断させることなく、悪を決めつけてしまう世界。
そんなシュビラシステムにとって一番の”悪”はきっと、このシステムを疑う思想です。
みんなが信じているからこそ、自由にできる世界。もし、このシステムに矛盾を持つようなら自分自身の命が危ないわけです。
そうなれば、考えることは一つ。
正義でも悪でもなく、「自分を壊される前に、相手を壊してしまえ」という恐ろしい発想。
矛盾を突かれないための犠牲を払いながら、私と共にこの世界で生きていこうとささやいているようですね。
狂っていく判断
矛盾を指摘する者が声を出す前に消してしまおうという、恐ろしい考えに至ったシュビラシステム。
2番の歌詞からこの考え方は徐々に狂気に満ちていきます。
ノイズだらけの思考
耳鳴りがしてる
鉄条網うるさくって
思い出せないの あの日の旋律
雨はまだ止まない 何にも見えないの
ほらみて こんなに大きくなったの
出典: 名前のない怪物/作詞:ryo 作曲:ryo
歌詞1~2行目を見てみるとどうやらいつものように正常な働きができていないようです。
壊される前に相手を壊すという考えに至ってからでしょうか。
もしそうなのであれば、頭のどこかではその一方的な思考を否定しているのかもしれません。
2行目の単語は有刺鉄線を表しています。
有刺鉄線から音が鳴ることはありません。
本当に鳴っているのだとしたら何かしらの脅威がシステムの元へ向かっているということでしょう。
はたまたシステムの幻聴かもしれません、思考の危うさを表現した言葉とも捉えることができます。
どちらにしろ、危険な雰囲気が出ているのは間違いないようです。
歌詞3行目は正常な判断ができなくなってしまい、何か大事なことを忘れてしまっている描写でしょうか。
狂気じみた判断を決行できるようにシステム自身が封印したのかもしれません。
この記憶を思い出してしまったら、今の判断が「悪」になってしまう…。
そう考えるとシステム自身も「壊される前に壊す」という判断は間違っていると考えているのでしょう。
しかしそうしないと、自分の存在意義がなくなってしまう。
なんとも人間じみた決断です。
システムと呼ばれているのが皮肉にも聞こえてきます。
歌詞5~6行目は狂気を「雨」と例えているようです。
つまり、システムの中で生まれてしまった狂気はどんどん膨らんでいっていると解釈ができます。
このまま狂気が暴走してしまえば、ただの殺人システムとなってしまうのも時間の問題です。
自分を守る手段
黒い雨 降らせこの空
私は望まれないもの
ひび割れたノイローゼ
愛す同罪の傍観者達に
さあ今ふるえ正義を
消せない傷を抱きしめて
この身体を受け入れ
共に行こう 名前のない怪物
出典: 名前のない怪物/作詞:ryo 作曲:ryo
上記の歌詞解説で「雨」は狂気を例えたものだと紹介しました。
そうすると、この歌詞1行目の歌詞は狂気じみた判断を決行しようとしているのではないでしょうか。
まだ命令口調になっているので、決行する直前のセキュリティーを外しているイメージができます。
そして歌詞2行目は自分のことについて表現しているようです。
システムの判断によって善悪が決められている世界。
善悪の基準は作ることができないので、その時点で矛盾しています。
そこの矛盾に気付き、多くの人が疑問を持ってしまうと、システムは撤廃されてしまうでしょう。
それを阻止するために疑問を持った人間を先に排除する。
しかし、何も欠点がない人間を排除すると他の人間がまた疑問を持つでしょう。
そうなってしまうともう連鎖を止めることはできません。
疑問をもつ人間を片っ端から排除していってしまったら、「不良品」として破棄されてしまうだけです。
結局のところ、シュビラシステムは必要なかったということ。
そして必要ないものだったのだとシステム自身も結論づけています。
自身の存在自体を否定されてしまったら、人間だと相当な精神ダメージを受けるでしょう。
そしてそのダメージはシステムも同じようです。
システムの判断の中でしか「正義」といえないようにすること。
システムが「正義」だという結論がでるまでに、たくさんの犠牲がでることでしょう。
それらも全て計算した上で…。
システムは狂気のプログラムを起動させようとしています。
システムの暴走
ああ 神ハ告ゲル 真ノ世界ヲ
出典: 名前のない怪物/作詞:ryo 作曲:ryo
シュビラシステムがプログラムを起動させてしまった。
人間からしたら絶望のような、システムからしたら反逆の時のようなそんなイメージが想像できます。
「正義」を盾にした殺りく兵器。
歌詞からも分かるようにセキュリティを外したシステムは全知全能です。
自分の存在自体が間違っているという結論が出ているのであれば…。
自分が正しい存在になれる社会へ作り直したらいい、という考えになったのでしょうか。
また、ここから先の歌詞はサビの繰り返しになるのですが、1点だけ変わっている箇所があります。
黒い鉄格子の中で
私は生まれてきたんだ
悪意の代償を願え
望むがままにお前に
さあ与えよう正義を
壊して 壊される前に
因果の代償を払い 報いよ 名もなき怪物
出典: 名前のない怪物/作詞:ryo 作曲:ryo
上記の歌詞はは1番サビを繰り返している部分です。
1番と最後で変わっているのは歌詞の最後の行になります。
因果の代償を払い 共に行こう 名前のない怪物
出典: 名前のない怪物/作詞:ryo 作曲:ryo
こちらは1番歌詞のサビ部分。
真ん中の言葉だけが変わっているようです。
1番サビだと償いをするのはシステム側という印象を受けます。
しかし最後のサビだと人間側が償いをする番という意味にならないでしょうか。
そもそも、システムを作ってしまった人間が全ての始まりではないのか。
善悪の判断さえもシステムに任せようとした人間の怠惰が発端だと伝えているように思います。
結末は
狂気のプログラムを起動させてしまったシステム。
この世界の結末はどうなってしまうのでしょうか。
このまま人間は蹂躙され、システムの存在が許される社会になってしまう可能性も十分あるでしょう。
しかし、こんな歪んでしまった世界でも善悪の判断をしっかり見極めようとしている人物もいます。
常守朱とシュビラシステム。
この曲の世界観は「PSYCHO-PASS」と非常によく似ているので、アニメと同じ結末と考えるのがしっくりきます。
ぜひ、まだアニメを視聴してない人は見てみて下さい。