頭上にもんどりうった
シックシックシック
日常を引っかくような
傷 傷 傷
ああ もういっそ
ああ もういっそ
孤独が 薬ならいいのにな

出典: シックシックシック/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

「もんどり」とは飛び上がって回転すること。

要するに頭がパニックを起こしているのでしょう。

そして、積み重ねてきた心の「傷」や「痛み」が爆発します。

周囲との摩擦を避けて作り上げた「孤独」。

主人公は「孤独でいることが自分の症状を改善させる」とは認識していないのでしょう。

人との関わりを通じて治さないといけない…。

そうは分かっていてももう頑張れない。

だから「孤独」が心の傷を癒す「薬」になってほしいと願っているのだと思います。

足掻いても足掻いても…

この世は天網恢恢(てんもうかいかい)
シックシックシック
知りすぎて 嫌になって
シックシックシック
シャイン シャイン
もしかして奇跡かな
いや 病気だよ

出典: シックシックシック/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

ここでも難しい言葉が出てきましたね。

「天網恢恢」とは「天網恢恢疎にして漏らさず」という、ことわざの一部。

ことわざ自体は「悪いことをすれば必ずいずれ天罰が下る」というニュアンスです。

「天網恢恢」は、網の目から悪人が抜け出すことはできないという意味を持っています。

ここではどんな意味で使われているのでしょうか?

ネガティブな使われ方をしているような気もします。

主人公は自分を、「悪人」として捉えているのでしょうか?

どんなに足掻いても断ち切ることのできない運命に抗っているのかもしれません。

悩みながらも生きていく

未来の僕へ

こんにちは 元気ですか 
そうですか ぼくはそうでもないですが
ざんない本音を飲み込んだ
昨日の自分は泣いていたけど
明日の自分はどうですか
君は最近どうですか
だんだん眠たくなってきた

出典: シックシックシック/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

何気ない会話が始まったかと思いきや、サラリと心の不調を伝えました。

「ざんない」とは「むごたらしい」という意味。

生々しい本音が喉まで出ているのに、口に出すのをためらっているようです。

そして読み進めるうちに、この発言が「未来の自分」に向けたものだと気が付きます。

将来の自分は元気に過ごせているのかな…。

ぼんやりと、淡い期待を抱いているのかもしれません。

不安を抑えるために

洗いざらい
カルテに落書きしていた
震えを抑えるため

世界に取っ散らかった
シックシックシック
ざらめの感傷ばっか
チクチクチク
ああ もうちょっと
ああ もうちょっと
器用に生きれたらいいのにな 

出典: シックシックシック/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

本来治療の過程を記すためのカルテ。

そこに、思いのたけを書き殴り、心を落ち着かせようとしているのではないでしょうか?

文字にすることで、ネガティブな感情は発散することができます。

他人との関わりや、何かに熱中することでも発散は可能ですね。

でも、この楽曲の主人公は不器用だからこそ、「書き殴る」という方法を選ぶほかないのかもしれません。

僕だけじゃなくみんなが病気

希望に こんがらがった
シックシックシック
過ちで負った傷が
ジクジクジク
ああ もうずっと
ああ もうずっと 
抱えたまま生きていくんだろうな
お前ら 一切合財
シックシックシック
あっちの言い分じゃ
ぼくがシックシックシック
ドキ ドキ もしかして恋かな 
ふら ふら
いや それは病気だよ 
いや それは病気だよ
まともでも病気だよ
もう みんな病気だよ
もう みんな病気だよ
もう みんな病気だよ
もう みんな病気だよ

出典: シックシックシック/作詞:ピノキオピー 作曲:ピノキオピー

先ほどは未来の自分に「元気かどうか」を問いかけていました。

でも心の底では、この葛藤を背負って生き続けるのだと予想しているようです。

自分がまともだと思っていても「病気」。

なら、自分に「病気」だと言い、まともだと思いこんでいるみんなも「病気」。

開き直りにも似た表現ですね。

でも「病気でも何でもいいから、とにかく生きよう」という覚悟が読み取れる気もします。

最後に

ピノキオピー【シックシックシック】(唄:初音ミク)歌詞を解釈!不器用なあなたは…感染しているかも☆の画像

「病気」というデリケートなテーマに踏み込んだ「シックシックシック」。

案外目を背けてしまいがちですが、「病気」と言われた側の心情は耐え難いものでしょう。

全ての人が同じ価値観を共有することは難しいかもしれません。

でも、相手を「孤独」に引き込んでしまうと、摩擦が解消されることはないはず。

この楽曲からは受け入れ合うことの重要性が感じられました。

アルバム「零号」