短い映像に込められた想い

2002年のデビュー以来、今や世界規模でソロ・アーティストとして活躍するMIYAVI

そして、彼が2019年7月24日にリリースしたアルバム「NO SLEEP TILL TOKYO」。

その収録曲のひとつとして制作されたのが『We Can't Stop It(Rewind)』です。

また発売に先立って、本楽曲のスタジオ・セッションの映像がYouTubeにて公開されました。

2分弱という短い動画の中で、彼がどんな挑戦をしているのか。

楽曲を通して、何を伝えたかったのか。

今回は映像のビジュアル面、そして音楽のことにも言及しながら、本楽曲を紐解いていきます。

シンプルなステージング

次世代型ギターを携えて

MIYAVI【We Can't Stop It(Rewind)】スタジオセッション映像を徹底解説!の画像

編成はいたってシンプル。

ギター&ヴォーカル、ドラム、そしてDJの3名のみとなっています。

MIYAVIが今回使用しているギターは、彼の代名詞ともいえるTaylor(テイラー)のブラックボディ、ではなく…。

Fender(フェンダー)のAcoustasonic Telecasterという、一風変わったものになっています。

こちら、シルエットは名の通りテレキャスター。

しかし、ボディにはアコースティックギターのようなサウンドホールをもつ、不思議な印象のギターです。

エレキともアコギともつかない、中間的な存在の次世代型ギターとして、注目が集まっていますが…。

彼がこちらを選んだ理由については、後述させていただきます。

スタジオらしからぬライブ感

舞台は青・紫やネオンピンクに彩られた空間。

クールさとは裏腹に、なぜか薄暮のようなもの悲しさが漂います。

MIYAVIをセンターに、左右後方にドラム・DJと三角形を描く配置。

セッションとはいいつつも全員がこちらを向き、当然ながら視聴者が意識されています。

映像は、各プレイヤーを順に追いながら進行していく単純な構成。

要所要所では横切るような視点の動きがあったり、光が映り込んでいたりと…。

スタジオでありながら、独特の緊張感・ライブがしっかりと演出されています。

ギャップを楽しむ前半部

冒頭から意表を突かれる

MIYAVI【We Can't Stop It(Rewind)】スタジオセッション映像を徹底解説!の画像

ギタリストとしてのイメージが強いMIYAVIですが、本楽曲はアウフタクトの歌い出しから始まります。

意表を突かれるのと同時に、ややハスキーさを帯びた甘い声に一瞬でぐっと引きつけられますね。

目を閉じて歌う姿も印象的です。

冒頭は単独での弾き語りとなりますが、注目したいのはギターの音色。

映像がなければ、完全にアコースティックギターの生音です。

テレキャスターのフォルムからこれが出ているとは、にわかに信じがたいところですが。

そして、ハイポジションで奏されるアルペジオが何とも美しい…。

視覚的な情報に反する瑞々しいトーンに、こちらもいい意味で期待を裏切られた感覚に陥ります。

英歌詞の中で輝く、日本語の意味

Our memories are flowing past
I'm reaching for it through the cracks
手を伸ばせば I catch
Like I'm between a dream

出典: We Can't Stop It/作詞:MIYAVI・Lenard Skolnik・Seann Bowe 作曲:MIYAVI・Lenard Skolnik・Seann Bowe

メロディラインは、下行音型を中心としたフレーズの反復により構成されています。

英語詞を軸としながらも、ふいに挿入される日本語にドキッとさせられますね。

むしろ、歌詞の中で断片的にしか登場しない日本語のフレーズこそ、最も伝えたい言葉であるような思いに駆られます。

全体には希望というよりも、諦観に似た空気を感じますが…。

「こうしたい、だけどこうなんだ」という、逆接の構造が多いからでしょうか。

ただ、ネガティブというわけではない、不思議なバランス感覚をもったリリックですね。

ちなみにここからはドラムが控えめながら、確かなビートを添えます。

よく聴くと、はじめはハイハットとクローズ・リムショットを使ったシックなリズム。

そしてスネアの刻みに切り替わると、音楽がだんだんとピークへ向かうような高揚感を伴います。

曲名のリフレイン

コードワークで広がる音楽