自分を隠さないで

強いこととは弱さを見せられること

強くなれたならば 素直になれるかな
見えすいた完璧なフリは もうやめて

出典: マスカラ/作詞:常田大希 作曲:常田大希

今の頑固で意地を張った自分は弱さを抱えていると感じています。

素直になることとは、自分の感情に向き合い本当の気持ちを恋人に伝えることでしょうか。

人はどんなに努力しても完璧という状態にはなかなか辿り着けないものです。

つい恋人に対しては、いつも以上に自分をよく見せようとしてしまうのでしょう。

完璧にはなれないけれど、自分をよりよくしようと主人公は頑張ってきたのだと思います。

だけど、そうした自分の変化もあって恋人との関係は出会った頃とは変わってしまったのです。

マスカラの鎧

枕を濡らした 涙が乾いたなら 出かけようか
マスカラ剥がれたまま

出典: マスカラ/作詞:常田大希 作曲:常田大希

枕を濡らすほどマスカラが流れ落ちるのも構わずに泣いてしまうような恋をしています。

まつ毛を長く見せる化粧品であるマスカラの語源はイタリア語の「maschera」だといいます。

「覆う」という意味をもち、マスカラ同様に英語のマスク、仮面などを意味する「mask」もこの単語が語源です。

曲のタイトルにもなっているマスカラは、この歌詞のストーリーでは重要なメタファーとして作用しています。

マスカラが意味するのは、恋人同士それぞれが年月を重ねるごとに積み重ねていった変化です。

出逢ったあの頃は、お互いに今とはそれぞれ全く違う人間で違う付き合い方がありました。

でもマスカラでまつ毛をコーティングするように、自分を守ってよく見せるように変わってしまったのでしょう。

年月をかけて社会の中で身につけた自分を隠し表現する術なんて恋人同士の関係において必要なかったのです。

マスカラが剥がれるとは、身に着けた自己を守る鎧が自然に溶け落ちたような感覚を意味しています。

素の飾らない、恥ずかしいとも受け取れる自分を見せることがここでは表現されているのです。

刺激を求めてしまう日々

終わらない夢の狭間を切り裂いた
一筋の真っ直ぐな瞳 苦しいほどに胸を貫いた

出典: マスカラ/作詞:常田大希 作曲:常田大希

ここでは主人公が恋人と出会った時のことが振り返られています。

を追っている毎日の中出会った君は真っすぐに自分を見つめていました。

当時は苦しいほど魅かれた君との関係でした。

でも、次第に味気ないものへと変わっていってしまったのだと考えられます。

喰らえど喰らえど満たされぬ腹
打たれて打たれてびしょぬれのまま
在り来たりな毎日に 足りて足りて足りない僕ら

出典: マスカラ/作詞:常田大希 作曲:常田大希

以前は景色について使われていた「喰らう」という表現がここでは食べ物について再び使われています。

どんなに満たされるためにご飯を食べてもどんなに負荷をかけ雨に打たれても、刺激求め続けてしまう。

在り来たりな平凡な日々にも自分にも満足できているようでできておらず、物足りなさを感じています。

自分だけでなく恋人も今の二人の現実に納得がいっていない様子が「僕ら」という言葉に込められていますね。

強くなれれば関係を取り戻せる

強くなれたならば お互い許せるかな
見えすいた幼稚なフリは もうやめて
枕を濡らした 涙が乾いたなら 出かけようか
マスカラ剥がれたまま
“あの頃の二人のまま”

出典: マスカラ/作詞:常田大希 作曲:常田大希

強くなるとは許すことです。

恋人同士お互いが歩み寄って許すことができれば、状況は好転するでしょう。

自分たちは大人だと思っているし、恋人が自分を困らすようなことをするのもフリだと思っています。

主人公も恋人も、出会った頃のようにお互いを思いやったり良い関係を持てるように振舞うのは難しいのです。

マスカラを直したり問題がないように振舞わなくてもいいから演技や駆け引きはやめてほしい。

大人としてしっかりと自分と向き合ってほしいと思っている気持ちが伝わってきます。

強いとは取り繕うことじゃない