指先なぞるかすれた色 形さえ薄れてゆく
震える胸に溶かした痛みが 流れてはとめどなく

出典: 静かな夜に/作詞:R.P.P Dr Hardcastle 作曲:youth case

遠い過去をなぞってみても、愛しい人の姿は曖昧にぼやけていく。

切なさだけが募って、愛しい日々は遙か遠くで輝いている。

眩しいほど幸せだったからこそ、胸を締め付けるのでしょう。

そしてまた、1人で涙を流します。

過去との決別

2番のサビでは、忘れがたい過去との決別を心に決めます。

心を縛り、苦しいだけの過去なら捨ててしまった方がマシ。

もう戻らないなら、いっそ忘れてしまいたい。

そんな心の声が聞こえるようです。

追いかけて儚く消えた夢に 心は揺れて
別れを告げた 何も言わずに
誰かの呼ぶ声が今もまだ 響いてる
ひとり立ち尽くしてた 遠く見つめて

出典: 静かな夜に/作詞:R.P.P Dr Hardcastle 作曲:youth case

追いかけるほど遠く、手の届かない愛しい記憶。

曖昧にぼやけて遠ざかっていく日々に、心は千々に乱れます。

手を伸ばしたいけれど、届かない。届かないから、痛い。

そんな痛みに耐えかねたのでしょうか。遠い過去に背中を向け、記憶に蓋をします。

耳に残る声

遠い記憶の中では、愛しい誰かが自分の名前を呼んでいる。

振り返ることも、その人に触れることも叶わないけれど、忘れられない声です。

遠い記憶でありながら、鮮明に蘇る愛しさ。

その記憶にさよならをしてもなお、歩き出すことができないのでしょう。

1人きり、忘れがたい過去をぼんやりと見つめているのです。

月は君を映し出して 白く輝く
雨は降り止むことなもなく 僕を包んだ

出典: 静かな夜に/作詞:R.P.P Dr Hardcastle 作曲:youth case

ここで初めて「月」が登場します。

光り輝く月に遠き日の愛しい人を重ねます。

月が輝くほどに、いかにその人が大切な人であったかが分かります。

押し込めた記憶の中でも、確かに輝いて消えない光。

それが彼女なのでしょう。

月に愛しい人を重ねて、また涙に包まれます。

月と雨の対比が非常に美しい場面です。

月と雨に象徴されるもの

こうしてみると、月=彼女、雨=僕という図式が浮かんできます。

白く輝く月は、まばゆいほどに美しく輝く彼女。

どれだけ忘れようとしても忘れられないほど、心に強く刻まれた人なのでしょう。

対する「僕」は雨。

彼女の存在が大きくなればなるほど、喪失感に立ち尽くします。

輝く月と、降り続く雨。

それは消えない記憶の中でもがく「僕」と、涙に暮れる今の姿を象徴しています。

静かな夜に、一体何を想うのか?

「静かな夜に」は、しっとりと聴かせるタイプのバラードです。

大野智くんの伸びやかで繊細な歌声が胸の奥まで染み入ってくるようです。

そんな「静かな夜」は、静寂の中、1人愛しい人を想う歌です。

静かな夜に、1人想うのは……

静かな夜に、1人で雨に打たれながら過去を思い返す。

耐えきれず、心に蓋をして過去と決別しても、声は耳に残っています。

愛しい人の声、存在。

結局、過去と決別することなどできずに、愛しい人を思い出しています。

過去の呪縛から逃れられないまま、1人立ち尽くしている。

遠い過去と今を行ったり来たりしなががら、心の雨に打たれ続ける。

そんな悲しみが滲んでいます。

過去から踏み出せない男