「月虹」とは何か

BUMP OF CHICKEN【月虹】歌詞の意味を考察!ひとつだけの理由って?命に導かれた記憶とはの画像

2019年7月10日発表、BUMP OF CHICKENの通算9作目のアルバムaurora arc」。

このアルバムに収録されている「月虹」の歌詞を解釈してゆきます。

「月虹」はすでにアルバム発売前からファンの方にとっては馴染み深い楽曲でした。

TVアニメからくりサーカス」のOP曲として2018年10月には聴くことができたのです。

アルバム「aurora arc」は既発表曲も多く収録されました。

「月虹」はシングルなどにはならなかったものの既発表曲といっていいでしょう。

しかし「月虹」という楽曲の斬新なサウンドはいつでも新鮮さを感じさせます。

アイリッシュ・トラッドのようなスタイルのイントロから始り、やがてハードなロックナンバーになるのです。

サウンドの展開も多様ですが歌詞の情報量だって多くなっています。

藤原基央が伝えたかった思いを饒舌に述べている印象さえあるのです。

タイトルの「月虹」はいわゆる月の光で虹がかかる現象のことではありません。

藤原基央が独自のアイディアを積み上げて月と虹を同化させるという光景を描き出しました。

最近元気がない青年が登場しますが、生命というものの不思議さに目を啓いてゆく歌詞になっています。

この曲「月虹」の歌詞の意味を丁寧に紐解いてゆきましょう。

それでは実際の歌詞をご覧ください。

暗い日々からのスタート

憂うつの中から旅へ出る

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夜明けよりも手前側 星空のインクの中
落として見失って 探し物
心は眠れないまま 太陽の下 夜の中
つぎはぎの願いを 灯りにして

出典: 月虹/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

歌い出しの歌詞になります。

まずイントロのアイリッシュ・トラッドのような弦楽器主体のアレンジが素敵です。

藤原基央が狙っていた月と虹が合わさったものという不思議なものを音で表現します。

登場人物は語り手の僕と重要な存在であるあなたです。

僕とあなたの具体的な関係はこの歌詞では明示されません。

僕は日々の中で足掻いている青年です。

メンタルの状態は決して良好とはいえません。

眠ったとしても寝た気がしないようなつらい日々の中で喘いでいるのがいまの僕の現状です。

私たちの心は些細なことで風邪を引いてしまいます。

ブルーな一日に困ることなどはかわいいものでしょう。

つらいのはこうした憂うつが何週間も続いてしまうことです。

憂うつになるだけの理由が明確なときの方がまだマシかもしれません。

理由は何も思い当たらないのに世界との折り合いの悪さで暗い気持ちにふさぎ込むこともあります。

僕もこうした厄介な憂うつを抱え込みました。

しかし微かな希望のようなものを大事にしてどうにか生きています。

私たちがすがりつけるものは本当にわずかでしょう。

そのとき、一番私たちを回復に導いてくれるのは自分自身のバイタリティだったりします。

抱えきれないほどの虚無感

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何も要らない だってもう何も持てない
あまりにこの空っぽが 大き過ぎるから

出典: 月虹/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

中々、皮肉がこもったラインです。

僕はもう何も所有しないと歌います。

なぜならすでに持ちすぎているからだというのです。

普通ならばそれだけ恵まれた立場なのかと思われるでしょう。

しかし僕がいっぱい抱えているのは胸にある空虚さです。

ゼロには何をかけてもゼロにしかなりません。

僕が抱えるのは大きなゼロです。

ゼロに手を焼きすぎていて、もう他のことには手が回らないのでしょう。

それほど巨大な空虚というものはいつしか僕を永遠に飲み込んでしまいかねません。

私たちにしても僕の気持ちのようなものを抱えてしまうことがあります。

特に青年期の触れやすい感性ではどうしても虚無感に飲まれてしまいがちです。

藤原基央はこうした若いリスナーの気持ちを代弁するようです。

つまり彼自身の現状を僕と表現した訳ではありません。

若かった頃の自分の気持ちを思い出しながら僕という人物に肉付けしてゆくのです。

一回性のものを信じる

大事な人に求めるものは

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たった一度だけでも頷いて欲しい
鏡の様に手を伸ばして欲しい
その一瞬の 一回のため それ以外の
時間の全部が 燃えて生きるよ

出典: 月虹/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara

僕は誰に向けてこの言葉を発しているのでしょうか。

ここで僕が求めているのは同意というものです。

そしてお互いに求めあっているということを示して欲しいと願います。

相手は誰でもいいという訳ではないのでしょう。

自分にとって重要な意味を持つ人にだけ同意してもらえば満足するはずです。

誰かを求める気持ちが多方向に向くときだってあります。

しかしいまの僕はとても大切な人にだけその手を求めているという傾向が見られるのです。

というのも僕はこうした求め合うことに一回性という条件を加えています

何度も反復されるようなことであっては歓びの価値は総体的に低くなってしまうのです。

僕は一回性にある稀少な価値というものを追い続けます。

その他の人生のあらゆる瞬間がこのときのためだけに注がれているような強烈な体験を求めるのです。

世界へ探しに行こうじゃないか

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僕の正しさなんか僕だけのもの
どんな歩き方だって会いに行くよ
胸の奥で際限なく育ち続ける
理由ひとつだけ抱えて
いつだって 舞台の上

出典: 月虹/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara