シュールかつシリアスな歌詞

きっと ウルトラマンのそれのように
君の背中にはファスナーが付いていて
僕にそれを剥がし取る術はなくても
記憶の中焼き付けて
そっと胸のファスナーに閉じ込めるんだ

惜しみない敬意と愛を込めてファスナーを…

出典: ファスナー/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

誰もが本心を隠し通している

ウルトラマンや仮面ライダーのファスナーの中に本当の自分を隠したまま演じているのだ。

そんなシュールな例えでシリアスな事柄を歌っています。

私たちはお互いにそのファスナーを開ける手立てがありません。

しかしある局面では私たちはファスナーを外してみて皆の知らない顔を晒すこともあるのです。

僕はそんな瞬間に垣間見た君の素顔を大事に記憶しておこうと歌います。

題材に沿うように生楽器だけで演奏しきったのが見事でしょう。

Mr.Children大人の遊び心の真骨頂に触れた気分です。

8曲目「Bird Cage」

Mr.Children【It's a wonderful world】アルバム全曲解説!中期の名盤!の画像

ポップ・ソングとしては大作に当たる6分33秒の楽曲

イントロからダイナミックな演奏が始まります。

ボーカルが被さると一度クールダウンしますが、サビでまた演奏が弾けるのです。

静と動のダイナミクスドラマチックな楽曲になっています。

静謐なサウンドで鳥かごの中での不自由な暮らしを歌う

一方、弾けたサウンドで鳥かごから自由になったふたりの未来を高らかに歌い上げます

お別れの詩でありながら深刻な悲壮感はないです。

歌詞を見ていきましょう。

不本意な生活からの自由

明日から僕ら晴れて自由の身だ
鳥篭のドアはもう開いてるんだ
だから 遠く 遠くへ
オアシスの前で力尽きるとしても
明日へと 僕ら飛んでいかなくちゃなんない
ずっと 遠く 遠くへ
蒼い 浅い 昨日を嘆く
やがて 脆く 時が 洗い流していく
甘い記憶
遠く 遠く 遠く
遠く 遠く 遠くへ

出典: Bird Cage/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

どこかにいるらしい間抜けな神様がふたりをつがいとして鳥かごで飼っていた

僕らはその中で疲弊していったねという内容の歌詞です。

クライマックスを抜粋しました。

明日にはようやく鳥かごから自由になります。

鳥かごにつがいで飼われていたというのは、どこか不本意な気持ちで一緒にいたということでしょう。

不本意な組み合わせでありながら、一緒にいなくてはいけないというのは理不尽なものです。

お互いが抱えていたフラストレーションが限界に達したときに解き放たれます。

鳥かごの外の暮らしも厳しい環境です。

このふたりの未来に不安を感じながら曲が終わります。

9曲目「LOVEはじめました」

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現代でいうEDMのような打ち込み中心のサウンド。

かなり凝ったサウンドで先鋭的です。

これが2002年のサウンドとはとても思えません。

時代を越えて通用するサウンドに仕上がっています。

歌詞都市の荒んだ光景を抜書きしたような内容です。

この歌詞とサウンドの先進性ともに相性が良いみたい。

実際の歌詞を見ていきます。

軽薄な世の中に鋭い視線

殺人現場にやじうま達が暇潰しで群がる
中高生達が携帯片手にカメラに向かってピースサインを送る

犯人はともかく まずはお前らが死刑になりゃいいんだ
でも このあとニュースで中田のインタビューがあるから
それ見てから考えるとしようか

出典: LOVEはじめました/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

読んで頂くと分かるのですが、非常に辛辣な歌詞になっています。

人が殺されたことの重みに気付けずに事件現場でテレビカメラに向けてピースサイン。

街角でレポートをする度に映る街の人々のアッケラカンとした態度。

モラルなどはもはや崩壊してしまったのでしょうか

それとも元からこの国にモラルなどというものはなかったのかもしれません。

社会を憂う主人公もニュース番組での中田英寿のインタビューを楽しみにしているミーハー。

薄っぺらさではどちらも本質的な違いはありません。

「LOVEはじめました」というタイトルは「生ビールはじめました」を模したものです。

大事なはずの愛が消費財と同じような扱いを受けていることを後発しています

10曲目「UFO」

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桜井和寿は捨て曲のつもりで書いたのに小林武史の熱意名曲になりました。

なるほど小林武史の鍵盤楽器の音がそこかしこで鳴り響ききます。

典型的なMr.Childrenサウンドです

ファンやリスナーにとっては安心して聴けるサウンドなのかもしれません。

一方で宇宙空間を意識させるようなスペーシーな展開もあります。

歌詞を見ていきましょう。

リセット・ボタンとしてのUFO

遥か彼方から飛来する未知の光が
僕らを包んで
迷いも苦しみもない世界へと誘う
あのUFOが出てくる夢
僕の心を無重力の宇宙(そら)へ浮かべる
二人を 夢の中へ連れてっておくれ
UFO来ないかなぁ

出典: UFO/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿