赤い公園【絶対零度】
新体制後初のシングル作品
様々なジャンルを1つに混ぜたような自由な音楽性で人気を博し、2012年にはメジャーデビューを果たしています。
今回ご紹介する【絶対零度】は、2020年1月にリリースされました。
アニメのエンディングテーマに起用
この楽曲はTVアニメ「空挺ドラゴンズ」のエンディングテーマ曲に起用されました。
捕龍船に乗り、空を駆ける龍を狩りながら旅をしている人々を描いたストーリー。
「龍捕り」と呼ばれる仕事で生計を立てる人々が様々な困難を乗り越えていく姿を描いています。
常識って?
ありえないことに挑戦
アラバの海の真ん中
泳いでみせてきやしゃんせ
天と地を裏返してやれ
出典: 絶対零度/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
歌詞冒頭の「アラバの海」。一般的な表現に直すと死海のことです。
中東に存在する死海では、その塩分濃度の高さから魚が生息できません。
さらに人間の身体が簡単に浮いてしまう場所でもありますから、死海で泳ぐなんてことはありえないのです。
ただ、ここではその「常識的にありえないこと」をやってみろと言っていますね。
これはつまり、人々の常識をぶちこわすこと。
それによって人々の考えが及ばないことに挑戦することを意味しています。
さらに続く3行目のフレーズからも「ありえないことをやってのける」意気込みが感じられますね。
このフレーズから推測すると、【絶対零度】は何かに挑もうとしている人たちの意気込みを表現しているのでしょうか。
邪魔をする存在
ガラス細工の鉢ん中
見世物小屋の家主が
光を曲げて縮んだ
出典: 絶対零度/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
しかしそんな「常識外の挑戦」には邪魔がつきもの。
1行目は丸い金魚鉢のような形を想像しますが、これが意味するものこそ「その人が持つ常識」でしょう。
きっと1人1つずつ金魚鉢という「自分だけの常識」を持っています。
ただ金魚鉢で例えられていることからわかる通り、その人の常識は世界に対してとても小さなもの。
2行目からはまさにその小さな常識に囚われること、そしてその常識を他人に押しつけることの危険性が示されています。
2行目「~家主」はそうして他人に常識を押しつけようとする人物。
そんな人物によって金魚鉢に押し込められた人々には、外の世界が歪んで見えていることでしょう。
これが意味することは、他人の常識のせいで世の中の物事を適切に捉えられなくなっている人々の姿です。
きっと冒頭で「常識をぶちこわそう」という勢いが感じられたのは、このような危険性があるから。
全く関係のない描写のように見えて、きちんとストーリーは繋がっています。
絶対にやり遂げたいこと
息を吸って吐くことが奇跡なんだと知っても
淡い泡ひとつ潰したい
燃えるような赤い魚
出典: 絶対零度/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
3行目で「魚」という言葉が登場したのは、冒頭で「死海」が描かれていたからでしょう。
生物が生きられないといわれる死海を泳ごうという、まさに常識はずれなチャレンジ。
魚は1行目にあるとおり生命の大切さを理解しています。
しかし2行目では、やや矛盾した姿勢を持っているようにも感じられるのです。
潰そうとしている泡は、魚が呼吸したときにのぼる気泡のこと。
つまりこれは、壮大なチャレンジへの布石でしょう。
いまここで生きている、という安定的な幸せ・安全・安心が危険に冒されてでもやりたいことがある。
だからこそ再度3行目を見ると、魚が赤いのです。
大いなるチャレンジを前に、気持ちが燃え滾っているのでしょう。