やしきたかじんのNo.1ヒット曲

喋りのオモロイおっちゃん?

【やしきたかじん/東京】関西弁がクセになる歌詞を徹底解釈!主人公は東京のことをどう思っているの?の画像

大阪で長く愛され続けているアーティスト・やしきたかじんさん。

2014年に亡くなられた今もこの方を慕う声は後を絶ちません。

「何を起こすか分からない荒くれ者」として数々の伝説が残っているにもかかわらず、です。

筆者は子供の頃関西に住んだことがあり主にトーク番組でたかじんさんを見ていました。

次々に話が展開していくのを見て「よう喋るおっちゃんや……」と思っていたものです。

しかもテレビなのに暴言を吐くわ、タバコは吸うわ、お酒は飲むわ……。

でも、それよりもトークの中味が過激でよく放送できていたものだと思います。

途中何度も「ガオー!」と動物の声をかぶせて放送できない部分は処理されていましたが。笑

大嫌いな「東京」を歌う

【やしきたかじん/東京】関西弁がクセになる歌詞を徹底解釈!主人公は東京のことをどう思っているの?の画像

普段は縦横無尽にフロアの空気を操る司会振りを見せつけているたかじんさん。

でも本業は何と言っても「歌手」です。

歌となるとその世界にどっぷり入り込み、観客の心に深く沁み渡る歌声を届けてくれました。

そのたかじんさんの曲の中でも1993年にリリースされた「東京」は最大のヒット曲です。

リリース当初は下火でしたが、数週間後に有線放送のリクエストから火が付きました。

大阪の喫茶店や飲み屋で繰り返し流されるうちにファンが増えていったのです。

翌年、この曲は日本有線大賞の「特別賞」「読売テレビ最優秀賞」を受賞しました。

それにしてもたかじんさんの東京嫌いは有名な話です。

ご自身の冠番組をいくつも持ちながら東京では絶対に放送を許可しなかったのですから。

二子玉川や下北沢に住んでいたこともあるのですが、よほど嫌な思いをしたのでしょうか?

そのたかじんさんが歌う曲のタイトルが「東京」……。

これは気になって仕方がないですね。次は歌詞を見ていきましょう。

東京の儚い恋物語

好きやのに、あかんのかな

あんたとなら
いつ死んでもかまわへん
忘れないで
そんな女いたことを

見上げた空さえも
冷たい色やけど
あたしが本気で惚れたひと
そう生まれた街やから

いとしさも 憎しみも
すべてすべて ぎゅっと抱きしめ
祈るように 今日も灯が
ともる東京

出典: 東京/作詞:及川眠子 作曲:川上明彦

歌の主人公は「あたし」という一人称の関西弁の女性。

別れてしまった「愛しい男」への気持ちがつづられています。

女は何らかの用事で東京に来て、男と出会います。

アプローチがどちらからだったかは分かりませんが、2人は熱烈な恋に落ちました。

女にとっては知らない人たちばかりの冷たい街・東京。

それでも男と一緒にいられるだけで幸せを感じられたのでしょう。

女は東京に留まる決意をします。

しかし幸せな日々は長くは続きませんでした。

男がある日突然言うのです。

「夢のためにもう一緒にはいられない」と。

女の呆然とした顔が浮かびます。

だって女は「あんたとならいつ死んでも……」の心意気で東京にいるのですから。

東京の空は高くて寒々としています。

でも女は「ここはあの人の生まれた街」そう思うことで寂しさを軽くしようとします。

いろんな感情が渦巻く東京。

夜を迎え薄暗くなると、あちらこちらでネオンが灯(とも)り出します。

女は男の夢が叶うように祈らずにはいられないのかもしれません。

ええ思い出もあるけど……

夢だけ見て
生きてるようなあんたやった
いつかあたし
待つことにも慣れてたよ

くすんだ風のなか
肩よせ暮らしたね
誰にも似てへんひとやけど
本物の愛をくれた

悲しくて 悔しくて
泣いて泣いてばかりいたけど
かけがえのないひとに
逢えた東京

出典: 東京/作詞:及川眠子 作曲:川上明彦

女はきっと夢を語っているときの男が好きだったのでしょうね。

だから家で一人で待つのも苦にはなりませんでした。

見慣れない街並に戸惑う女ですが、隣りには大切な人がいます。

初めて「本当の愛」を教えてくれた人です。

でも夢と天秤にかけられ、男は夢を選びました。

どんな夢か分かりませんが共に歩むことはできないのですね……。

女はとにかく泣いて、泣いて泣いて暮らします。

関西弁で言うと「なんであかんねん! あたしがいたってええやん! 一緒でええやん!」

――といった感じでしょうか。

関西の女性が号泣するときって怒鳴っている印象があります。

「しくしく」とは泣かなさそうと言いますか……。

筆者の関西の友人が元気女子ばかりなので、そうでない方、申し訳ありません。

それでもまだ好きなんや……

痛いほど好きなのに
なんでなんで 別れたんやろ
いまもまだ 胸の奥
揺れる東京

悲しくて 悔しくて
泣いて泣いてばかりいたけど
かけがえのないひとに
逢えた東京

出典: 東京/作詞:及川眠子 作曲:川上明彦

女の胸の痛みは日々続いて薄れることはありません。

繰り返し考えてしまいます。

「何で別れたんや。まだこんなに好きやのに。

てか、別れたのにあたし、いつまで東京おんねん。

友達おらんしみんな歩くん遅いしエスカレーター右側空けよるし!

もうイヤや……

いろんな思いを抱えたまま、女はそれでも東京にいます。

愛を教えてくれた男がいるこの街からまだ離れられないようです。

涙が枯れる頃には東京の空がもう少し明るく見えるでしょうか。

男への未練をどうにも断ち切れない女性の歌をたかじんさんが見事に歌い上げています。