あなたをずっと見ているから
ちょっとした変化に
少しだけ早く気付いてしまっただけ
あの子を目で追ってどっか辛そうで
あなたはきっと恋をしている

出典: 願い/作詞:片岡健太 作曲:黒田隼之介

ある日、主人公は想い人のある「変化」に気が付きました。

それは相手をよく観察していないと分からないくらいの違い。

主人公はその人が好きだからすぐに気が付いたのでしょう。

好きな人はずっと見てしまうものですが、その好きな人も自分ではない何かを見ていたようです。

その視線の先にいたのは、「あの子」という別の人。

目で追っているということは、その人は好きな人の目の前か横をすっと歩き去っていったのでしょうか。

加えてただ見ているだけでなく、どこか物憂げな視線です。

その時主人公は分かってしまいました。

自分の好きな人は、「あの子」という別の人に恋をしているのだということを。

そして何故そんな些細な変化を敏感に察知出来たのかというと、その思い人の顔が自分とそっくりだからでしょう。

片思いの恋とは相手に伝えず心の中で仕舞い込んでいる分、どこか切なく苦しさを伴うものです。

その切なさ・苦しさは経験した者にしか分からず、物憂げな視線は自分と全く同じだということに気付きます。

これが面白い所で、主人公は思い人がもう1人の自分に見えて仕方ないのではないでしょうか。

そんなもう1人の自分を止めることも背中を押すことも出来ず、その狭間で揺れていることが分かります。

好きという感情のどうしようもなさ・面倒くささがよく表現されているのではないでしょうか。

失恋を感じて

ひとつふたつ願っても
あの子じゃない
私には代わりは務められず
みっつよっつ願っても
虚しくなる
この胸の中で眠れ
いつか目覚める日まで

出典: 願い/作詞:片岡健太 作曲:黒田隼之介

主人公は失恋を感じます。

どんなに振り向いてほしいと願っても、好きな人はこちらを見てくれません

主人公は「あの子」になることも代わりになることもできず、苦しい思いを抱いたでしょう。

人によっては「別の人が好きだというのなら、何としても自分に振り向かせよう」と燃えることもあります。

ですが主人公は違いました。

辛いけれど、今この想いは胸に秘めることにしたのです。

もしかしたら、いつかこの恋が再燃するかもしれません。

新しい出会いで、また別の人を好きになる時が来る可能性だってあります。

ただ少なくとも今は、冬眠するかのようにこの想いにふたをすることにしたのでした。

それは一見殊勝なようですが、しかし同時に主人公はどこかでずるい人であるとも感じ取ることが出来ます。

というのも、本当に好きなならばたとえ叶わないと分かっていても、真っ向勝負で告白すればいいのです。

その勝負すらもせず、行動に移す前から勝手に諦めて勝手に物わかりのいい人ぶっているだけではないでしょうか。

「私には代わりは務められず」という歌詞自体がそもそも嫉妬している相手に取って代わろうとする下心を表わしています。

主人公は決してこの歌詞で表現されるほどピュアで健気なのではなく、寧ろどこかまとわりつくエゴがあるのです。

しかし、それを表に出してしまうと主人公は浅ましい身勝手な女だと思われてしまうと判断したのでしょう。

そんな女のずるさもこの歌詞で表現されています。

本心は言えない

あなたの瞳に映って
「うれしい」「たのしい」と言い合って
絵空に見ていた儚い夢だ
白い息を小さく吐いて
「さびしい」「かなしい」って
隣から私も言いたかったよ
そばにいてよ

出典: 願い/作詞:片岡健太 作曲:黒田隼之介

別の人に惹かれる相手を見て、主人公の複雑な思いが募っていきます。

もしかしたら好きな人が惹かれる「あの子」は、その人のことを見ていないのかもしれません。

だから好きな人もまた振り向いてもらえず、切ない想いを抱いているのでしょう。

今の主人公と同じです。

それでも主人公がつらい気持ちを吐き出さないのは、好きな人を困らせてしまうからかもしれません。

主人公と好きな人がどれだけ親しいかは分かりませんが、今の相手に本当のことは話せないでしょう。

他に好きな人がいるのに、別の人から好意を伝えられたら誰だって戸惑います。

ただ諦めきれない想いを、胸の中で眠らせておくしかないのです。

雪にのせた想い

冬といえば雪、ということで主人公たちがいる場所にもが降ってきました。

それを見た主人公は何を考えたのでしょうか。

もちろん間違いなく、好きな人の顔が思い浮かんだことでしょう。

かといって、その降り積もった思いを爆発させて主人公に告白する勇気すらもないこともまた示されています。

厳しい見方をするならば、主人公は不器用なヘタレであることがここで示されているのではないでしょうか。

諦めてさっさと次を見つけに行くような器用さもなければ、振られることを覚悟でぶつかる度胸もないのです。

物凄く未練がましいのですが、女性の片思いは男性のそれに比べて遥かにミステリアスで絵になることが分かります。

やっぱり相手はあの人を見ている

突然降ってきた雪を誰に伝えよう
私は一人だけだよ
あなたはどう?
答え聞くまでもなかったようで
目線の行き先が諭すよ

出典: 願い/作詞:片岡健太 作曲:黒田隼之介

突然、主人公たちの目の前にが降ってきました。

ひらひら降りてくる雪や、どんどん白くなっていく街並みは美しいでしょう。

人は美しいものや楽しいものを見つけると、真っ先に一番好きな人に教えたくなる生き物です。

主人公も、好きな人にこの美しい雪を伝えたいと思いました。

とはいえその好きな人はまた別の人が好きなので、言うことはできないのですが…。

それにそんなことを考えている間にも、想い人は心を寄せる「あの子」を見ています。

想い人はその子に雪のことを教えたいと思っている様子。

またしても主人公は切ない心地になります。

どんなに願っても

ひとつふたつねだっても
叶わぬ希望
あなたの目線の先にいる事
みっつよっつめ叶っても
虚しくなる
ひとつめになれないこと
あの子になれないこと

出典: 願い/作詞:片岡健太 作曲:黒田隼之介