二つの予測
あなたが守った街のどこかで今日も響く
健やかな産声を聞けたなら
きっと喜ぶでしょう
私たちの続きの足音
出典: 桜流し/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル・Paul Carter
「二度と会えない人」と「新しい産声」というキーワードが浮かび上がりました。
このことを指し、母・藤圭子の死と宇多田ヒカルの出産を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし「桜流し」が発売された2012年、藤圭子さんは健在でした。
偶然にしては出来過ぎていますね。
彼女は巫女のように何かを感じ取っていたのでしょうか?
もう一つ、宇多田ヒカルは劇中で何かが起こることを予感していたのでしょうか?
くどいようですが彼女は脚本等には一切触れていません。
しかしヱヴァンゲリヲンという作品には常に「死生観」が付いて回ります。
「あなたが守った街」というフレーズは作品と確かにシンクロしています。
優れた芸術家は作品が暗喩する事を受け手に委ねます。
「桜流し」は泣ける曲であり、私たちファンの妄想を掻き立てる名曲なのです。
第3位『忘却 feat.KOHH』
いよいよTOP3の発表です。
宇多田ヒカルの泣ける曲第3位は「忘却 feat.KOHH」です。
数少ないコラボ曲の中でもとりわけ異色の歌と言えるでしょう。
ここで共演するKOHHは日本のギャングスタラップの代表とも言える人物です。
歌詞にも出てくる身体中に刻まれたタトゥーは彼のトレードマークです。
実は宇多田ヒカルは彼のファンだったのです。
大嫌いで大好きなあの人の不在
熱い唇 冷たい手
言葉なんか忘れさせて
強いお酒にこわい夢
目を閉じたまま踊らせて
明るい場所へ続く道が
明るいとは限らないんだ
出口はどこだ 入口ばっか
深い森を走った
出典: 忘却 feat.KOHH/作詞:宇多田ヒカル・Chiba Yuki 作曲:宇多田ヒカル・Chiba Yuki
この曲では宇多田ヒカルは歌声そのものがむせび泣いています。
「忘却」とは何を指しているのでしょうか?
宇多田ヒカルとKOHHの共通項は「大切な親」の不在です。
宇多田ヒカルは母親の藤圭子さんを亡くして3年。
KOHHは「俺はアンタを憎んでる」と言う父親を3歳の時に失くしています。
その壮絶な人生は般若との共作「家族」にて語られています。
共鳴する二人の想い
男にも二言あり 大好きだから嫌い
会えるんなら会いたい 幸せなのに辛い
俺たちは欲張り またないものねだり
何もないお願い
熱い唇 冷たい手
言葉なんか忘れさせて
硬いジーンズ 優しい目
懐かしい名前で呼んで
出典: 忘却 feat.KOHH/作詞:宇多田ヒカル・Chiba Yuki 作曲:宇多田ヒカル・Chiba Yuki
「忘却 feat.KOHH」はお互いの人生を共有するような哀しい曲です。
2人は「強いお酒でも忘れられない思い出」を愛おしそうに言葉にします。
いい記憶も嫌な記憶も今の自分を作り上げたかけがえのないものです。
母親になった宇多田ヒカルの強い意志を感じ涙が止まらない名曲です。
第2位『花束を君に』
宇多田ヒカルの泣ける曲第2位は「花束を君に」です。
朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の主題歌として2016年に発表されました。
ショートverのPVを始めて目にしたのが昨日の事のように思い出されます。
曲調も歌詞も、歌い方までもが今までの宇多田ヒカルではないのです。
彼女が母親になっていたのは周知の事実でした。
しかしここまで「母性」溢れる宇多田ヒカルの歌声を聴くのは初めてでした。