2018年のヒップホップシーンの主役は?
2018年、日本のヒップホップシーンは興味深いトピックが満載でした。
動画再生数では随一の記録を誇るT-Aceやちゃんみなの大ブレイク。
ファッション業界からも絶大な支持を得るKANDYTOWNクルーの活躍。
YENTOWN周辺では各メンバーのOdd Futureのように神出鬼没な活動が話題になりました。
ベテラン勢では薬物所持等でのスキャンダラスな話題がSNSをざわつかせる騒ぎに発展。
追い打ちをかけるようにJ-RAP黎明期からのレジェンドECDもこの世を去りました。
様々なトピックが並んだ2018年のヒップホップシーン。
その中でも群を抜いて話題となったのはやはりBAD HOPでした。
伝説となったBAD HOP武道館公演
BAD HOPの躍進についてはもはや説明不要でしょう。
「高校生ラップ選手権」という肩書さえも彼らにとっては遠い過去の話です。
数々のワンマンライブのチケットは即ソールドアウトしプラチナチケットへと変貌。
2018年にはオリジナルアパレルブランド「BreatH(ブレス)」も立ち上げました。
GQ JAPANミレニアルズ・カタログではDIESELのクチュールコレクションのモデルとして活躍。
そして最大のトピックは2018年11月の武道館ワンマン公演です。
先行発売分を含むチケットを即日ソールドアウト。
無料配布された新作「BAD HOP ALL DAY vol.2」は高額転売が続くため後に公式で配信されることに。
もはやジャンルを超えたBAD HOP現象が日本中を席巻したのです。
2018年最大の話題作となった「BAD HOP ALL DAY vol.2」
川崎サウスサイドの闇を象徴したアートワーク
今回紹介する「Walking Dead feat. Vingo & Benjazzy」。
例の武道館公演で配布された「BAD HOP ALL DAY vol.2」の6曲目に収録されています。
過去作以上に衝撃的な内容の続く本作。
アルバムジャケットについても触れておきましょう。
脅迫文のようにコラージュされたシンプルなアートワーク。
中央に配置された一見何の変哲もない古びた建物「池上ランドリー」。
それはBAD HOPの背景である川崎サウスサイドの闇を端緒に表現しているのです。
「Stay」で映し出された池上町

Stay / G-K.I.D & AKDOW & Bark
俺の生まれた街 朝鮮人 ヤクザが多い
幼い少女がCharlie 絶えねぇレイプ 飛び降り
金のために子供たちも売人か娼婦へ
生きるために罪を犯す罪人かホームレス
出典: Stay/作詞:G-K.I.D,AKDOW,Bark 作曲:HOOD ART
その冒頭に映し出されるのが「池上ランドリー」です。
この建物は工業地帯である川崎南部に位置し、朝鮮半島からの移民で構成された池上町の入り口。
メンバーのBarkが生まれ育った街です。
「Stay」のMVでバラック建ての違法建築が立ち並ぶ街を走るBark。
まさにこのBarkのリリックが表現する通り川崎の過酷な一面を体現する街です。
BAD HOPのメンバーは皆この川崎南部で過酷な少年時代を過ごしてきました。
「Walking Dead feat. Vingo & Benjazzy」で歌われる内容。
そこでは川崎南部の誰も知らない闇が隠されているのです。
「Walking Dead feat. Vingo & Benjazzy」
川崎サウスサイドに巣くうゾンビとは?

Walking Dead feat. Vingo & Benjazzy/BAD HOP
ここからは「Walking Dead feat. Vingo & Benjazzy」の歌詞を見てゆきましょう。
KMプロデュースの不穏なビートに乗せて歌われるのは川崎サウスサイドの呪縛です。
モチーフとして使われるのは「Walking Dead=ゾンビ」が巣くうディストピア的世界観。
ゾンビ映画の生みの親であるジョージ・A・ロメロ。
彼は現実世界に実在する闇の象徴としてゾンビを描きました。
BAD HOPもその伝統にのっとり川崎に実存する闇を描いたのです。