世の中の不条理と向き合って出来た1曲「Shout」
今回紹介するのは2014年8月13日にリリースされたandropの5枚目のシングル「Shout」です。
「Shout」は2014年に放送されたドラマ「家族狩り」の主題歌として制作された1曲。
制作にあたってドラマの演出担当、坪井敏雄氏とのかなり綿密な打ち合わせが行われたようです。
ドラマのメイン演出担当の坪井敏雄は、ハードな描写を伴うミステリーであり、骨太な人間ドラマでもある作品を映像化するに当たり、主題歌が肝になると考え、撮影の傍ら実際に撮影された映像を示すなどして内澤とテーマなどを話し合い、「この作品のためにあるべき」歌を制作するとの内澤の言葉を受けている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Shout_(andropの曲)
タイアップ作品は数多くあれど、ここまでの擦り合わせが行われている例はあまり目にするものではありません。
andropのヴォーカルギター、内澤のこだわりに「楽曲が主役」というものがあります。
彼にとってその曲が何のために作られた曲なのかということは、一番大切なことなのではないでしょうか。
楽曲のテーマは
制作の際、内澤は自分の思っていることと「家族狩り」の持っているテーマの重なる部分を探したと語っています。
そうやって辿り着いたのは「不条理」というテーマでした。
作品のテーマである家族の間や、人間の生活の中で巻き起こる「不条理」をテーマとし、それらに対する感情の「叫び」(Shout)を込めた歌詞の楽曲を完成させた。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/Shout_(andropの曲)
ドラマの中で起きることほど劇的ではないにせよ、不条理というのは私たちが生きる世界にも溢れているもの。
自分にとって正しいことが、他の人にとってはそうでないということはいくらでもあります。
これに対し内澤は「生きづらい世界に押し潰されずに今を精一杯生きてほしい」と発言。
例え他人と相容れなくても、自分の気持ちを大切にしてほしいという意味がこのメッセージには込められています。
「不条理」というネガティブなテーマから生まれたのは、そんな前向きな楽曲でした。
そこにはきっと、世の中を強く生き抜いていくためのヒントが隠されているのではないでしょうか。
「家族狩り」とは
制作のきっかけであるドラマ「家族狩り」についても少し触れておきましょう。
『家族狩り』(かぞくがり)は、天童荒太が1995年に発表した長編小説。連続して起こる家族を狙った殺人事件をメインに、登場人物たちそれぞれの心の葛藤を描く。2014年には本作を原作とするテレビドラマ『家族狩り』が放送された。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/家族狩り
殺人事件という押し迫ったシチュエーション。
そして家族というのは、多くの人にとって一番身近な存在です。
一緒に暮らしているからこそ、相容れない部分が際立つこともあるでしょう。
こうした要素から内澤が「不条理」というテーマを導き出したことが伺えますね。
ドラマ化に際しての構想にも7年もの歳月が掛かっており、まさに満を持して放送された作品だと言えるでしょう。
テレビドラマ化の企画は、プロデューサーの植田博樹が天童原作の『包帯クラブ』映画化(2007年)を担当した際に原作を読み、映像化を希望したところから始まったが、なかなか企画が通らず、構想に7年がかかっている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/家族狩り
ドラマの制作にも原作者の天童荒太が関わっており、andropへの楽曲の依頼も氏の判断によるところもあるようです。
なんでもアルバムを最初の数秒を聴いた時点で「是非」と思ったとのこと。
想いの込められた作品というのは少し触れただけで伝わるものなのですね。
楽曲を考察
「Shout」の制作にあたって内澤は「たくさんの人に聴いてもらえることを意識した」と語っています。
これはドラマの主題歌であるということと、曲に込めたメッセージが多くの人に届いて欲しいという気持ちからでしょう。
彼にとってそういった強さを持つ曲というのは、メロディと歌詞が同時に出来る楽曲だといいます。
この曲を作るときも、両方が自分の中から合わさって出てくるのを待ったそうですよ。
作詞家、作曲家という区分があることからも、それぞれ別々に作られる楽曲にも良曲がたくさんあることは明白です。
内澤の言う楽曲の持つ強さというのは、そういった理屈では語れない部分にあるのではないでしょうか。
ここではそんな「Shout」という楽曲をレビューしていきましょう。