須田景凪「veil」はアニメ炎炎ノ消防隊ED
須田景凪さんの「veil」(ベール)は5曲入りのEP「porte」(ポルテ)の1曲目を飾ります。
さらにテレビアニメ「炎炎ノ消防隊」1期14話までのエンディングテーマにも起用されました。
まず、タイトルのベールは何を意味しているのか、といったところから謎めいていますね。
女性用の帽子として用いる薄い布。ウエディングベールなど。多くは頭の上から顔を隠すようにかぶせる。かつては悪魔などから身を守る効果があるともされた。転じて、物事の真相や本当の姿がわかりにくくなっている要因を表す。「神秘のベール」など。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ベール
何かを隠しているのでしょうか。
それとも何かを避け、何かを守ろうとしているのかもしれません。
そうすると「炎炎ノ消防隊」というアニメともリンクしそうな気配がただよってくるでしょう。
あるいは答えはよくわからない「神秘のベール」に包まれている可能性も考えられます。
不思議なタイトルがつけられたこの曲の歌詞を紐解いていきましょう。
「veil」の歌詞を解釈
宙に舞う?
笑えない日々を辿ったって
変わらない今を呪ったって
宙に舞った言葉じゃ
あなたを救えないのだろう
出典: veil/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
まずはこの歌物語の主人公の独白から始まりました。
どうやら主人公はあなたを救いたいものの、その願いは叶わないだろうと嘆いているようです。
もしかしたらあなたは大変な状況に陥っているのかもしれませんね。
そんなあなたの状況については描かれていないので、今のところはまだすべてが曖昧です。
ただ、主人公がどうやってあなたを救いたいと思っているのか?についてはうっすらわかります。
その方法は言葉を使うということ。
ところが言葉なら何でも良いわけではないというのが冒頭の3行です。
まとめると「言葉であなたを救いたいものの、過去や現在に関する〇〇の言葉ではダメ」そんな話です。
この〇〇の部分を解き明かすポイントになるのが1~2行目を踏まえた「宙に~」の部分です。
苦い思い出を振り返っても、どうしようもない現実を呪っても、地に足のつかない言葉にしかならない。
そんな意味ではないでしょうか。
裏を返すと、あなたを救うためには浮ついた言葉ではなく、落ち着いた言葉が必要という話になるでしょう。
ここで少々深読みしますと、「宙に」は「中二」(中学二年生)に空耳できるかもしれません。
思春期は生きる意味を自問自答したり自分探しをしたり、多感な年頃です。
大人になると悩む暇もなく仕事や生活に追われがちですが、それでも落ち込むこともあるでしょう。
こうした悩みを吐露するような言葉ではあなたを救えない、と悩む主人公。
そんな二重構造になっています。
また「炎炎ノ消防隊」を引き合いに出すと、火事で舞う火の粉や誰かを救えなかった過去が想像されるでしょう。
たどり着きたい場所
届かないままの景色と
温まることない痛みと
肩を寄せ合って歩いていた
遠いところへ行けるように
出典: veil/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
わかりやすい日本語で幅広い意味に解釈できるよう歌詞は紡がれています。
この歌物語の主人公に、聴く人それぞれの日常を重ね合わせることもできるでしょう。
または主人公が語りかけているあなた=自分と受け止めることも可能です。
そのうち後者の場合、主人公=須田さん自身かもしれないと考えられます。
シンガーソングライターの須田さんは作詞も手がけられているわけです。
つまり歌詞として言葉を綴ることによって、あなた=「須田さんの音楽を聴く人」を救いたい。
このようにも考えられるでしょう。
ただ、須田さんの音楽作りには葛藤があり、絶望や心の傷と隣り合わせのようだと感じているのかもしれません。
あるいは須田さんの音楽を聴く方と二人三脚でここまできたという須田さんの思いも読み取れます。
悩みながらも言葉を使って音楽を作っているのは、目標が遠いところにあるからでしょう。
2行目の「温まる~」は今後の前フリになっているので要チェックです。
あなたを救う方法とは
冷たく愛する?
あなたの言う希望だとか
夢に見た理想ならば
どんなに冷たくたって
愛してみせるよ
出典: veil/作詞:須田景凪 作曲:須田景凪
この4行の部分は、3行目さえなければごくポジティブな表現になります。
まず「希望・夢・理想」、どれも非常に前向きな言葉です。
こうしたテーマを愛して歌詞を書くことはできる。そんな須田さんからのメッセージなのではないでしょうか。
ただ3行目でひねりが入っています。
これが先ほど前フリになっているとお伝えした「温まる~」を言い換えた表現です。
主人公を須田さん自身と仮定すると、須田さんの心には傷があり、温まらない、冷たいのかもしれません。
それでも愛する。
ネガティブな状況に陥っても、届ける音楽や言葉はポジティブでありたいという宣言でしょう。
泣けてきますね。