どんなヒロシ?
この楽曲は1983年にリリースされたサザンオールスターズの6枚目のレコードアルバム『綺麗』に収録されています。
1989年にはCD盤もリリースされ、その後も再リリースが続き計三回再発売されるヒットアルバムとなりました。
その中に収録された「そんなヒロシに騙されて」はサザンオールスターズのキーボード兼コーラス担当の原由子がボーカルを務めています。
発売後1か月で二組のアーティストがカバーしました
アルバム発売の1か月後には「高田みづえ」「ジューシィ・フルーツ」という2組のアーティストがカバーシングルを同時リリースしました。
1983年末の紅白歌合戦では高田みづえが「そんなヒロシに騙されて」で出場を果たしていますし、かたやジューシー・フルーツも当時のヒット番組『オレたちひょうきん族』で同曲を披露していることから、この曲がこの時代にとても愛されていたことが伝わってきますね。
ヒロシって…誰?
曲を聴く前に一番気になること、それは『ヒロシ』が誰かということですよね。
この曲で歌われる『ヒロシ』はサザンオールスターズのドラム松田弘の名前から拝借したそうですが、この曲とは直接関係はないそうです。
この曲はライブで披露されることも多いのですが、そのたびに関係ないはずの松田が気まずそうな顔をし、メンバーや観客がそんな松田をいじるというかわいい掛け合いも起こっています。
こんなヒロシに騙されました
全く関係のないはずの松田弘が気まずくなる曲、一体どんな楽曲なのでしょうか。
横須賀のゲス男、ヒロシ
出会いはディスコティーク。
アラサーの筆者ですら「え?」となったディスコティークとは踊りとお酒を楽しむいわゆる「ディスコ」。
夜通し踊る彼女に近づいた踊りの上手なヒロシと恋に落ちたのに、違う夜には違う女の子を口説いていた。
そう、ヒロシは軽い男。
一夜限りの関係を繰り返す男だったのです。
そら松田弘も気まずいわな、と共感してしまいました。
そんな軽い男に騙されたくらいで泣いちゃダメだ、と渚に立たずむ彼女。
それでもそんなヒロシの事ばかりを考え、騙されていることがわかっていても彼の口づけを待ってしまうのです。
弘か、博か、宏か、それともヒトシか…
スマホもLINEもない時代。
連絡先を交換するとなると自宅の電話番号をメモで交換していたでしょう。
こんなヒロシが自宅の連絡先を教えるはずがありません。
ひょっとすると彼女は「ヒロシ」がどんな漢字なのかすら知らなかったのではないでしょうか。
だから「弘」でも「博」でも「宏」でもない「ヒロシ」に恋をした。
ひょとしたら「ヒロシ」という名前すら嘘かもしれません。
だけど彼女が知っているのは踊りと嘘が上手な「ヒロシ」。
ただそれだけしか知らないのに恋に落ちてしまったのです。
「ジゴロ」という言葉はもう時代遅れかもしれませんが。
だけどそんな言葉の似合う時代の、許せないけど忘れられない「ヒロシ」との恋模様だったのです。
80年代感たっぷりの1曲
ディスコティークやジュークボックス、サイケな夜…など、80年代を彷彿とさせる単語が出てくるこの楽曲。
グループサウンズ調の楽曲で時代遅れ感があるのかと思いきや、キラキラした80年代がうらやましくなるような仕上がりはさすが桑田佳祐。
この時代を体感していない筆者でも空気感やディスコでの一幕が目に浮かぶようです。
YOUTUBEには高田みづえver.しか見つからなかったのですが、ぜひ一度この曲を聴いてみてください。
一気に時代を遡る感覚が味わえるはずですよ。
ちなみに原由子ver.のほうが楽器が目立っていたり、コーラスとのハモリがはっきりしていたりとよりサイケな仕上がりになっています。
そんなヒロシが好きな人へ
サザンオールスターズと言えば「愛しのエリー」や「真夏の果実」「TSUNAMI」のような王道ラブソングが有名ですが、この曲のようなシニカルな仕上がりのものもたくさんあります。
桑田佳祐のおちゃめさ全開なこの曲が好きならば聴いてほしい、そして原由子の歌声が好きな人に聴いてほしい楽曲をいくつかご紹介します。
YOUTUBEには上がっていませんでしたので、それぞれ収録アルバムを記載しておきます。