前川清さんの曲をセルフカバーした、身分違いの恋の歌

前川清さんのために作詞された曲

中島みゆきさんが歌う「涙-Made in tears-」は、もともとは前川清さんの曲です。

1988年2月に発売された7作目のシングルで、中島みゆきさんが作詞作曲しました。

その曲を中島みゆきさんがセルフカバー1988年10月に発売しています。

身分違いの恋を歌った曲

「涙-Made in tears-」は、身分違いの恋を歌った曲です。

身分違いと聞くと、とても昔の話のように聞こえるかもしれません。

しかしここでの身分違いとは、住む世界が違いすぎる恋ということ。

これまで過ごしてきた環境や経験が全く違えば、物事に対する考え方にも違いが出やすいでしょう。

ただ会話をするだけであれば、何も差し支えがないかもしれません。

けれど、付き合うとなると、本人自身が抱く劣等感のようなものが少なからずあるのでしょう。

どうせ自分なんて相手にされるわけがない。

けれど手に入れたい恋であり、背伸びをしてやっと手に入った恋なのです。

しかし、結局終わってしまい、残ったのは後悔ややるせない気持ちでしょう。

まだ元恋人を愛していて、おさまりが効かない恋心。

けれど、この結果は仕方がない、わかっていたことだと自分を納得させようとしているのでしょう。

そんな切なさが滲みあふれる曲が「涙-Made in tears-」なのです。

けばい茶店と自分自身を重ねる

深夜に茶店を眺める主人公

忘れようと心を決めたのは
ひと足の途絶えだした 公園通り
メッキだらけの けばい茶店の隅っこには
雨宿りの女のための席ね

出典: 涙-Made in tears-/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき

ここでの歌詞で主人公が忘れようとしているのは、終わってしまった恋のことです。

近くには、昼間は子どもやその親たちでにぎわってる公園があるのでしょう。

そしてその公園のすぐそばを通る道で、人足が途絶えがちな時間帯。

つまり夜も深まった時間帯でしょう。

深夜0時前後かもしれません。

そのような時間でも営業している茶店があるようです。

主人公はそのお店の中にいるのではなく、外から眺めているのでしょう。

まるで、自分のようだ…と。

メッキだらけのけばい茶店とは

メッキとは、表面にかぶせてあるもののことです。

たとえば「金メッキ」とは、もともとは安い金属に上から金をかぶせることで高価なものに見せたもの

つまり、中身はとても安いのに、見栄えだけはあたかも高いように見せかけていることを意味します。

さらに「けばい茶店」とは、見た目が派手なお店のことでしょう。

まるで西洋のどこかのお城に置いてありそうなものをイメージしたような猫足のテーブルです。

見た目ばかりが派手で、座り心地はあまりよいとはいえないような椅子でしょう。

外観ももしかすると、きらびやかな飾りつけがメッキで施されているかもしれません。

そのようなお店を「けばい茶店」と表現しているのでしょう。

けばい茶店に込められた思い、自虐的意味

主人公があえてこのような表現を歌詞に入れている理由は何でしょうか?

見た目ばかりを気にして設置したはよいものの、周りからとても浮いた存在になった茶店。

そんな茶店が、主人公はまるで自分のようだと思っているでしょう。

自分もこの茶店のように見た目だけ取り繕って生きてきたのです。

頑張って背伸びをして、できる女を演出してきたけれど…。

一度メッキがはがれてしまえば、一気に安っぽい女になってしまうのです。

そうなれば好きだった男にさえ愛想を尽かされてしまって当然…。

そのように自虐しているのでしょう。

本当の自分は、安っぽい女なのです。

だけどそれを隠すために高い女に見せかけているだけだったのでしょう。

高価な洋服に身を包み、バッグも高価なものを選んでいたはずです。

身に着けるアクセサリーも高価なもので、靴も車も豪華だったでしょう。

しかしいくら見た目を華やかにしても、本質的な部分は何も変わらないのです。

周囲とも馴染まず、浮いてしまいがちだったのでしょう。

そんな自分をけばい茶店と重ねて、自嘲しているのです。

好きな人を想う気持ち

元恋人を思い出し涙を流す