ああ せめて一度だけでも
その愛しい腕の中で
”このまま 傍に居て 夜が明けるまで”と
泣けたなら

出典: 片想い/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾

浜田省吾の歌声が切ないメロディーとともに盛り上がり、辛い想いが溢れ出すところです。

♪このまま~という一節だけでノックアウトされてしまった人がたくさんいるのではないでしょうか。

たったこれだけで聴く人を虜にする力が彼のバラードにはあるのです。

ここで主人公が女性だということが分かります。

彼女は片想いなので一度も彼の腕に抱かれたことはないようです。

夜明けまで一緒にいるだけでいい、という純真な願いに若い頃の自分を重ねる人もいるかもしれません。

泣くことで気持ちがすっきりするのなら救われるのですが、彼女の想いはもっと深く悲しいのです。

ひとりで過ごす眠れない夜はどんなに寂しいことでしょう。

恋は叶わず泣くこともできない……。

もっとストレートな愛情表現もありますが、誰にも言えずに胸の中でどんどん大きくなる愛情もあるでしょう。

切ない想いを絞り出すような浜田省吾の声が胸を打つサビのパートです。

片想いに傷ついた心

風に例えた寂しさ

浜田省吾【片想い】歌詞を徹底解説!叶わない恋…純真すぎる想いが切ない…あなたの魂に響く至極のバラードの画像

ああ 肩寄せ歩く恋人達
すれ違う帰り道
寂しさ 風のように いやされぬ心を
もて遊ぶ

出典: 片想い/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾

人と比べてしまうと寂しさや悲しさは増すばかりでしょう。

自分の周りの誰もが幸せに見えてしまう気持ちはよく分かります。

向こうから歩いてくるふたりを見ればあんな恋がしたかったと思い、すれ違ったあとはもっと辛くなる。

ひとりで家へと帰るあいだも彼への想いは膨らむばかりです。

桜の季節であれば舞い散る花びらは儚く感じ、秋の落ち葉はもちろん寂しく感じるでしょう。

ルミネーションが街を彩るクリスマスのシーズンであればもっと寂しくなるはずです。

ふたりで歩けば心地よいはずの風が吹いているとすれば彼女にとってはやはり辛く感じるでしょうね。

寂しさを風に例えた表現が優しいなと思いますが、風にもて遊ばれるのは傷ついた心です。

誰もいない部屋にひとりでいるのも辛いけれど、外で目にするものや体に感じるものすべてが辛かったら……。

片想いは自分の気持ちを狭くて暗い世界に閉じ込めてしまうのかもしれません。

心に響く名曲

低く優しい歌声が胸に沁みるエンディング

浜田省吾【片想い】歌詞を徹底解説!叶わない恋…純真すぎる想いが切ない…あなたの魂に響く至極のバラードの画像

あの人の微笑 やさしさだけだと
知っていたのに それだけでいいはずなのに
愛を求めた 片想い
愛を求めた 片想い

出典: 片想い/作詞:浜田省吾 作曲:浜田省吾

優しい微笑が自分に向けた愛情ではなかったとしたら、それも辛いものですね。

明るい笑顔ではなくてほほえみ。

優しい人だからこそ好きになってしまったのでしょう。

自分の気持ちが分かっていて優しくしてくれたのであればもっと悲しいだろうと思います。

好きなのに辛い、愛しているのに悲しいのが片想い

叶わないと分かっていても愛してもらいたい気持ちが痛いほど伝わってきます。

最後に繰り返す歌詞は彼女の辛さや純真すぎる想いをそっと癒やすようです。

繰り返すことで低く優しい浜田省吾の歌声がさらに胸に沁みる切ないエンディングです

失恋や片想いで傷ついている人にとっては、彼が慰めてくれているように感じるのではないでしょうか。

多くの人が自分の経験や想いと重ね合わせることで良い曲が心に響く名曲になることもあると思います。

たぶん誰もが一度は片想いを経験したことがあるでしょう。

そのときの辛く切ない気持ちが蘇る曲が浜田省吾の「片想い」です。

他にもあるバラードの名曲

浜田省吾【片想い】歌詞を徹底解説!叶わない恋…純真すぎる想いが切ない…あなたの魂に響く至極のバラードの画像

叶わぬ恋を歌った「片想い」の他にも浜田省吾のバラードにはいい曲がたくさんあります。

PAIN」では愛する人を失った悲しみを切々と歌いました。

愛という名のもとに」は失くした愛を取り戻そうとする男の切ない願いを歌った曲。

もうひとつの土曜日」は優しい愛情を静かに歌った名曲です。

どの曲も聴く人の心を打つのは、あの声とメロディーはもちろんその歌詞も胸に沁みるからだと思います。

バラードはまさに”ソングライター”浜田省吾の真骨頂なのです。

彼はあまりメディアに出ない人なのですが、以前NHKのBSでドキュメンタリーが放送されたことがあります。

気さくで親しみやすい人柄が画面から伝わってきて、ますます彼のことが好きになってしまいました。

彼のことをよく知らなくても、たくさんある名曲のどれかを一度でも耳にすればその良さが分かるでしょう。

いつまでも青春が歩いているような彼の音楽を、ひとりでも多くの方に聴いてもらえたらと願っています。

浜田省吾の傑作『J.BOY』

80年代を代表する2枚組の大作

浜田省吾【片想い】歌詞を徹底解説!叶わない恋…純真すぎる想いが切ない…あなたの魂に響く至極のバラードの画像

最後に浜田省吾の『J.BOY』の記事をご紹介しておきましょう。

このアルバムは彼の代表作で、80年代の日本のロックやポップスを代表する名盤でもあるのです。

2枚組の大ボリュームに詰め込まれた彼の想いは多くの人を惹きつけました。

熱量高く収録曲について解説されていますので、是非読んでみてくださいね。

浜田省吾さんの「J.BOY」を、当時の若者として聴くことができなかったことが悔しくてなりません。しかし現代にも通じるその普遍のメッセージは、現代版「J.BOY」たちが守り通すべきものでもあります。今回は名盤の中でもずば抜けた良作をご覧いただきましょう。