はじめに
オーストラリア発のロックバンド『AC/DC』の6枚目のアルバムに収録された本曲。
急死したボーカルのボン・スコットを追悼する内容になっています。
本曲はハードロックというジャンルで世界を席巻した彼らの代表的な作品。
死の呪いから生還した主人公
首吊りの縄にぶら下がっていた
Back in black, I hit the sack
I've been to long, I'm glad to be back
Yes I'm let loose from the noose
That's kept me hangin' about
出典: Back In Black/作詞:JOHNSON BRIAN,YOUNG ANGUS MCKINNON,YOUNG MALCOLM MITCHELL 作曲:JOHNSON BRIAN,YOUNG ANGUS MCKINNON,YOUNG MALCOLM MITCHELL
【和訳】
ようやく暗闇から戻ってきて
俺は眠りにつく
すごく長いこと向こうにいたように思うが
戻ってこられてよかった
そうだ
首吊りの縄から逃れてきたんだ
あれは俺をぶら下げていた
【解説】
ボーカリストの突然の死。
その苦境から立ち直るために努力しつづけたメンバーの姿が表現されています。
“noose”とは「縄」などの意味で、ここでは「死」と関連することから「首吊り」を連想させます。
ボン・スコットの後を追うということはないまでも、それに準ずるような考えを抱いたのでしょう。
一時はバンドの解散さえ現実的なものだったそう。
しかしスコットランド出身のブライアン・ジョンソンが加入しグループは再始動しました。
死の呪い
I've been looking at the sky
'Cause it's gettin' me high
Forget the hearse 'cause I never die
I got nine lives
Cat's eyes
Abusin' every one of them and running wild
出典: Back In Black/作詞:JOHNSON BRIAN,YOUNG ANGUS MCKINNON,YOUNG MALCOLM MITCHELL 作曲:JOHNSON BRIAN,YOUNG ANGUS MCKINNON,YOUNG MALCOLM MITCHELL
【和訳】
空を見上げていたら
気分がスカッとしてきた
霊柩車のことは忘れるんだ
なぜなら俺は死なないからさ
俺は9つの命を持ってる
猫の目がそれらをすべて悪用して
野生へと向かわせるんだ
【解説】
長い間、死という呪いにかかっていたようです。
普段は身近なものでないからこそ、一度囚われるとなかなか抜け出せないのでしょう。
死は動物にとって最も恐怖すべきもの。
それは動物の一種である人間も同じことです。
近親者の死、それ自体も耐えられないほどの重いものですが、死という概念自体も同様なのではないでしょうか。
主人公は死という概念に囚われていたように思います。
死とは何か?
死をどうやったら克服できるのか?
そのような自問自答をひたすら繰り返していたのでしょう。
悩むなら晴れた昼間にしよう
タイトルの“Black”は、また「夜」をも連想させます。
「死」と「夜」どちらも意味しているように感じます。
夜というのは悩み出すと答えの出ないまま長い時を過ごしてしまうもの。
ポジティブな気持ちになることがなく、暗いイメージのまま堂々巡りしてしまうのです。
だから1行目の歌詞なのでしょう。
夜が明けて、晴れ渡った空を見上げていたらそれまでの悩みが不思議とどこかへ吹き飛んでしまいました。
こういった経験は人間だれしもあるのではないでしょうか。
考え事をするなら昼間の明るいうちにするべきです。
人間にとって太陽の陽がいかに重要であるかを再確認させられる詩だと思います。
“hearse”は少し難しい単語ですが意味は「霊柩車」。
明るい気持ちに戻った主人公は、自分のうちから湧き出てくる生命の力強さを感じています。
そうそう簡単には死なないのが人間というもの。
夜の間はあれだけ不安な気持ちだったのに、陽の下へ出てみれば自分がいかにピンピンしていることか。
俺には霊柩車なんていらない、という尊大な気持ちにさえなってしまいます。
猫に関することわざがベース
後半の3行について。
英語圏のことわざにこんなものがあります。
「猫には9個の命がある」。
ヨーロッパ、もしくはさかのぼると古代エジプトでは「9」は最も神聖な数字だったよう。
そして猫は魔女のように強い魔力をもった生物として考えられていたようです。
これらのことから、上のようなことわざが英語圏で使われ始めました。
また、古代エジプトにおける九柱神のなかには猫の姿をした神様もいるようです。
魔女の生まれ変われる回数も9回だとのことで、このあたりはいろいろな相関がありそうですね。
このことから、この曲においては自分がいかに不死身であるかを主張したいのだと思われます。
何度殺されようとも俺は生き返ってやるぞ、という思いですね。