筆者は広島弁と方言として近い岡山出身なので、この楽曲の広島弁にはかなりシンパシーを感じます。

よく広島や岡山の人が使う日常的な方言に“アンタ”というのがありますが、これは標準語を使うエリアの人から“怖い”と言われたりします。

広島弁で使う“アンタ”は標準語にすると“あなた”ですが、実際の意味合い的には“あなた”よりももっと近しい感じで使います。

ですから、上の歌詞ブロックで登場する“アンタ”にも、実際には親しみが込められていて、近しい間柄で交わされている言葉というのがわかります。

きっとこの楽曲の主人公は、自分の大切な人へ心の中で“本当に言いたかったこと”を語りかけているのでしょうね。

広島人は“人事を尽くして天命を待てる強さ”がある

何かはワカラン 足りんものが あったけん
生きてみたんも 許される事じゃろう
自分の明日さえ 目に写りもせんけれど
おせっかいな奴やと 笑わんといてくれ
理屈で愛など 手にできるもんならば
この身をかけても すべてを捨てても 幸福になってやる
人が泣くんヨネー 人が泣くんヨネー
選ぶも選ばれんも 風に任したんヨー
人がおるんヨネー 人がそこにおるんヨネー

出典: 唇をかみしめて/作詞:吉田拓郎 作曲:吉田拓郎

岡山出身の筆者が広島で生まれ育った人に感じるものに“広島の人は芯から強い”という感覚があります。

広島は中国地方屈指の都市なのですが、多くの日本人が知っている通り、太平洋戦争末期に原爆が投下され、一時は都市が壊滅してしまった場所でもあります。

そこから人々の弛まぬ努力でよみがえった街が広島なので、古くから広島に暮らす人々は本当に芯から強く、たくましい心を持っています

それは自分たちの手に負えない大きな出来事をも乗り越えたからこそ培われた力で、心もとてもしなやかです。

そうした広島人のもつしなやかさや強さが、2つ目の歌詞ブロックには非常によく表れているように感じます。

人事を尽くして天命を待つという度量の広さを、この歌詞では丁寧に描かれているように思えます。

大事な人を送り出せる心

心が寒すぎて 旅にも出れなんだ
アンタは行きんさい 遠くへ行きんさい
何もなかったんじゃけん
人が呼びよるネー 人が呼びよるネー
行くんもとどまるも それぞれの道なんヨ
人が生きとるネー 人がそこで生きとるネー
人がおるんヨネー 人がそこにおるんヨネー

出典: 唇をかみしめて/作詞:吉田拓郎 作曲:吉田拓郎

その場を離れることができなかった人には、その人なりの事情があって、飛び出せなかったことは誰かが非難できるものではありません。

しかし月日が経つと、飛び出せなかった人は“これからその場を飛び立とうとする人”に嫉妬して、時には行く手を妨害してしまうこともあります。

ただ、この歌詞に登場する主人公は、飛び立つ人の邪魔をすることなく、遠くへ行って成長しなさいと促してくれます。

どれも自分の選ぶ道なのだから迷わず行きたい道に進みなさい……こんな風に背中を押してくれる人生の先輩がいれば、若い人は迷わず自分の道を進める気がしますね。

自分も年を重ねた時に、旅立つ若い人の背中をきちんと見届けられるような、そんな大人になりたいと思わせてくれます。

おわりに

2000年に肺がんを乗り越え、その後も精力的な音楽活動を続けている吉田拓郎氏。

人間味にあふれつつも鋭い視点で人の心の深部に響く独特の世界観は、今も老若男女問わずファンを増やしています。

これからもどうか体を大切に、長く素晴らしい楽曲を紡いでいってほしいですね♪

唇をかみしめて/吉田拓郎の独特な広島弁に癒される・・・。歌詞の意味を徹底解釈!【YouTube動画】の画像

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