椎名林檎「長く短い祭」ってどんな曲?

「長く短い祭」はコカコーラのCM曲としても起用され、2015年紅白歌合戦でも圧巻のパフォーマンスで話題になった曲です。

一緒に歌う男性は東京事変でも一緒に活動していた浮雲で、二人のハモリも魅力的ですね。

さて、紅白でのクールジャパンを象徴するかのようなパフォーマンスの印象が強い方は驚かれるかと思いますが、実はこの曲、その美しくもショッキングなMVでも注目された曲なんです。

ショッキングなMVの世界観

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薄暗い浴室でバスタブから溢れ出してもなお注がれ続ける水。

これだけだと何の映像かわかりませんが、ストーリーが進んでいくと、このMVのメインキャラクターであるショートカットの女性が殺した男性が入っているバスタブということがわかります。

公園で踊る女性はとても美しくも狂気的。

最終的にはその公園で逮捕されるというストーリーのMVです。

あまりにもショッキングな内容と、女性を演じる篠原さやの途中のクラブでのダンスシーンやタバコを吸いながら歩く姿、パトカーのサイレンに赤く照らされる憂いを帯びた表情の美しさで一度見たら忘れられないMVとなっています。

さて、そんなMVから不倫の末に女性が男性を殺してしまう歌と解釈する人もいるようですが、今回は純粋に歌詞からどういうことを歌っているのか考えてみたいと思います。

椎名林檎「長く短い祭」の歌詞

椎名林檎シングル「長く短い祭/(神様、仏様)」歌詞詳細♪MVの篠原さやが気になる!の画像

まず、この曲を言葉通りの意味で捉えるなら、夏祭りの夜、一夜限りの出会いを楽しむ男女の歌で、その走馬灯のようにあっという間で、打ち上げ花火のように一瞬の恋の美しさ、鮮やかさ、そして、命を燃やすような激しさを歌っていると言えるでしょう。

象徴的なのは歌い出しの歌詞です。

忘るまじ我らの夏を

天上天下繋ぐ花火哉
万代と刹那の出会ひ
忘るまじ我らの夏を

出典: 長く短い祭/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

歌い出しの歌詞は「花火」とあるので季節は夏ですね。

地上から打ち上がって天空で花開く花火を、天上の世界と下界を繋いでいる、いわば、永遠と一瞬の出会いだと歌っています。

同時に花火のように一瞬にして華々しく燃え上がって消えてしまう一夏の激しくも儚い恋も連想させる歌詞が美しいですね。

花火が開く美しい瞬間のように一瞬を永遠に感じさせるような美しさを持った夏を忘れない

夏の景色をここまで鮮やかに歌った曲も珍しいのではないでしょうか。

椎名林檎シングル「長く短い祭/(神様、仏様)」歌詞詳細♪MVの篠原さやが気になる!の画像

人生は「長く短い祭」

人生なんて飽く気ないね
まして若さはあつちう間
今宵全員が魁、一枚目よ

出典: 長く短い祭/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

では、曲名の「長く短い祭」は何を表しているのでしょうか。

ここからが先ほど紹介した表向きのテーマに対して、裏テーマとなる部分です。

この歌詞に出てくる魁(さきがけ)とは、他の人々の先を駆けることです。

自分の人生では、誰も自分の先を走ってはくれず、自分こそ自分の人生の魁であり、主人公だと言うこと。

そして、呆気ないほど短い人の生涯だから、まして若い頃なんてあっという間に過ぎてしまうと言うこの歌詞も合わせて、一晩の祭のようにあっという間の人生を楽しめるかは主役の自分次第と言うメッセージが読み取れます。

人生は長生きする人は100年生きることもあるこのご時世、人生がとてつもなく長い時間である一方、振り返るとあっという間という人が多いのではないでしょうか。

つまり、「長く短い祭」とは人生のことなのです。

また、終わりの時となって自分の人生を振り返ったときに思い出すような美しく鮮やかな記憶は、例え実際には、夏祭の一晩であっても永遠と呼べるでしょう。

このように椎名林檎の曲には一瞬の輝きの美しさを歌った刹那的な印象を持つ曲が多く存在します。

「美味しそうな今美味しそうな旬を戴く」のが人生

椎名林檎シングル「長く短い祭/(神様、仏様)」歌詞詳細♪MVの篠原さやが気になる!の画像

美味しそうな今美味しそうな旬を美味しく戴く
それが人生よ
つまり愛すべき今愛すべきひとと愛し合うまでよ邪魔しないで

出典: 長く短い祭/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

これは、椎名林檎の「静かなる逆襲」に出てくる歌詞の一節です。

愛しい人と愛し合う、今という時間こそが人生の全てだという歌詞ですね。

この歌詞では「旬」、「今」と表現していますが、これこそが「長く短い祭」でも歌われる、「長く短い」、「万代」(永遠)と呼べるほど尊い一瞬(「刹那」)なのです。

「長く短い祭」でも、あえて男女のデュエットで「我らの夏」と歌ったのは、実際には夏祭りの一晩であっても愛する人を見つけ愛し合ったその時間こそが人生の全てというメッセージも含まれていると言えるでしょう。

さて、そんな愛や人生を歌ったこの曲、MVでは愛するあまりでしょうか、男性を手にかけてしまう女性が描かれていますが、その女性を印象的に演じて楽曲に花を添えた篠原さやとは一体何者なのでしょう。