別れの歌の代名詞「さよなら」
オフコースの快進撃が始まる
1979年12月1日発表、オフコースの通算17作目のシングル「さよなら」。
小田和正が「売れることを意識した」という言葉を残しています。
そして実際にオリコン・シングル・チャートで最高2位。
また1980年度年間シングル・チャートで9位を獲得しオフコースを「売れるバンド」へと変貌させます。
「さよなら」発表後の数年間、ニューミュージック界を牽引するトップバンドはオフコースでした。
また「さよなら」はその人気だけでなく切ない歌詞とボーカルを含むサウンドに定評があります。
本当に水準がずば抜けて高い楽曲なのです。
男女の別れを歌にした曲はたくさんありますが最初に頭に浮かぶのはこの歌という人も多いでしょう。
それほどまでに日本のお別れソングの代名詞的存在になったのです。
オフコースの歴史は音楽的には素晴らしいものを遺していたのですが売れるまでは苦難が続きました。
ようやくオフコースに世間の認知が進んだ記念碑的作品「さよなら」。
この曲の歌詞を紐解いて男女の別れの姿などを浮き彫りにします。
あまりにも有名な歌い出し
相反する想い
もう 終わりだね 君が小さく見える
僕は思わず君を 抱きしめたくなる
出典: さよなら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
胸が締め付けられるような有名すぎる歌い出しです。
このラインが独り歩きしてしまいテレビのバラエティ番組でこの部分だけがSEとして使われたりします。
「僕」の中で「君」の存在が小さくなったのでしょうか。
それにしてはまだ抱きしめたくなる感情も同居しているという不思議なラインです。
とにかく小田和正の声が美しすぎて当時の女性たちは虜(とりこ)にされました。
当時の女性たちだけでなく今聴いていただければ若い人たちにもこの声の魅力は色褪せないで感じられるはず。
オフコースには再結成を願う声が大きいです。
しかし小田和正はソロ・キャリアでも充分な業績を積んでいるので再結成の気配は一切ないのが悲しいこと。
最初に結論をぶつけるこの歌詞が「売れる」ために必要な要素であったのかもしれません。
あまりにも印象的なラインです。
泣かずにはいられない別れ
別れの理由が分からない仕掛け
「私は泣かないから このままひとりにして」
君のほほを涙が 流れては落ちる
出典: さよなら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
小田和正固有の高い声は女性のセリフを自然に歌いこなすことができます。
泣くまいと強がる「君」はしかし結局涙に濡れてしまうのです。
何せ別れの理由が明確ではありません。
お互いが嫌になって別れるというよりは関係が疲弊してしまい別れざる得なくなったという感じです。
仲が良すぎるから別れに至るということも恋人の間では起こりうること。
恋人なのか友人なのか家族のようなものなのか線引きができなくなるくらい密接になってしまった。
その行く末に別れがあるという描き方をしています。
男女の仲は本当に難しいものです。
だからといって恋愛に消極的になるのはあまりに勿体ないので気をつけたいもの。
男性の草食化などという言葉や概念は考えられもしない時代でした。
含蓄のある歌詞
言葉の多義性
「僕らは自由だね」いつかそう話したね
まるで今日のことなんて 思いもしないで
出典: さよなら/作詞:小田和正 作曲:小田和正
縛られることなどないよねという会話が今本当のことになってしまう一瞬にいます。
お互いの成長を縛り付けるような関係になるくらいならば別れてしまったほうが「僕ら」らしい。
それでも今日という別れの日が来るなんて思いもしなかったふたりの姿が浮き彫りにされます。
「自由=Free=独身、恋人がいない状態」
ここでの小田和正の歌詞は一言一言が含蓄のある言葉になっていて様々な解釈を可能にします。
リスナーによる解釈の自由を許す最大公約数の言葉で多くの人の支持を得るようになるのです。