優しい風に乗って聞こえてきたのは「歌」でした。

誰が歌っているのでしょう。

優しい風が吹くたびに、それは聴こえます。

アイのうたが 聴こえたんだ
それは 小さなアイが
微笑むように 寄り添うような
優しい音がした

出典: アイのうた/作詞:山本加津彦 作曲:山本加津彦

聴こえてきた歌はとても穏やかで暖かいものでした。

日々の中の、さりげない時間。

一緒に歩いたり、ご飯を食べたり、時には喧嘩もします。

そんな些細なことです。

その1つ1つのなかで育まれる小さなアイ

それが「うた」の材料でした。

4行目のフレーズの通り、本当の「歌」ではありません。

小さなアイが立てる音です。

だからこそ「歌」ではなく「うた」と表現しているのでしょう。

すぐそばにいる

時は流れ 夢は流れ
いろんなかたち 変わっても
あなたがただ ここにいれば それだけでいい

出典: アイのうた/作詞:山本加津彦 作曲:山本加津彦

人も物も、同じ場所、同じ時に留まることはできません。

この世の必然です。

たとえそうであっても、3行目のフレーズにある通り贅沢は言いません。

このフレーズは、ただ無償のアイを歌っています。

取り返しのつかない必然

「時間」は残酷

「時間」は常に流れ続けています。

どんな存在であれその流れを止めることはできません。

以下の歌詞はそんな「時間」の残酷さを歌っています。

あなたの呼ぶ声に 気づく時には
失くした物に ただ手を伸ばすだけ
時はどうして 終わりを告げるの?
描いた今は 明日の空に続いてるのに

出典: アイのうた/作詞:山本加津彦 作曲:山本加津彦

時間の流れの中で失ってしまったものは、二度と取り戻すことはできません。

しかし、人はそれを求めます。

大切な人であれば尚更です。

思い出は今も鮮やかなのに、もう二度と戻らない。

残酷なことに、時の流れは一方通行。

どれだけ大切な人も物もあっという間に流されて行くのです。

その度に人は、2行目のフレーズにあるような悲しい努力をします。

大切なあなたはもういないのに...

物悲しいですがこれが「時間」というものです。

こうして2番のサビへと続きます。

また聴こえてきたのは...

1つ1つが大切な

「時間」の残酷さに気付いた時。

また優しい風が吹きます。

アイのうたが 聴こえたんだ
それは小さなアイが
一つ一つ 瞬くような
愛しい音がした

出典: アイのうた/作詞:山本加津彦 作曲:山本加津彦

聴こえてきたのは「アイのうた」でした。

ですが前述のアイの生活音ではないようです。

時間の残酷さを知ったことで、今までとは違う音になりました。

3・4行目にあるようにたくさんの、本当にたくさんの音を立てています。

何気ない日々全てが、2人にとってはとても大切な時間になりました。

今までなんとなく過ごしてきた時間、これから過ごす時間全てです。 

留まれない時の流れの中で