衝撃の1stアルバムからわずか1年のスパンで発表されたミニアルバムが「TEMPEST」。
先行シングル「SSWB」でその片鱗は見せていましたが予想をはるかに超える問題作でした。
山下達郎をコーネリアスがリミックスしたかのような「SSWB」。
ダウンテンポに切ない歌声を乗せた「Shadows」。
エスニックなサンプル音とアフロビートの融合した「Tempest」はついに10分越えの大作に。
その世界観はフィッシュマンズの「ナイトクルージング」の進化系ともいえるでしょう。
まさにミニマル・メロウの極致に達した記念碑的作品です。
「Shadows」のMVは「SSWB」同様が石田悠介さんが監督。
90年代の青山真治作品を彷彿とさせる世界観がD.A.N.の音楽性を見事に表現しています。
なお、「Tempest」には「SSWB」のAOKI Takamasaのリミックスも収録。
ビールなしではスーパーシャイな彼ら。
依頼するのを躊躇している間にAOKIさんが勝手に音源で遊んでいたという可愛い逸話も♪
そして!やっと化粧業界が彼らの存在に気付いてくれたのです。
資生堂が制作した”花椿×D.A.N.「Tempest」ショートフィルム”も是非ご覧ください。
3rdシングル『Chance/Replica』
呆れるくらいふざけた
期待はずれのコメディアン
ラジオから流れるくだり
不意に笑えた
呆れるくらい何もない
ただそこに流れるBGM
繰り返す夜の狭間で
不意にさみしい
Cause I don't thinking about that
このまま一人
宇宙の海に浮かべたら
ブラックホール
吸い込まれるのも Easy Easy
宇宙の海に浮かべたら
出典: Replica/作詞:櫻木大吾 作曲:櫻木大吾
「Tempest」で聴かせたディープハウス路線の更なる進化系。
続く2ndアルバムへの期待を膨らませてくれる先行で配信されたシングルです。
サウンドに耳を奪われる前に説得力を増した歌詞にも注目してみましょう。
D.A.N.は「呆れるくらい何もない」孤独な者たちのBGM。
彼らの存在が多くの若者の共感を得る理由が分かるような素敵な1節です。
彼らのサウンドの骨格に流れていたスティールパンをばっさり切り捨てています。
その分ギターのアルペジオとシンセが多用されサウンドの持つ官能性を増した「Chance」。
ダウンテンポなビートがトリップホップへの回帰を思わせるR&Bソングの「Replica」。
D.A.N.が更なる高みへ移行する過程を記録した美しい作品なのです。
最新アルバム『Sonatine』
2018年現在D.A.N.の最新作であり最高傑作。
先行シングルで聴かせてくれた新しい路線はパズルのピースに過ぎなかったのです。
ディープハウス、ファンキーなインスト曲、R&B路線と更に広がった世界観。
それが1枚のアルバムに見事に調和されているのです。
アルバムの白眉が3曲目の「Sundance」です。
3分間強の長い導入部。
ディープハウスのインスト曲かと思わせた後に入る美しい歌声にノックアウト。
「Sundance」はMVも1つのアート作品として成立しています。
監督は雑誌「ブルータス」や星野源の「ドラえもん」のイラストでお馴染みのオオクボリュウさん。
7分間のポップアート作品だと思って鑑賞しましょう。