1日の始まりの描写から
あの日のままで
そんなキミのことを思い出す朝は
夢を見ない いつも通り
新しい街 春風の匂い お気に入りの曲
それでも声が聞こえる
出典: 宙(SORA)/作詞:田鹿ゆういち 作曲:田鹿ゆういち,Octobar
歌の主人公の現状を描く始まりの歌詞です。
目が覚めたと同時に脳裏に浮かんだのは「キミ」のこと。
本当は君に「夢」に出てきてほしかったのでしょう。
会えないままに目覚めた歌の主人公は、もう一度眠りたかったのかもしれません。
そうすれば君に会えたかもしれない。
そんなこととは関係なく街は動き出し、季節も変わっています。
「春風」を香りで感じる繊細さを持ち合わせているようですね。
気が付けば流れるのは君が好きだった曲、そして「声」も一緒に届いたのでしょう。
独りで迎えた朝に届いた君の声、それは心に残っている声です。
あの朝心に刻まれた声は消えることはありません。
交差点で思い出したこと
信号待ち 前を通り過ぎる車
あの頃のキミに重なって見える
ねえ、何を捧げれば時は戻るの?
出典: 宙(SORA)/作詞:田鹿ゆういち 作曲:田鹿ゆういち,Octobar
目の前を走り去る車を見ていると「キミ」を思い出す。
それほどまでに君は行動的な性格だったのでしょうか。
目的があってそれに向かって走る車は君そのものなのでしょう。
そんなことをぼんやりと考えながら「信号」が変わるのを待つ歌の主人公。
チャンスは来るまで待つタイプなのかもしれません。
2人の性格が正反対だったことを想像させる歌詞ですね。
だから歌の主人公は交差点に立ったまま、過去を振り返ってしまうのでしょう。
その振り向き方が切なさを通り越した「捧げる」という行為で表現されています。
「尽くす」「惜しみなく」とも違う感触がある表現です。
好きの気持ちの中に「リスペクト」も必要だったのでしょうか。
歌の主人公は「何」かが足りなかったことはわかっているのです。
その時はわからなかったばっかりに、君は離れていった。
心の中で君を思い続けていることに変わりはないのに、一緒に過ごした日々は取り戻せません。
果てしない向こうへ
言葉が宙(ちゅう)に舞って壊れたとしても
この想いは弧を描いて
キミに届くはずキミに届いて
今度はその手を離さないよ
出典: 宙(SORA)/作詞:田鹿ゆういち 作曲:田鹿ゆういち,Octobar
ここで「宙」に浮かんだのは前に出て来た「何」に対しての答えでしょう。
間違っていても構わない、それでも自分が出した答えは「キミ」へ向かうと信じています。
呼びかけを繰り返すのが願いの強さを示していますね。
「はず」と望んで「届け」とばかりに思いを放ちます。
タイトルの「宙」を「ちゅう」と読むことにも何かが込められているのでしょうか。
空よりも果てしなく広がる空間。
そこに飛ばした君への思いは、君に向かって弓なりで飛んでいきます。
直線ではなく曲線で飛ぶ答えの中には、優しさも注ぎ込まれているのでしょう。
だから「今度」こそ君の思いに応えることができる。
願いは君にきっと届くと信じて、空の向こうにいる君へ呼びかけます。
もう一度受け止めて
いつかのキミが言う「このままでいいの?」
答えられなかった僕は
ひとつひとつ言葉にして このソラの向こうに
消えてしまわぬよう 声にかえて
出典: 宙(SORA)/作詞:田鹿ゆういち 作曲:田鹿ゆういち,Octobar
君からの問いかけは、歌の主人公を追い詰めるものでした。
主人公にしてみれば、君との関係は決して悪くはないと思っていたのでしょう。
それなのに矢のように飛んできた君の言葉は、現状を肯定できない心から出たものでした。
君はいつも前よりも、もっと先を見ているのでしょう。
自分が成長するように2人の愛も育つはず、そして相手にもそれを求めたのです。
あの時、問われてすぐに返せなかった君への「答え」。
それは君にとって、歌の主人公との未来への誓いになるはずだったのでしょう。
ここで歌の主人公は自分を取り戻すように「僕」を主語にして語り始めます。
あの時言葉にして口にすることができなかった、君への思い。
君はもういないけれど、ゆっくりと思いを巡らせた「言葉」を声に出して届けます。
ここでは「ソラ」と表現された君との距離。君に届くためには時間がかかるでしょう。
あの時僕が口にできなかった君への思いを、より強く大きくして届けようとします。
今度こそは届くことを心から願って、僕は君に答えを返すのです。