「Carol」のベースにあるのは幼少期の自分
NHKから「みんなのうた」のための楽曲を作って欲しいと依頼された須田景凪。
アニメやドラマと違い、「みんなのうた」は自分でテーマを考える必要がありました。
「みんなのうた」を幼少期に見ていたことから、須田景凪は幼少期の自分をテーマに曲を作ります。
小さい子供は自分の気持ちを伝えることが苦手で、相手にその想いを伝える方法も分かっていません。
大人は子供たちの考えや想いが分からず戸惑うことがありますが、子供も同じです。
子供自身も戸惑いを感じています。そして自分の気持ちを分かってもらえず、悲しくなるのです。
「Carol」では須田景凪が幼少期に感じたそんなジレンマが描かれています。
寂しさを強調する夕暮れ
帰路の騒がしい街
夕の朱色まで
すべて染め上げていく
寄り道をした
出典: Carol/作詞者:須田景凪 作曲:須田景凪
「Carol」の物語は夕暮れから始まります。
夕暮れの街並みを眺めながら、主人公はどんなことを考えていたのでしょうか。
朱に染まった街
夕暮れの街並みを歩く主人公。歌詞の1行目に「帰路」とあるので、家へ向かっているのでしょう。
「夕日に染まった街」という表現はよく聞きますが、ここでは夕日が染め上げたと表現しています。
「嬉しい」、「悲しい」、「楽しい」、いろんな名前がつけられた感情。
しかしそれらの名前が当てはまらない、どう表現したらいいのか分からない感情もあります。
主人公はそんなモヤモヤとした気持ちを抱えながら、帰路についていたのでしょう。
モヤモヤとした気持ちに支配された主人公の目には、夕日が街を染めているように見えたのかもしれません。
悲しい帰り道
「Carol」に関するインタビューで、須田景凪が小学生時代の体験を話されていました。
小学校低学年だった須田景凪は、ある日上級生から意地悪をされたそうです。
意地悪をされる理由も分からず、突然のことに驚き悲しみを感じます。同時に、怒りも感じます。
上級生たちは困惑する須田景凪を置いて帰ってしまい、空しさだけが残りました。
いろんな感情に押しつぶされそうになりながら家へ帰る須田景凪。
歌詞に出てくる主人公の姿は、その時の須田景凪の姿と重なります。
名前がいらないのはなぜ?
風が連れ去る花びら
日々に灯っていく哀楽
名前はいらない
出典: Carol/作詞者:須田景凪 作曲:須田景凪
風が吹けば花びらが舞うように、私たちが喜怒哀楽を感じるのはごく自然なことです。
歌詞の3行目に「名前はいらない」とあるのは、自然なことだからではないでしょうか。
感情に名前を付けるよりも、そのときに感じた想いが大事だと訴えているのかもしれません。
この歌詞は、意地悪をされた時の自分に向けたメッセージと考えることができます。
無理して自分の気持ちを言葉にしなくていい。悲しいなら悲しい。嬉しいなら嬉しい。
それだけで十分なんだよと、自分に語りかけているのでしょう。
大切な人
幸せを思い出すと
その度あなたが隣にいて
目を瞑る笑い方も
どうか忘れてしまわぬように
出典: Carol/作詞者:須田景凪 作曲:須田景凪
この歌詞には、「あなた」というワードが出てきます。
この「あなた」は誰を指しているのでしょうか。
幸せな時間を思い出すときにいつも側にいる人なので、身近な人であることが分かります。
この楽曲が作られたエピソードから考えると、母親かもしれません。
この歌詞は、誰かが側にいてくれるから幸せを感じることができるんだよというメッセージです。
優しい言葉にさえ傷ついていた自分に、素直に受け止めていいんだよと伝えているのでしょう。