音楽は距離を越えて、時や思い出を繋いでくれるツール
テレビやラジオでふと青春時代聴いていた音楽が聴こえてきた時に「あの頃」を思い出すことってありませんか?
時間も距離もすっ飛ばして音楽は僕らを繋いでくれます。
「奏」の歌詞を紐解く
改札の前 つなぐ手と手
いつものざわめき 新しい風
明るく見送るはずだったのに
うまく笑えずに君を見ていた
出典: 奏/作詞:大橋卓弥・常田真太郎 作曲:大橋卓弥・常田真太郎
まずは導入部分。聞き手の中で一気に情景が浮かんでくる歌詞になっています。
ここでグッとまずは掴まれる人も多いのではないでしょうか。
電車で旅立っていく彼女が目に見えるかのようです。
ざわつくホーム、離れたくなくて繋いだままの手をどうしようもできない2人。
そして、名残惜しい表情まで手に取るかのように思い浮かんできます。
君が大人になってくその季節が
悲しい歌で溢れないように
最後に何か君に伝えたくて
「さよなら」に代わる言葉を僕は探してた
出典: 奏/作詞:大橋卓弥・常田真太郎 作曲:大橋卓弥・常田真太郎
いわゆるBメロというものがなく掴んだ心を離さぬまますぐにサビに突入していきます。
時間が過ぎていく様子を「大人になっていく」と例えています。
ただ単純に時間が経っていくだけでなく離れて過ごす時間がお互いを成長させていくのが感じ取れます。
音楽は時を戻したり、思い出を蘇らせたりします。
この別れの瞬間を思い出す時に悲しい歌があなたの中で流れませんようにという祈りを込めながら、「さよなら」という悲しい言葉が最後の言葉になってしまわぬように言葉を探します。
しかし、こういう時こそ良い言葉は出てこないものです。
君の手を引くその役目が
僕の使命だなんて そう思ってた
だけど今わかったんだ 僕らならもう
重ねた日々が ほら 導いてくれる
出典: 奏/作詞:大橋卓弥・常田真太郎 作曲:大橋卓弥・常田真太郎
いつまでもそばにいられると恋愛している間は思いがちです。
もちろん離れるとつもりで付き合ってる人なんていないでしょう。
自分のためにも、あなたのためにも男らしく引っ張っていくことが2人にとって大切だと考えていました。
しかし、離れる瞬間が来てやっと気付けることもあります。
これまで一緒に過ごして来た時間こそが僕らを作ってきたし、これからの僕らも作っていくのです。
君が大人になってくその時間が
降り積もる間に僕も変わってく
たとえばそこにこんな歌があれば
ふたりはいつもどんな時もつながっていける
出典: 奏/作詞:大橋卓弥・常田真太郎 作曲:大橋卓弥・常田真太郎
「降り積もる」という表現が絶妙な歌詞です。
1曲を通して時が経つこと、過ぎていくことをそのまま描くのではなく、どこか景色が見えるように彩っていきます。
君が変わっていくように、僕も変わっていきます。
どんなに変わったとしても経験を積み重ねていったとしても、この瞬間を思い出せる言葉が、歌さえあれば、心は離れないし頑張っていけるという決意にも取れます。
突然ふいに鳴り響くベルの音
焦る僕 解ける手 離れてく君
夢中で呼び止めて抱きしめたんだ
君がどこに行ったって僕の声で守るよ
出典: 奏/作詞:大橋卓弥・常田真太郎 作曲:大橋卓弥・常田真太郎
もちろん定時に電車は出発していきます。
まだまだ手を離せていなかった2人。
「さよなら」の言葉じゃない何かを探すよりも君の名前を呼んで抱きしめること以上に気持ちが伝わることがあるでしょうか。
「僕の声で守るよ」
彼はミュージシャンのようです。
離れていても歌い続けていくこと、この瞬間を気持ちを、歌に、声に変えていくことが2人を繋いでいくことになります。
君が僕の前に現れた日から
何もかもが違くみえたんだ
朝も光も涙も歌う声も
君が輝きをくれたんだ
抑えきれない思いをこの声に乗せて
遠く君の街へ届けよう
たとえばそれがこんな歌だったら
僕らは何処にいたとしてもつながっていける
出典: 奏/作詞:大橋卓弥・常田真太郎 作曲:大橋卓弥・常田真太郎
最後の最後で非常に直接的な歌詞がはめ込まれていきます。
ここまで情景が浮かぶような歌詞が続いてきた分、気持ちが直接表現された言葉にはグッときます。
君がいたからこそ日々は色付いていく、感謝の思いも寂しさも好きという気持ちも全部歌にして届けようという決意が表れています。
「こんな歌」っていうのは「奏」自身なのでしょうか。
きっとこの歌に勇気付けられる人も、同じような境遇で響く人もたくさんいるかと思います。
なかなか歌自身を歌詞の中とリンクさせていくような楽曲は少ないような気がします。
音楽は世に出たら聞き手のものになります。
非常に絶妙な形で聞き手に手渡していくような歌詞の世界観に仕上がっています。
もちろん「こんな歌」は2人にとっての思い出の歌を当てはめても良いでしょう。それが2人を繋ぐ1曲になるのですから。