妄想系シンガーソングライター 吉澤嘉代子の世界
「妄想系」とも称されるシンガーソングライターの吉澤嘉代子(よしざわかよこ)さん。
彼女の魅力は中毒性の高い楽曲の世界観にあります。
まるで短編小説のような世界観はどこから来るのでしょう?
多くのシンガーソングライターは自身の内面世界を作品に反映させます。
しかし彼女が描く世界はすべてがフィクションの物語。
その中にリアルな感情を吹き込むことで小説のような歌になるそうです。
文学性の高い作風
吉澤嘉代子さんは思春期の多くの時間を学校へは行かず図書館で過ごしたそうです。
その影響は創造力に満ちた文学性として楽曲に反映されています。
たとえば名曲と名高い「残ってる」。
この作品は友人との他愛のない会話から生まれたそうです。
友人が見たのは急に冷え込んだ朝に1人薄着で歩く女の子。
きっと大切な人と朝まで過ごしたんだろうな。
その景色を吉澤嘉代子というフィルターを通すことで生まれたのが「残ってる」なのです。
OLの日常を描いた「月曜日戦争」
今回は吉澤嘉代子ワールドを堪能できる「月曜日戦争」をみなさんに紹介したいと思います。
「月曜日戦争」は2017年、吉澤さんが初のシングルとしてリリースした楽曲です。
2018年のアルバム「女優姉妹」にも収録されています。
ドリーミーなメロディと突然の転調、そして摩訶不思議な歌詞。
吉澤嘉代子さんの世界観が3分間の楽曲にギュッと濃縮されています!
「月曜日戦争」のテーマはずばり”OLの日常”。
なぜならばドラマ「架空OL日記」の主題歌として書き下ろされた楽曲だからです。
そのことは作品の世界観と大きく関わっています。
たなかみさきワールド!妄想全開のアートワーク
可愛らしいアートワークを手掛けたのは同じく妄想系イラストレーターのたなかみさきさん。
ただ可愛いだけではなくどこか寂しさを感じさせる画風が人気のアーティストです。
たなかさんが描く女の子の表情には”好き”と”嫌い”の間にある情緒を感じさせる何かがあります。
春画のように少しエッチな作品が多いのに女性からの支持が多いのはそのためでしょう。
OL経験なしの2人が妄想の末辿り着いたのが月にまたがるOLさんでした。
休日明けの憂鬱な月曜日から着想した”月”は非日常の象徴。
OLさんが手にする急須にスマホ、散乱するコピー用紙はOLさんの日常を象徴しています。
さらに古めかしい黒電話の存在が示す「女性はいつの時代も大変なんだ!」というメッセージ。
遊び心と普遍性が調和した楽曲にピッタリのアートワークですね。
「月曜日戦争」と「架空OL日記」
「月曜日戦争」が主題歌を担当する「架空OL日記」はバカリズム原作&主演の人気ドラマです。
女装なしの素のバカリズムがOLの日常を演じていく姿が最高にシュール。
バカリズムは2006年から2009年にかけてOLのふりをしてブログを書いていました。
その名も「架空升野日記」。
あまりのリアリティに実際のOLさんも驚愕したそうです。
後にブログを書籍としてまとめたものが「架空OL日記」の原作になっています。
「月曜日戦争」はドラマ脚本から生まれた?
コント的要素はなし。ほとんどのシーンは会話劇で進行します。
主人公はバカリズム扮する銀行勤めのOL升野さん。
同僚役には夏帆さん、臼田あさ美さん、佐藤玲さん、山田真歩さんをキャスティング。
佐藤玲さんが「女優姉妹」のモデルに抜擢されたのはドラマ出演がきっかけのようです。
同僚とコスメを選び、ワインを飲みながら嫌いな上司の愚痴を語り合う日常描写の連続。
ジワジワと笑いを誘う中毒性の高い作風が評価されギャラクシー賞、向田邦子賞を受賞しています。
「月曜日戦争」はドラマの脚本を元に制作されました。
そのため「架空OL日記」の要素が色濃く出ているのです。