「indigo la End」というロックバンド
川谷絵音は他にもバンドやユニットの掛け持ちしていますが、その中でも「indigo la End」と「ゲスの極み乙女」はメジャーデビューも同時。
この2つのバンドは恒常的に活動していて、川谷絵音の活動としては双璧をなすものとなります。
「indigo la End」の良さは、歌詞やメロディーといった部分ではなく、声や楽器の音が鳴る全体感。
曲の長さ分の時間を切り取った流れそのものが素敵なので、まずは「愛の逆流」のMVを見てみましょう。
アルバム「藍色ミュージック」に収録
「愛の逆流」は、「indigo la End」2016年6月にリリースしたアルバム「藍色ミュージック」の4曲めに収録されています。
「indigo la End」にとっての「藍色ミュージック」
「藍色ミュージック」はインディーズから通算して3枚目、メジャーとしては2枚目のアルバムとして、2016年にリリースされました。
それまで何度もメンバーチェンジを繰り返してきた「indigo la End」ですが、現在のメンバー4人が揃って初めてリリースしたのがこのアルバムです。
つまり、「indigo la End」というバンドのカタチが完成したと同時にリリースされました。
そして、このアルバムはバンド名にある「indigo」の日本語訳である「藍色」をタイトルに冠しています。
リードトラックというポジション
アルバム「藍色ミュージック」からはゲームのCMとのタイアップシングルの「心雨」が先行リリースされています。
次に、実質的なタイトルチューン「藍色好きさ」のMVが発表され、続いて、アルバムの発売前にリードトラックとして発表されたのが、この「愛の逆流」のMVでした。
アルバムの中でもイチオシの一曲ということです。
「愛の逆流」の歌詞がすごい
「indigo la End」でも「ゲスの極み乙女」でも、楽曲は川谷絵音が作っています。
しかし、作品の作りは大きく異なり、作詞の面でも、川谷絵音が紡ぐ言葉には大きな違いがあります。
少しコミカルで批評的で人を食ったような「ゲスの極み乙女」の歌詞と比べ、「indigo la End」では、よりストレートな感情が歌われます。
ロックのサウンドの中で、平易ながら突き刺さる言葉が何度も繰り返されます。
まずは、冒頭の歌詞を見てみましょう。
煌びやかな街並みに
慣れない様子でさ
ぶっきらぼうに呟く
「付き合って」
私はもう可笑しくて
姿勢正したあなたに
目を合わせキスをした
懐かしいな
出典: 出典: 愛の逆流/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
「懐かしい」という言葉から過去の情景であるとわかります。
あと、わかることとしては都会の夜に男が女に告白したというあたりでしょうか。
少ない言葉があらわすもの
「私」が女で「あなた」が男であると断定しましたが、実際は描写の省略が多いため、はっきりとはしません。
同性である可能性も残るほど、言葉が足りていません。
ここは男女ということで話を進めますが、このように言葉数が少ないことによって、伝わってくるものもあります。
それは「緊張」です。
歌詞の中の男性は「緊張」しています。告白するのにも「ぶっきらぼう」になるくらいです。
「煌びやかな街並み」や「慣れない」というのは舞台装置の一種と考えられますが、ともかく「緊張」しています。
反対に、女性は「緩和」しています。「可笑しく」て「キス」するほど「緩和」しているのです。
この感じを強烈に伝えるには、多すぎる言葉は邪魔になります。
音楽としての表現
「男」と「女」。
「緊張」と「緩和」。
どちらも相対するものの対比です。
言葉で対比を表現したわけですが、「懐かしいな」と歌った直後のタイミングでは、今度は音楽表現による「対比」の仕掛けが込められています。
ほんの一瞬だけ、ベースがマイナーコードを弾き、ギターがメジャーコードを弾くのです。
「陰」と「陽」と言っても良いでしょうか。
伝統的な陰陽と性別の関係とは逆にですが、ベースが男性でギターが女性だとします。
なにか同じ事象に向かっていても、「男」はマイナーコードでそれを悲観し、「女」はメジャーコードで前向きに捉えているという心理の表現という解釈もできます。
そして、それを音で表現した後、2人の考え方の違いが再び言葉で表現されます。