金木犀ってどんな曲?
ファースト・フルアルバムのオープニング曲
2021年、ソロとして発表したファースト・フルアルバム「THE END」の1曲目に収録された楽曲です。
音楽プロデューサー亀田誠治を迎え制作された楽曲は多方面で注目されています。
三拍子のリズムに美しいサウンドと切ない歌詞
三拍子のワルツのリズムに美しいサウンドが心地よく、やさしく心に響きます。
まるで草原をゆっくりと駆ける風のようなメロディがリスナーを引きつけます。
しかし、美しいサウンドに乗せて紡がれる言葉たちから感じられるのは、もがき続ける「私」。
自らを”長所のない私”と言い放つ切ない歌詞を読み解いてみましょう。
歌詞を読み解く
冷めた「私」
長所のない私です
まぐわいの後の一刻に
心躍らず夢から温度だけ
吸い取られてゆく まるで一人
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
いきなり冒頭から ”長所のない私です” と自己否定からはじまります。
この一文がこの楽曲を象徴する言葉であり、「私」のもがき苦しむ姿を表しています。
歌詞から想像するに、恋人ではない人と一夜を過ごした「私」。
まぐわいに心踊ることもなく、どんどんと冷めてゆく自分を感じます。
”まるで一人”という表現に、「私」の寂しさがより一層込められているように思います。
はじめから一人で感じる寂しさよりも、人の間で感じる寂しさの方がツライものです。
そばにいるのに、”まるで一人”…なんと寂しく切ないのでしょう。
もしかしたら、「私」はこの人に恋愛にも似た感情を持っているのかもしれません。
だから、寂しさを感じるのではないでしょうか。
”長所のない私です”と卑下することで、叶わない思いを受け入れようとしています。
願う「私」
身をよじる 朝になる
途切れますように
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
”身をよじる”という表現は、気になる人のそばで寂しさを感じる「私」の苦悩する姿です。
どうにもできず悶々としたまま朝を迎えてしまう。
”朝になる”というのは、変わらない日常が続いてゆくことの象徴でしょう。
こんな思いが”途切れますように”と、願う「私」。
金木犀が表現するもの
金木犀 揺れる頃
あなたには言えない
甘い香りにすぅと溶けてく
染まる頬 脳裏に影 影
出典: 金木犀/作詞:アイナ・ジ・エンド 作曲:アイナ・ジ・エンド
”金木犀 揺れる頃”というのは、単に季節の移ろいを表しているだけではありません。
いくつかある金木犀の花言葉の中で、代表的なのは「謙虚」です。
秋に芳醇な香りを放ちながら、控えめに花を咲かせる様から「謙虚」とされる金木犀。
”あなたには言えない”という、思いを飲み込む「私」を金木犀と重ね合わせています。
最後の”脳裏に影 影”は、飲み込んでしまうしかない本当の思いではないでしょうか。
影を二回繰り返すことで、断ち切れない心情、あるいは迷いを表現しています。