必死でバスに乗り込もうとする主人公

どけ そこどけ 乗り遅れるだろう 人数制限何人だ
嘘だろう これを逃したら いつになる
あぁ ちょっと待ってくれ 俺を先に乗せてくれ
なぁ どうせ大層な 望みでもないだろう

出典: 乗車権/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

進路を決断してから主人公の気持ちに変化が現れます。

このバスに乗れば幸せな人生が待っている」と思い込んでいるのでしょう。

到着したバスを見て、我先に乗り込もうとします。

しかし、あまりの人の多さにバスに乗ることさえ困難な様子。

バスに上手く乗り込んだ人に対して「どうせ大層な夢でもないだろう」と恨み節を吐いています。

でも、よく思い出してください。

この主人公だって、本気でこの夢を望んでいるわけではないのです。

ただ「皆がこの進路を選んでいるから」という理由だけでこのバスに乗ろうとしています。

なので「このバスに乗りたい人はみんなどうせ自分と同じ動機だろ?」と思っているのでしょう。

「乗り継ぎ」に込められた意味は?

鈍い音で吠えて 食い過ぎたバスが出る
泣き落としで 順番譲る馬鹿がいた
運ばれて数時間 乗り継ぎがあるらしい
次の便は 夜が来たら 出るらしい

出典: 乗車権/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

とりあえず主人公は、このバスに乗り込むことができたようです。

その証拠に、他人に譲ったせいでバスに乗れなかった人を見下すような表現が出てきています。

自分は勝ち組」と思っているのかもしれません。

しかし「乗り継ぎがある」といっているので、直通でゴールへたどり着くわけではないようですね。

乗り継ぎがあるということは、バスを一旦降りるということです。

つまり乗り継ぎの段階だったら、違うゴールを目指すこともできるということなのでしょう。

とりあえず皆に流されて有名な大学や企業に入ったけど、やっぱり違う道を目指すことにした。

そんな人も中にはいます。

そのような選択肢もあるということを「乗り継ぎ」という言葉で表現しているのかもしれませんね。

乗車券をなくした主人公

あれ ここに無い でも こっちにも無い なんで乗車券が無い
予定外 見付からないまま 日が落ちる
あぁ ちょっと待ってくれ 俺もそれに乗せてくれ
おい そこの空席に 鞄 置いてんじゃねえ

出典: 乗車権/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

「乗り継ぎ」の時点で、主人公にハプニングが起きます。

どうやら乗車券をなくしてしまったようです。

ここで冒頭の歌詞を思い出してみましょう。

このバスに乗るために必要な乗車券とは「強く望むこと」だと説明しています。

しかし、主人公はこの夢を叶えたいと強く望んではいませんでした。

だから乗車券をなくしたのだと解釈することができます。

それでも、主人公はバスに乗り続けることに執着し続けます。

あんなに人がたくさん乗っていたはずのバス。

しかし、いつの間にか鞄が置けるほど余裕ができているようです。

きっと途中で降りた(=夢を諦めた)人がたくさんいたのでしょう。

無理やりバスに乗り込むことに決めた主人公

違う これじゃない これでもない 違う
人間証明書が無い 予定外 俺が居ない
やばい 忍び込め

出典: 乗車権/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

乗車券はいまだに見つかっていないようです。

主人公の焦りはさらに募る一方。

「人間証明書」とは「乗車券」と似たようなものなのではないかと解釈しておきましょう。

主人公は「この夢を叶えたいと強く望んでいるわけではない」ということに気づいたようです。

しかし、今更後戻りはできないと思ったのでしょう。

主人公は無理やりバスに忍び込んで、夢の先へと向かうことにしました。

自分の本心は無視して"夢の先に行く"ということだけを達成できれば良いと思ったのでしょう。

夢を追うことが嫌になってきた

あぁ ちょっと待ってくれ やはりここで降ろしてくれ
なぁ こんな人生は望んじゃいない 望んでたのは
あぁ 見逃してくれ わからないまま乗ってたんだ
俺一人 降ろすため 止まってくれるはずもねえ

出典: 乗車権/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

しかし、本心を偽ってまで、興味のない夢を追うことは辛いことです。

その辛さを実感したのでしょう。

このバスを降りないとマズイ!と思い始めたようです。

しかし、この主人公は無理をしてバスに乗り込んだ経緯があります。

その経緯の中で、人を蹴落としたり、周りに迷惑をかけたこともあるのでしょう。

そのため「今更引き返せない」とも思っているのではないでしょうか。

「俺一人降ろすため~」の部分ではそんな心情を表しているように感じられます。

バスを降りた主人公

強く望む事が 欲しいと望んだよ
夢の先なんて 見たくもないから

出典: 乗車権/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

「夢の先なんて見たくもない」といっていますね。

ということは、きっと最終的にこのバスから主人公は降りたのでしょう。

そして「強く望む事」を求めはじめます。

本当に自分が叶えたいことは何なのか向き合おうとしていると解釈できますね。

おわりに