一聴すると非常に親しみやすく、そしてシームレスなサビが耳に残りやすい『他の星から』ですが、その歌詞には隠された要素が多くあります。
当たり前は怖いものだ
いつもと同じが好きだ
変化は嫌い
都合のいいロープで縛られよう
【他の星から】
出典: 他の星から/作詞:秋元康 作曲:Sugaya Bros.,松村PONY
特にこちらの歌詞は、停滞や変わらないことに望む人が多い現在への風刺のようにも思えます。
確かに変化についていくことは大変なことかもしれませんが、成長や進化していける余地が残っているのにそれを恐れて立ち止まってしまうことこそが私たちが真に恐れるべきことかもしれません。
周囲に迎合していくことは自分で考える必要が無くなり、楽な一面もあります。
しかしながら、それは何かを企む人にとっては都合の良い存在でしかありません。
絶えず変化していくものに対して適応していくことは、他人に操られないためにも必要なことなのです。
この楽曲の主人公のような思考というのは、現代を生きる私たちにとって恐れることだといえるでしょう。
ちゃんと危機感を持って目の前のことに対して対処していく。
そういった姿勢が大切だといえます。
侵略されても、みんなと一緒であれば
しあわせに思えるんだったら
知らない間に滅亡してたって
みんなと一緒なら 楽しそう
出典: 他の星から/作詞:秋元康 作曲:Sugaya Bros.,松村PONY
この歌詞には、侵略者の指示で表情が無くなってしまった人々を見た少女の想いが綴られていますね。
諦観してしまった少女は、滅亡してしまってもみんなと一緒であればいいと破滅願望ともとれる想いを吐露します。
どうにもならない状況で、幸せを見いだすことができた少女ですが、果たしてその幸せは本当に幸せといえるのでしょうか?
確かに幸せというものは人によってそれぞれですが、その場を凌ぐだけの偽りの幸せを幸せと呼べるのかといえば素直にうなずけないと思います。
一人一人が自分にとっての本当の幸せとはなんであるのかという命題について考えなければならない。そんな気持ちになりますね。
主人公にとって、何よりも今の生活を継続することが重要だと考えているのではないでしょうか。
だからこそ偽りの幸せの中に安住するのではなく、自分で本当の幸せを探していくこと。
この楽曲の主人公を反面教師として、私たちはそうした姿勢を学んでいく必要があるのです。
世界の危機よりも人間関係?
ああ それより
三味線のお稽古に
遅れそうなの(まずいわ)
人間関係
出典: 他の星から/作詞:秋元康 作曲:Sugaya Bros.,松村PONY
侵略者によって独裁がとられる世界の中で、少女が気にするのは人間関係でした。
別惑星からの侵略者によって私たちも生きている世界の“普通”が壊れてしまったというストーリー上、現実的に想像するのは難しいものかもしれません。
しかしこの構図がもう少し現実的なベクトルが起こったとしたら、もしかしたら?と想像しやすくなるでしょう。
そしてもしそんな事態になった時、私たちは何を気にするのでしょうか?情勢?それとも少女のように人間関係?
今読んでくれた人の心で、確かに自分はこんな時どうするんだろう?という疑問が沸いたのではないでしょうか。こうやって普段絶対抱かない疑問を抱かせてくれるのも本曲のいいところです。
主人公は視野が狭く、世界のことよりもただ自分のことだけを考えています。
こうした人々が増えてしまうと、みんなにとっての普通というものは維持できなくなってしまいます。
自己中心的であることで、普通は少しずつ破壊されていってしまうのです。
それを避けるためにはやはり、世界のことを普段から少しずつ気にかけていくこと。
誰もが自分には関係がないことと思ってしまうことで、世界の状況は少しずつ悪くなっていってしまうかもしれません。
この歌詞で表現されているのは、世界に対して無関心でいること。
そしてそんな考えによって、世界はいつの間にか悪い状況へと追いやられてしまいます。
そしていつの間にか、普通の生活さえも維持できなくなってしまうのです。
風刺的なこの楽曲の歌詞は、私たちにそんな他人行儀な姿勢を変えていかなければと思わせてくれます。
チャーミングな楽曲とは裏腹に、歌詞には秋元康からの深いメッセージが込められているのです。