緑は今もみずみずしいか
乙女はあでやかか
人の心は鴎のように
真白だろうか
出典: 契り/作詞:阿久悠 作曲:五木ひろし
主人公の目の前に広がる、おぞましい光景を引きあわせるような描写です。
向かい合う景色はひどく濁って見え、灰色だといっているのでしょう。
皆と過ごした故郷を、活き活きとした草木が青々としげっていく様子と対比しているのです。
あなたとの娘はすくすくと美しく育っているのか?
充実した日々を「緑」という色で表現しているのでしょう。
父として愛娘を寵愛する情感たっぷりの心痛が溢れる気持ちなのです。
鴎は古来より、灯台の透明な窓にもぶつかってしまうような騙されやすい純粋な鳥といわれています。
体毛は背の部分以外とても白く、人間が引き起こす凄惨な事柄と引きあわせているのです。
人がもつ心とは生まれながらにして濁ってはいない。
本当はあの鴎のように清らかで真白いものだといっているのです。
悲哀がこもるサビ
悲痛な叫び
愛するひとよ 美しく
愛するひとよ すこやかに
出典: 契り/作詞:阿久悠 作曲:五木ひろし
凛として生きてほしい、健全に過ごしてほしい...。
故郷に残した愛するひと達に祈るような気持ちで、心底から切に願い求める様相が伝わってきます。
ともすれば主人公は死を目前にし、最期を覚悟したのかもしれません。
もう離れた皆とは2度と会うことが叶わない。
戦地で果てる想い
避けられない戦火のなか叫びたい気持ちを抑え、あえて美しい言葉で想いを綴っているのです。
言うなれば、遺言のようなものかもしれません。
「私の出来なかった生き方を、託されたあなた達に全うしてほしい」。
あなた達には平和に生きてほしい、といっているのでしょう。
主人公の悔恨の情が垣間見える歌詞ではないでしょうか。
壮大に展開してゆくBメロ
いのちの重大さ
朝の光が海を染める
生きる夢に満ちて
まぶしい願いがきらめく いのちのように
出典: 契り/作詞:阿久悠 作曲:五木ひろし
漆黒の暗い闇が明けていきます。
太陽という大きな希望の輝きが差し込んでくるのです。
終戦により争いを鎮めていく様子とも受けとれます。
争いを鎮めるその光は、悲惨な現状は全て人間の責任であると物語っているようです。
敵対することなど愚かで馬鹿げているといっているのでしょう。
もしかすると主人公はすでに命を絶っているのかもしれません。
昇天した主人公がまばゆいばかりの光を海や大地に放っているのです。
まるで後光を差す神のように...。
祈る平和
流れは今も清らかだろうか
子供はほがらかか
人はいつでも桜のように
微笑むだろうか
出典: 契り/作詞:阿久悠 作曲:五木ひろし
2度とは戻れぬ祖国の地。
帰ることのできない主人公の想いが、どこか哀しげで懇願しているようにも伝わってきます。
期待や希望も連想させる言葉は、国の将来を憂慮しているのでしょう。
子供達が明るく笑い、前に進める世の中になってほしいのです。
1年の季節のなかで春には必ず花を咲かせる、桜。
日本に存在する全ての人の、誕生した日を祝うような一節です。
四季と同様、当たりまえに喜怒哀楽を表せる平和を祈っているのでしょう。