蹂躙される毎日をただ黙って耐えてきた主人公に、ある変化が訪れます。
ふと道端に目を落とすと、そこには上手く成長できなかったのか、形が崩れた1輪の花が……。
普段であれば気にすることもなく通り過ぎるはずが、その日だけは違っていました。
そのいびつな形は、何だか自分自身を見ているようにも感じられます。
思わずぐしゃっと踏み潰し、見えないように砂をかけた主人公。
チクリと痛む胸は、良心がうずいているサインです。
「こんなことをしたら、自分をいじめている奴らと一緒だ」
そう感じながらも、蹂躙する側に回ってしまった自分……。
次第にカエルの鳴き声が大きくなる帰り道は、普段の日常と何も変わらないものでした。
しかし主人公の心だけが、この瞬間確かに変わっていったのです。
繰り返し歌われるサビに込められた決意
1番のサビと同じフレーズが繰り返される2番のサビ。
自分の変化に気がついた主人公からは、悪魔のような天使に負けないという決意を感じます。
明日も、そして翌日も顔を合わせるであろう「天使たち」。
それはいい子の仮面を被っただけの、悪魔のような周りの人たちを指していました。
普段はいい子にしているから、誰も彼らが悪魔であることに気がつきません。
そのことに気がついているのは主人公だけ……。
救われない主人公に、胸が痛みます。
今は泣いていい……そして、今しか泣いてはいけない
帰り道を無くした主人公
帰り道を無くした風景
夕焼けこやけ逆さまに
下校時間 鳴きだすチャイムと
だんだんと落っこちてゆく
出典: 僕の戦争/作詞:の子 作曲:の子
ここからは日本語の歌詞となり、神聖かまってちゃん独特のハイトーンボイスが続きます。
「下校時間」「チャイム」というワードがあるように、やはり主人公は学生。
それも、まだ幼い子供であることがわかります。
そんな小さな体で、日々の学校で苦しんでいるとすれば……主人公はいじめにあっていると考えられますね。
そこにあるはずの帰り道が見えない風景。
空が逆さまになり、夕焼けもひっくり返って見える風景。
主人公はあまりの辛さにうずくまり、その小さな膝の間から風景を見ているのです。
下校時間になれば、今日1日の辛い時間は終わりです。
しかし、明日になればまた、同じ苦しみの日々がやってくるだけ……。
気分は決して晴れ渡ることはなく、どんどんと深く落ち込んでいってしまいます。
菜の花に込めた想い
帰り道を終わらせないって
泣いていいよ今だけは
線路沿いに消えちゃった菜の花
来年また咲いてなんて
出典: 僕の戦争/作詞:の子 作曲:の子
自分に言い聞かせるように語りかける、「泣いていいよ今だけは」。
下校時間を過ぎ、周りに誰もいない今だけは、泣いても許されるほんのわずかな時間なのです。
学校で辛さのあまり泣き出せば、いじめはさらにヒートアップするでしょう。
「今だけは泣いていい」とは、裏を返せば「今しか泣いてはいけない」という意味になります。
さきほどいびつに見え、思わず踏み潰した菜の花。
まるで自分がいじめに屈し、もう立ち上がれなくなってしまったかのようにも見えて……。
「私は頑張るから、また来年も咲いてほしい」
そんな身勝手な願いを込めてしまいます。
逆さまに見える「夕焼けこやけ」の意味
1人きりで戦う主人公
帰り道を無くした風景
夕焼けこやけ逆さまに
下校時間 他人の影踏み
気づいたら夜明け 1人きり
出典: 僕の戦争/作詞:の子 作曲:の子
いじめられている主人公は、当然遊びの仲間に入れてもらえることはありません。
1人で影踏みに入れてもらったような気分になっていると、知らない間に日が暮れていました。
既に影が出ていないにも関わらず、夜明けまで夢中になって影踏みをする主人公……。
帰りが夜明けになっても、心配して探しに来てくれる両親はいません。
学校にも、そして家にも居場所のない主人公を、一体誰が助けてくれるというのでしょうか。