「セレブレイション」への誘い
2009年9月29日発表、マドンナのオールタイム・ベストアルバム「セレブレイション」。
このベストアルバムの表題作にもなった新曲「セレブレイション」について解説いたします。
1982年のデビューから一躍、時の人になり超VIPスターにまで成り上がったマドンナの軌跡。
マドンナの活動履歴のすべてを祝福する歌が「セレブレイション」です。
彼女の魅力をぎゅっと濃縮したような歌詞になっています。
男性との出会いと愛を歌う歌詞はマドンナの十八番でしょう。
おまけにサウンドも1980年代のマドンナを彷彿とさせるダンス・ポップになっています
シンセサイザーとビートボックスを用いたサウンドが懐かしくも新鮮でしょう。
様々な楽曲をメガ・ヒットに導いたマドンナの集大成の曲が「セレブレイション」の本質です。
この曲の歌詞を和訳しながらマドンナの軌跡を振り返りましょう。
さあ、パーティの時間です。
マドンナがあなたを誘う
肉食系女子の元祖・マドンナ
I think you wanna come over
Yeah, heard it through the grapevine
Are you drunk are you sober?
出典: セレブレイション/作詞:Madonna, Paul Oakenfold, Ian Green, Ciaran Gribbin 作曲:Madonna, Paul Oakenfold, Ian Green, Ciaran Gribbin
「あなたはこっちへ来たいのね 私には分かるわ
Yeah うわさで聴いたのだけれど
あなたは酔っているの それともシラフなの?」
既に名うてのやり手であるあなたを誘惑するところからストーリーが始まります。
語り手はおそらくマドンナ本人をイメージしたような魅惑的で素敵な大人の女性です。
男性を自分の方から誘う歌詞はマドンナのように圧倒的な自信がある人でないと歌えません。
誰もがうっとりとするルックスに知的でもある女性。
マドンナはさらに男女の関係に積極的な肉食系女子の元祖でもあります。
女性に関する旧い価値観を覆して新しい時代の女性像を誕生させたのも彼女です。
新世代のマリリン・モンローの異名をほしいままにして時代のポップ・アイコンになりました。
もしマドンナに誘われたら。
男性だけでなく女性も彼女の申し出を断ることはないでしょう。
彼女はあなたに酔っているのかどうか尋ねます。
あなたの本気度を確かめたいのでしょうか。
一方でこのあなたとは誰なのか考えてしまいます。
マドンナの恋愛の相手という意味だけではなく、世界中のファンを指すのではないか。
先を読んでゆくと答えが次第に分かってきます。
人生を楽しんで欲しい
Think about it
Doesn't matter
And If it makes you feel good then I say do it
I don't know what you're waiting for
出典: セレブレイション/作詞:Madonna, Paul Oakenfold, Ian Green, Ciaran Gribbin 作曲:Madonna, Paul Oakenfold, Ian Green, Ciaran Gribbin
「考えてもみてよ
そんなことどうでもいいし
あなたの気分が良くなるなら やっちゃいなさいって私はいうわ
あなたが待っているものが何か私には分からないの」
ライブでステージから観客を煽るような言葉が綴られます。
気持ちがいいことだけをしていたいというのはマドンナの人生観の通奏低音でしょう。
その人生観は享楽的でありながらもリラックスして生活を送りなさいという大切な教えです。
誰もが皆、萎縮することなく人生をめいっぱい楽しんで欲しい。
マドンナが掲げる哲学は単純明快ですが、こうして歌にしてくれて人々に勇気を分け与えます。
マドンナ以前の世の中では人生は楽しんだものが勝ちという考えは白い目で見られていました。
そうした旧い風潮を彼女は払拭します。
この楽曲「セレブレイション」はマドンナ初のオールタイム・ベストの表題曲です。
彼女の原点に立ち返ったような歌詞が最大の魅力でしょう。
悩んでないで今すぐ好きなことをしなさいとあなたに語りかけます。
このラインはおそらく歌詞の中のあなただけではなく、ファンやリスナー全員へのメッセージです。
あなたの人生を楽しんで欲しい。
マドンナが伝えていることはいつもシンプルで優しいのです。
彼女は愛の伝道師なのですからこうした傾向は当然のことでしょう。
考えないで感じて
マドンナらしい艶めいた歌詞になってゆきます。
その悦びを臆することなく味わいましょう。
黒人音楽から受け継いだもの
Feel my temperature rising
It's too much heat, I'm gonna lose control
出典: セレブレイション/作詞:Madonna, Paul Oakenfold, Ian Green, Ciaran Gribbin 作曲:Madonna, Paul Oakenfold, Ian Green, Ciaran Gribbin
「私の体温が上昇するのを感じて
あまりに熱すぎて コントロール不能になりそう」
あなたには少し頭でっかちなところがあるのかもしれません。
楽しむことに躊躇してしまうような人柄。
そうしたあなたに対してマドンナは私の柔肌の熱さに触れて欲しいと訴えます。
何でも頭で考えようとしないで感じることが大事だと歌うのです。
「Don’t think it,Feel it」
こうした発想はダンス・ミュージックの元祖である黒人音楽の中で芽生えました。
マドンナのダンス・ポップには人種の壁がありません。
それでも源流をたどると偉大な黒人音楽の歴史に突き当たるのです。
考えるな、感じろと伝えるこの哲学は文化の肉体化にとって一番大切なテーゼ。
愛は頭で考えるものではなくて身体で覚えるもの。
制御不能になっても愛することはやめたくない。
マドンナが得意とする艶めいた大人の愛の哲学がここにあります。