「Rainy EP」収録曲
2018年4月にリリースされた、BASI(バシ)さんの完全数量限定盤「Rainy EP」。
全7曲のうち6曲目に収録されているのが「ANATAGAITANATSU」です。
これがまたチルアウトにぴったりなメロウなナンバーに仕上がっています。
ただしメロウからの展開もあり、切ないリリック……という至極の名曲。
しかも「あなたがいた夏」というタイトルなのに、MVが公開されたのは2019年1月15日でした。
思いっきり真冬!要するに季節を問わず聴いてほしいということでしょう。
「ANATAGAITANATSU」MV
HASKEYさんによるイラストがとってもカワイイですね。よ~く見ると微妙に動いています。
約4分半のMVで、この微妙な動きとリリックが出てくる以外に、映像の変化はありません。
至ってシンプル!チルアウト仕様!そんなMVになっています。
いったいどこで何が動くの?という些細なツッコミを入れつつ、まったり解説していきましょう。
MV解説!
風あざみって何?
切ないけれど終わり
like a 風あざみ
忘れないでねって耳もと
あなたがいた夏
出典: ANATAGAITANATSU/作詞:BASI 作曲:BASI
MVは「BASIC MUSIC」のロゴマークから始まります。続いてタイトルの「ANATAGAITANATSU」。
ここまでがイントロです。歌が始まると、HASKEYさんのイラストに切り替わります。
背景の色は青のまま。どうやら夜の青さが表現されているようです。
空には黄色い三日月といいたいところですが、右側が欠けているので逆三日月になるでしょう。
二十六夜とか有明の月という呼び方もあるようです。
月を眺めているのは黄色い髪の男性。緑色のおそらく海水パンツを履いて三角座りしています。
もたれているのは白いラインの入ったオレンジ色のボート。逆さまに置かれた状態です。
静止画かと思いきや、歌詞の「風あざみ」のところから男性の黄色い髪がフワッと揺れ始めます。
さて「風あざみ」とはいったいどういう意味なのでしょうか。
井上陽水「少年時代」
夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空に残された 私の心は夏模様
出典: 少年時代/作詞:井上陽水 作曲:井上陽水・平井夏美
「風あざみ」という種類のアザミの花がありそうですが、実は井上陽水さんによる造語だとか。
野あざみ、浜あざみ、鬼あざみ、島あざみは存在しますが、風あざみはありません。
つまり「ANATAGAITANATSU」は井上陽水さん「少年時代」へのオマージュと考えられます。
季節は夏の終わり。
どうやら女性との交際も終わりかのようなニュアンスです。
新しい造語なのにどこか懐かしさを感じさせるところが、井上陽水さんの魅力になるでしょう。
King Gnuの常田大希さんも井上陽水さんをリスペクトしていて、作詞にその片鱗が見られます。
若い世代にも受け継がれる日本語の美しさとおもしろさ。
ネイティブの言葉だからこそわかる微妙なニュアンスが楽しめます。
広い世界で日本語の繊細さが理解できるのは日本に生まれた人だけ!と考えると、貴重な話。
BASIさんのリリックから過去の日本の名曲を知る魅力もありますね。
ボートでぼーっと…
切ないの?幸せなの?
砂浜 逆さまに置かれた
ボートにもたれて
ぼーっとしてるだけで幸せ
月 見惚れて
出典: ANATAGAITANATSU/作詞:BASI 作曲:BASI
タイトルの「あなたがいた夏」という歌詞に続いて、「A~ha」のコーラスが入ります。
その最初の「A~ha」のところで、黄色い髪の男性は何と右足でリズムをとるのです。
この微妙な動き、気がつきましたか?さらに「砂浜」のところでもトン!と右足を動かします。
今度はいつ右足を動かすの?と気になり始めたのではないでしょうか。
ぼーっとしていると見過ごしそうな些細な変化です。それもそれで幸せかもしれませんが……。
男性の黄色い髪もときおり風に揺れています。切ないのか、幸せなのか、気分まで微妙です。
「ボートでぼーっと」と韻を踏むところは、定番すぎてクスッと笑える感じでしょう。