20周年イヤーを締めくくるデビュー記念日にアルバム発売!

世界の終末の逃走劇を描いた【駆け落ち者】

椎名林檎【駆け落ち者】歌詞の意味を考察!完成していると歌う理由は?正反対の二人の行く末に何が待つのかの画像

日本の音楽業界の中でも類稀なる才能を発揮する女性ボーカリスト、椎名林檎

鮮烈なデビューから早20年が経った今も、その感性は衰えることを知りません。

そんな彼女の20周年イヤーを締めくくる作品としてリリースされたアルバム『三毒史』

今回ご紹介する楽曲はその『三毒史』に収録されている【駆け落ち者】です。

『駆け落ち』とは、愛し合う2人が現在の不遇な境遇から逃亡することを指します。

古来より人間が持つ3つの欲を指す言葉、三毒。

欲に塗れた愛し合う2人の人間は、一体どこへ向かおうというのでしょうか。

あのBUCK-TICKの櫻井敦司とのコラボが実現!

椎名林檎【駆け落ち者】歌詞の意味を考察!完成していると歌う理由は?正反対の二人の行く末に何が待つのかの画像

この曲の何よりの注目ポイントは、やはり豪華すぎるコラボレーションでしょうか。

『三毒史』というアルバムには、椎名林檎が直近でコラボした男性ボーカリストとの曲が多く収録されています。

向井秀徳や浮舟、そしてトータス松本、宮本浩次。

さらにアルバムの収録曲が発表となった際、なんとこの曲でも男性ボーカリストとのコラボが発表されました。

お相手はなんとあのハードロックバンドBUCK-TICKの櫻井敦司!

50歳を過ぎても尚衰えぬ端正な顔立ちで、多くの女性ファンを魅了する大物ボーカリストです。

夢のような2人のコラボレーションの実現に、SNSは大騒ぎ。

さらになんとアルバム発売後の2019年5月末には、2人揃ってミュージックステーションに出演。

両者ともあまりメディアに顔を出すことのない存在だっただけに、この日の放送は一躍話題となりました。

そんな2人が織りなす壮大な【駆け落ち者】の世界観を、どうぞご堪能頂ければと思います。

歌詞の言葉選びにも注目!

椎名林檎【駆け落ち者】歌詞の意味を考察!完成していると歌う理由は?正反対の二人の行く末に何が待つのかの画像

歌詞を見て頂く前に、少しだけ余談を。

この曲の歌詞椎名林檎的コンセプトは『櫻井敦司が口にして似合う言葉』

普段から日本語の歌詞に関しても、並々ならぬこだわりを見せる彼女。

そんな彼女が、櫻井敦司をイメージして選んだ渾身の言葉たちをこの曲に含めていることがうかがえますね。

櫻井敦司との馴れ初めや楽曲制作秘話などについて、ぜひこちらの記事も一緒にお読み頂ければと思います。

駆け落ちという名の逃亡劇を繰り広げて

2人はいつでも1つだった

ああ透明になる 追っ手を撒いて
さあいよいよ突破口通過しようか
正反対の番同士ついに実体を匿い合っている
お前は深い緑色して 確か私は荒い紫色して

出典: 駆け落ち者/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

【駆け落ち者】というタイトルの通り、この曲は楽曲の冒頭からとある2人の逃走劇が描かれています。

追手から逃れた2人は、いよいよこの逃走劇の要所となる箇所を通り抜けようとしているようですね。

『番』は『つがい』と読み、2つ組み合わせて1つとなるものを表す言葉です。

特に動物のオスとメスをセットで表す時などによく使われる言葉となっています。

また、歌詞の中で表されている『緑』と『紫』という2つの色。

この2つは二次色と呼ばれ、すでに2つの色を混ぜて作られた色となっています。

そんな二次色である2色が混じり合うとどうなるか。

新たな色は生まれず、何も見えない黒やグレーのような暗色になるのです。

これは、互いが混じり合うことによって互いを見えなくしている、という様を表しているのではないでしょうか。

この『駆け落ち』の物語は誰のものなのか?

椎名林檎【駆け落ち者】歌詞の意味を考察!完成していると歌う理由は?正反対の二人の行く末に何が待つのかの画像

自由は欲しくない ずっと奪っていて欲しい
そう元来完成しているの

出典: 駆け落ち者/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

『駆け落ち』をする2人の男女。

恵まれない境遇に立たされる男女の物語は、歴史を辿れば枚挙に暇がありません。

太宰治と彼に心酔した女たち、はつと徳兵衛による『曽根崎心中』。

海外を見れば『ロミオとジュリエット』なども有名な男女の駆け落ち物語ともいえるでしょう。

しかし、この曲の『駆け落ち』のテーマとなったのは、彼らの物語ではありません。

この曲のテーマはずばり人類最古の駆け落ち物語、『アダムとイヴ』による物語なのではないでしょうか。

禁断の果実である林檎を齧ったことで男と女になり、楽園を追放されたアダムとイヴ。

しかしこの2人は果実を食べる前には、男でも女でもない完成体としてこの世に生を受けているのです。