楽曲について
ネクライトーキーの楽曲『音楽が嫌いな女の子』。
2019年7月24日発売のアルバム「MEMORIES」の収録曲です。
朝日さんは以前ボカロPとして活動していました。
そしてこのアルバムはボカロ楽曲のセルフカバー音源となっています。
昔に生まれた自分の楽曲に再び生を宿すような今回のプロジェクト。
はたしてどのような楽曲になっているのでしょうか。
ボカロPからバンドマンへ
2011年からニコニコ動画にボーカロイド楽曲を投稿し始めた朝日さん。
ボカロPとしては「石風呂」名義で様々な楽曲を生み出してきました。
そして平行してバンドマンとしても活動していました。
こちらは本名の「朝日廉」という名義で活動中。
3ピースロックバンド「コンテンポラリーな生活」は彼のもう一つの顔です。
ネクライトーキーの作曲者とは思えないそのギャップは魅力的。
そして新たにメンバーを加えて生まれたバンドが「ネクライトーキー」です。
こちらは石風呂時代の楽曲をカバーするというコンセプトがあります。
このように朝日さんは、全て一人で行ってきたとは思えない異例の経歴を持っています。
作曲者の苦悩
いつからか変化した目標
想像は噛み切って
サイドから攻め込んで
大当たり 入らんね
負け込んでいって
何故なんだ
勝ちを拾う未来って
見えてくることがないような
出典: 音楽が嫌いな女の子/作詞:石風呂 作曲:石風呂
まさに楽曲制作者の視点から描かれたリアルな歌詞です。
ここでは新しい楽曲を生み出す過程の心境が写し出されています。
「サイドから~」とは、聴き手に新鮮味を持たせるように楽曲を作っている様子。
いつもとは少し変化させて、自分のスキルを最大限に活かした楽曲を生み出します。
しかし、そんな100%以上で作り上げた楽曲も大当たりでは無いのです。
いつしか曲の終着点が「聴き手」になってしまっている。
そんな聴き手のために音楽を制作する過程。
これを歌詞6行目で表現しているのではないでしょうか。
楽曲を作っているのに、どんどん気持ちは落ち込んでいくばかりなのです。
周りの評価に溺れる日々
ちょうちょ飛んでって 蝙蝠は壁蹴って
「ちくしょうめ、許さねえ!
せいぜい逃げやがれ」って
まぁまぁ別に大したことはないような
ありふれた日常だった
出典: 音楽が嫌いな女の子/作詞:石風呂 作曲:石風呂
自分の周りから人が離れていく様子を蝶々と蝙蝠に形容しています。
そのことに対して嫌悪感や怒りを抱きながら項垂れているのです。
しかしながらその一方で、いつものことかと思い直す自分の姿もある。
それをありふれた日常だといっているのです。
ただ楽曲を制作しているわけではなく、その過程の想像を超える苦悩。
周りの反応に一喜一憂しながら一歩一歩踏み出しているのです。
作曲者に限らず、クリエイターは誰しも抱える悩みの一つだといえます。
作り手と聴き手の交錯する想い
懐古する人々の姿
「最近の画一化された音楽シーンの特徴って」
「まぁ良くも悪くも
ライブ主体の商業に移り変わったことによる弊害というか」
「なんにせよ今どきの音楽って浅はかさが鼻につくのがねー」
「昔は良かったなぁ」
「ふーん…今何て?」
出典: 音楽が嫌いな女の子/作詞:石風呂 作曲:石風呂
アーティストが最も嫌っている言葉の一つ。
それがこの「昔は良かったなぁ」という言葉だと思います。
制作者の血の滲む努力を一蹴するようなこの言葉。
今を更新し続けようとしている制作陣には不快に感じてしまうのです。
近年では度の過ぎた人たちを「懐古厨」と揶揄する風潮も見られます。
そのくらいに「今と昔の比較」は大きな問題。
朝日さんも同様に、この言葉に嫌悪感を抱いています。
「昔が良かった」という人々の心理には共通しているものがあると思います。
それは、昔から知っていることへの自己陶酔。
「にわか」という言葉が台頭してきたように、知識の深さも勝手に測られる現代です。
昔から知っていた証明のためにこのような言葉を使います。