藤原さんが手紙を読んだ時の感想なのでしょうか。

どうやら文字だけでなく、書いた「君」の声も聴こえるようです。

もちろん、比喩表現なのでしょうが、それだけ彼が「君」のことを人間として身近に感じているということが伝わりますね。

ふと空を見上げた時に「君」の呼び声が聴こえたとも言っています。

「君」が藤原さんに対して向けている気持ちはちゃんと伝わっているという意味だと思います。

「Fujiki」へ送られた手紙。

藤原さんにとっては「君」の気持ちそのものを受け取ったというように感じているのでしょう。

君に見えるように輝いて欲しい

せめて君に見えるくらいには輝いてほしい
流れ星の正体を僕らは知っている

出典: 流れ星の正体/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

「流れ星」に願い事をすると叶うという迷信があります。

バンプのファンにとっては彼らの曲が「流れ星」。

「日常に希望を与えてくれるひと時の輝き」といっても過言ではないでしょう。

ここで「輝き」と表現されているのはおそらく曲自身の魅力。

「君」の心に届くほど魅力的だといいな、と願っているのです。

曲を作る過程を知っているバンドメンバーは、実際にファンの様子を見るまで果たしてこの曲には「輝き」があるのか?と不安な気持ちもあるのかもしれません。

夜空に太古から瞬く星ではなく、「流れ星」というところに謙虚さを感じます。

ひとりでいる君へ

「君」へ届けたい

足元をよく見て階段一つずつ どれくらいざわついていても ひとり
肩を擦るように避けながら 世界に何億人いようとも ひとり

今日は何もない一日と言えば そこまでの毎日
増え続けて溢れそうな唄の欠片たちが 早く会いたがって騒ぐんだ

出典: 流れ星の正体/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

トボトボと一人で階段を上っている人物の姿が目に浮かびます。

その人物は他人から距離を置いて過ごしているようです。

階段は人生そのものを例えたのかもしれません。

失敗しないようにと気を付けるあまり、孤独になってしまった不器用な性格なのでしょうか。

「産みの苦しみ」を知っている藤原さんはつい「今日はやめとこうかな」と曲作りに取り掛かるのが億劫な日も。

でも、まだ完成していないはずの「唄」が「君と会いたい」と訴えかけたように思えたので、「やっぱりやろう」と決めます。

「唄」にまるで命があるかのような表現がユニークですね。

藤原さんにとっては「唄」はたとえ欠片であっても、自分の子供のような愛しい存在なのかもしれませんね。

ひとりの君に間に合うように

変わらないで変われなくて ずっと それでも続いている
ゴールなんて決められないだけで なんなら今でも

君が未来に零す涙が 地球に吸い込まれて消える前に
ひとりにせずに掬えるように 旅立った唄 間に合うように

出典: 流れ星の正体/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

ここでは藤原さんの音楽活動への正直な気持ちが歌われています。

自分たちは活動を始めた当初から音楽のスタイルが変わっていない。

変えようと思った時もあったけれど、結局できなかった。

いつ活動を辞めるかなんて決めてはいないから続けているだけで、決めたらすぐに辞めるかも…

そんな風に受け取りました。

「ゴール」についてはファンにとって「辞めないでー!」とつい叫んでしまうデリケートな話。

でも活動を続けるかどうかはあくまで本人達次第でもあります。

彼が気にしているのは先ほどの歌詞に登場した孤独な人物。

その流した涙を受け止めるため…その悲しみや寂しさに寄り添うために唄を旅立たせているのだということが、この歌詞から分かります。

君に旅立った唄に気づいて欲しい

命の数と同じ量の一秒 君はどこにいる 聴こえるかい
君の空まで全ての力で 旅立った唄に気付いてほしい

どんなこともこんな熱も街にまぎれる
流れ星の正体を僕らは知っている

出典: 流れ星の正体/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

たった一秒であってもそれは藤原さんにとって、貴重な時間。

できるだけ早く孤独な「君」へ唄を届けたいから。

彼の音楽への真摯な気持ちと、「唄」を生み出している理由。

ピュアな情熱と表現するのがぴったりな内容です。

でも、そんな情熱を持って生み出した「唄」でも必ず「君」に届くとは限りません。

数多の音楽に紛れてしまって届かないかもしれない…

だからこそ、一瞬でもいいから「流れ星」のように鮮烈に輝く曲を作りたいと願っているのでしょう。

最後に

手紙を通して知った気持ちが今も「唄」を作る動機になっている