万人受け
変わっちまったな
愛想を振りまいたり
誰が見たって
好かれそうな服を着たり
俺は落ちぶれて
鏡みたいになって
君は垢抜けて
みんなの「キミ」になった
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
2番のAメロに入り、1番のBメロで登場した「季節外れ~」が伏線だったことがわかります。
ただ、露出多めの服は賛否両論あるかもしれませんので、逆に清楚系コーデに変わったのでしょうか。
詳細ははっきりしませんが、君が「トレンドを取り入れ、万人受けするようになった」ことはわかります。
こうなると表向きのラブファンタジーの裏にヒゲダンとしてのメッセージが隠されていると解釈したくなります。
自らを客観視しているのでしょう。
「売れ線ねらいになってしまった」と自覚し「売れるのは嬉しい反面、悲しい気もする」と嘆いている感じです。
そもそもヒゲダンは音楽活動が楽しくて仕方がないメンバーで結成されたバンドです。
ほとんどの楽曲を手掛ける藤原聡さんは、大学を卒業した後2年間銀行員として会社員を経験しています。
彼が銀行員を選んだ理由は「土日祝が完全に休めるから」だそうで、休日のライブ活動に支障が無いからなのです。
きっと彼らはライブができればそれでよいと考えていたのでしょうが、時代が彼らを求めていたのでしょう。
少し冷めた?
あっと あっと いう間に
遠くに感じるファンタジー
吐き捨ててしまいたい恋心 Oh Oh
パッと パッと パッと見
お幸せそうでなにより
ときめきが歪みかけている No No
Bad for Bad for Bad for me
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
タイトルと同じ響きのフレーズが繰り返されるキャッチーなサビです。
ラップではないのに韻を踏みまくっているところが、ヒップホップに対するリスペクトでしょう。
そのライムも段階を踏んでタイトルにつながるという言葉遊びが絶妙です。
J-POPとして肝となるサビで、印象に残りやすい派手さを叶えつつ、音楽的にも遊んでいます。
このニュアンスを踏まえて歌詞を見ると「王道のラブソング路線が少し揺らいでいる」と解釈できるでしょう。
ラブストーリーとしては、モテモテの彼女を見た男性の心が、少し冷めかけていることがわかります。
夢見がちなファンタジーの気分が薄まり、現実に引き戻されそうになっているわけですね。
きっと彼は彼女を自分だけのものにしたいのです。でもできないし、どんどん離れていくという現実。
もう彼女のことなんか忘れたほうがいいに決まっていると考えています。
思い通りにいかないから終わりにできる程度なら、それは恋ではありません。
そのことも十分わかったうえで葛藤しているのでしょう。
そんな微妙な心境を見事に描いた歌詞にはヒゲダンファンならずとも引き込まれていきます。
わかっていても言い出せないのはどうして?
答えは別れ
さよなら さよなら
それがきっと答えだ
さよなら さよなら
わかってるはずなのに
言い出せず何度も曖昧に
忘れたふりでごまかしてる 今も
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
新たなDメロで始まる3番です。
歌物語としてのラブストーリーと、裏テーマのヒゲダン物語がごっちゃになってややこしいかもしれません。
ただ、歌詞の冒頭から「泣き笑い」という、矛盾が混在するような状況が提示されていました。
そのため、歌詞についても2本立ての解釈ができるようになっていることは織り込み済みと考えられます。
そもそも太宰治さんの小説がベースにあるので、ごちゃごちゃとした内面の葛藤をあえて描いているのでしょう。
そんなわけでヒゲダン物語からいきますと「あざとい売れ線ねらいはやめるべきとわかっている」となります。
ところが実際には、この歌こそキャッチーなラブソングなわけです。
たしかに「今も」ごまかしています。
こうなると、ヒゲダンはまさに太宰治さんご本人を体現されているかのような混乱ぶりです。
ラブストーリーとしては「他の男性がチラつく彼女とは別れるのが正解だとわかっている」という話でしょう。
それでも別れを切り出せない理由が、次に続きます。
強まる想い
あっと あっと 言う間に
ぬけ出せなくなるファンタジー
得体の知れない恋心 Oh Oh
あっと あっと いう間に
やっぱりタイプじゃないのに
ときめきが無限に増えて行く
No No
Bad for Bad for Bad for me
出典: バッドフォーミー/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡
別れを意識するほど深みにハマる。
これこそ太宰治さんの小説を現代に置き換えたファンタジーであり、恋という名の幻想でしょう。
「彼女なんてもともと好みじゃないんだから…」ともがけばもがくほど、好きが止まらなくなるわけです。
そんなラブストーリーを描いているこの歌こそエモいラブソングでしょう。
売れ線ねらいのエモいラブソングなんて本当は好きではない…と保険をかける姿さえ見せつけているわけです。
それでも機会があって挑戦すると、エモいラブソング作りにどっぷりハマってしまったのでしょう。
ズルい…とわかりながらもヒゲダンにハマる人が続出するポイントは、このあたりにありそうです。
エモーショナルといえば恋愛はその最たるものですね。心が勝手に動き出して止められないのですから。
ヒゲダンの楽曲にこんなにも心が奪われるのはなぜでしょう。
それは彼らの描く世界が誰でも体験したことのある「現実味を帯びている」からだと思います。
ヒゲダンファンは彼らの楽曲によって「辛い恋」を疑似体験しているのです。
しかし辛いだけの恋なんて、そうそう長い時間耐えられるわけはありません。
ヒゲダンが辛い恋を明るく弾むようなメロディに乗せているから救われた気分になるのでしょう。
彼らが目指した音楽がコレだったのでしょうが、そこまで計算して作っていたとしたら恐るべしです。
無限ループ
ただでさえサビの繰り返しが耳に残るのに、曲の最後に冒頭のAメロをもってこられると無限ループに陥ります。