まずは「メイン・テーマ」Aメロから。
時は忍び足で 心を横切るの
もう話す言葉も浮かばない
あっけないKissのあと
ヘッド・ライト点して
蝶のように跳ねる波を見た
出典: メイン・テーマ/作詞:松本隆 作曲:南佳孝
続いて男の視点で書かれた「スタンダード・ナンバー」から。
時は忍び足で 心を横切るの
何か話しかけてくれないか
あっけないKISSのあと
ヘッド・ライトを消して
猫のように眠る月を見た
出典: スタンダード・ナンバー/作詞:松本隆 作曲:南佳孝
ロケーションは海岸に停めた車の中。
車内には男女2人。男の方から彼女にキスをして無言のまま時間が過ぎていきます。
彼女は何かを言う代わりにヘッド・ライトを点けました。
光の先には海岸に打ち寄せるさざ波が浮かび上がります。
ヘッド・ライトを消したのは男。
彼女が見たのは光に照らされる「波」で、男が目にしたのは「月」。
明るい光と闇の中に浮かぶ月明かりで2人の心の内が対比されています。
彼女はこれがファーストキス。
彼は気まずさを隠すためにヘッド・ライトを消した。
心は少しブルー。
彼の気持ちが分からない不安
次にBメロです。
好きと言わない
あなたのことを
息を殺しながら考えてた
出典: メイン・テーマ/作詞:松本隆 作曲:南佳孝
唐突なキスだったことが分かります。
彼女としては先に「好き」と言って欲しかった。
その言葉がないために彼の気持ちが分からない。
私のことが本当に好きなのか、それとも単なる遊びなのか。
だから彼女は押し黙ってしまったのです。
これを男から見ると。
好きと言わない
お前のことを
息を殺しながら考えてた
出典: スタンダード・ナンバー/作詞:松本隆 作曲:南佳孝
自分のことを彼女は好きなんだと思っていました。
停車した車の中で言葉が途切れる。
その場の雰囲気からして彼女が告白してくるものだと思っていました。
いつまでも言葉がないため行動(キス)に移したわけです。
キスまでしたのだから、彼女の方から求めてくるはず。
だけど彼女の反応は予想と違います。
傷つけあう恋
愛ってよくわからないけど
傷つく感じが 素敵
出典: メイン・テーマ/作詞:松本隆 作曲:南佳孝
サビにあたるCメロです。
彼女にとって大切なファーストキス。
それが相手からの告白もなく一方的にキスされた。
傷つきながらも少し大人になったような感覚を楽しむ自分を味わっています。
愛ってよくわからないけど
傷つく感じがいいね
出典: スタンダード・ナンバー/作詞:松本隆 作曲:南佳孝
彼女は自分のことを好きじゃないのか。
彼は少し傷つきながらも、そんな新鮮な感覚を味わっています。
おそらく彼は女性から告白されたことしかないのでしょう。
互いにこの気まずい雰囲気を新鮮な気持ちで受け止めているところが面白いです。
恋が発展する重要なポイントで起こった男女のすれ違いが見事に描かれています。